ごはんの「距離」
ちょっと一人で外食をするのに、なかなかの勇気がいる。
今日は、ちゃんと食べようと決めていたので、あちこち回ったが、結局チェーンの定食屋に入る。かなり狭い店内。
「お一人様ですか?カウンターでよろしいですか?」
カウンターとは言うが、大テーブルを10人ほどで囲む形。向かいは植栽があるので気にならない。
案内された席に座ると、左隣がやけに近い。アクリル板で仕切られているものの、家族の食卓の距離だなと思った。私より少し若そうな男性が、注文を終えてスマホをいじっている。
着席すると、タブレットで注文。なんだか落ち着かないので、おすすめの中から頼み、読みかけの本を少し読む。
「お待たせいたしました」
店員さんは、2つの盆を持ち、男性と私にサーブした。
「鶏の麹漬け〜」
あ、同じメニュー。
何から食べるんだろう?レモン先にかける?これ、ドレッシングかな?
コミュニケーションはないが、お互い、妙に意識しているのがわかる。
少しも横向くことが許されない。
正面を見ていても目に入る、相手の手元だけが非常に気になる。
見知らぬ人と、家族の距離で同じ食事をする。
ほぼ同じ速度で食べ終わった。
お茶をすすり、一息ついて、軽く手を合わせて小さく「ご馳走様でした」と言った。
同時に隣の人もちょっと頭を下げた。
私が先に席を立ち、振り返らずに店を出た。
あの距離で「同じご飯を食べたから」意識したんだと思う。これがコーヒーだったら、たぶんそうはならなかった。
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