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上位顧客を特別扱いする「FSP」という言葉を最近聞かなくなった気がする

コンビニで「ポイントカードお持ちですか?」と聞かれて、「持ってません」と言うことが増えました。
いつも電子マネーアプリで支払うので、ポイントカードのために財布を出すのは面倒だからです。職業柄、昔は財布がパンパンになる程ポイントカードを持ち歩いていましたが、時代は変わったものだなぁ、と実感します。

さてポイントカードと言えば、マーケティングでは30年以上前から使われている考え方として、FSP(エフ・エス・ピー)があります。
一言でいうと「自社でたくさん買ってくれる人を優遇する会員プログラム」です。

ここ数年、FSPについて語られることがめっきり減ったなぁと最近感じまして、この記事では令和版のFSPについて考えていこうと思います。

FSP(エフ・エス・ピー)とは?

FSPとは、Frequent Shoppers Program(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)の略で、自社でたくさん買ってくれる人には、他の人に比べて厚く還元する、のことを意味します。

FSPを運用するには、まず自社の会員を購入金額や頻度でステージ分けします。(例:ブロンズ会員・シルバー会員・ゴールド会員など)
そして、ステージごとに受けられるサービスを変える、上位ステージの会員にはポイントの還元率を高くする、といった還元策を検討します。
FSPは、小売業や化粧品ブランド、航空会社などで多く取り入れられています。(航空会社ではFFP(Frequent Flyer Program)とも呼ばれます)

FSPの目的は大きく2つあります。
1、上位ステージの会員を厚遇することで、また購入してもらう
(例:ポイント還元率を高くして貯まったポイントでまた買ってもらう)
2、特別扱いすることで、「企業にとって特別な存在」と感じてもらう

特別な存在と感じてもらうことの重要性については、下記の調査結果からも見て取れます。

顧客が逃げる理由

※引用:フュージョン株式会社公式コラム「【無料セミナーレポート】効果が高まるDM活用法~第3回BtoC優良顧客化編」

また、FSPを取り入れる背景には、有名なパレートの法則があります。企業は、上位20%の顧客で全体の80%の売上を占めていると言われます。(パレートの法則については、こちらのコラムで解説しています)

この法則が示す通り、上位顧客を維持することは企業全体の売上の安定につながります。そのため、FSP会員プログラムを設定し、顧客のリピート購入を促すのと同時に、関係性の維持に取り組んでいるのです。

最近、FSPという言葉を聞かなくなった気がする

最近ふとそんなことを思い、私なりにその理由を考えてみました。

【理由①】自社ポイントではなく、共通ポイントが増えた

FSPでの厚遇の方法として、多くの企業がポイント還元を行ってきました。
しかしここ10年ほどは、PontaやTカードのような共通ポイントに切り替える企業が多くなっています。その理由には、共通ポイントの方がポイントを貯めやすいという消費者側のメリットと、運用がラクという企業側のメリットの両方があるように思います。

共通ポイントの場合、各企業での購入状況に合わせて還元することは難しくなります。
そのため、上位だけに還元、というFSPが運営しにくいのかもしれません。

【理由②】キャッシュレス支払いが主流になった

FSPを回すためには、誰が何を買ったかの履歴を残す必要があります。購入金額が会員ステージを判定する基準になるからです。
その判定のために、従来からポイントカードが使われてきました。財布から現金やクレジットカードを出す時に、一緒にレジで提示するだけでよかったのです。
しかし、キャッシュレス払いが増えたことで財布を出さなくなり、ポイントカードを提示しなくなった、という人は少なくないと思います。
ですから、キャッシュレス支払いが増えていくことは、自社の購入履歴を残す機会を低減させた、と言えるのではないでしょうか?

【理由③】購買チャネルが増えた

店舗販売のみだった業界でも、ネット販売(EC)を始める企業が増えています。
店舗とECの両方でポイントを一元化できることが理想ですが、その仕組みを整えるには一定のコストがかかり、運用上のルール整備やアナウンスなども必要なため、ハードルが高いのが現状だと思います。

また、コロナ禍でネットで買えるものが爆発的に増えました。消費者は欲しい商品をどこで買うかの選択肢が増え、「いつも買っている店」よりも「便利で安く買える店」で買う機会も増えています。

購買チャネルの多様化は、自社製品を自社で買うとは限らない状況を作りました。
このことも、FSPが機能しなくなる要因かもしれません。

まとめ

これらの消費者の購買行動の変化は、スーパーマーケットやコンビニなど日常的な買い物に特に顕著です。
例えば航空会社のように、会員ステージが一定の「ステータス」になる企業の場合、企業にとっての特別な存在であることを伝えられるので、今もFSPの役割は大きいといえるかもしれません。

顧客の維持には、ポイントがたくさんもらえるからこの企業で買う、だけでなく、この企業が好きだから買う(心理的ロイヤルティ)がますます大事になりそうです。


フュージョン株式会社のことをもっと知りたい!と思っていただけた方は、私達マーケティングチームで運用している公式コラムもぜひ読んでみてくださいね。

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