シャロン

午前4時。
この時間に目が覚めてぼーっとしてると
坂道の多い街で一人暮らしをしてた頃を思い出す。
あの頃、色々と、つらかったなぁ。
みんな、若かったなぁ。
どうしようもなく幼くて、必死で、孤独で、くだらなくて、夢があって、
生きるのが辛くて、もがいてた。
今夜はなんだか、あの明け方の空気に似てる。

もう10年以上も前なのに
私は成長してないのかな。

音楽仲間や友達もすぐ近くに住んでた。
家にもよく遊びに行ってた。
仕事が終わってから夜中に週2でリハーサルスタジオに入ってた。
スタジオがない日は飲みに行ったり、そこでまた友達ができたり。
狭い街で、毎日目まぐるしく過ごしていた。
あの坂にあったお店はほとんど閉店してしまった。

そして、もうあの街に住んでる子は誰もいなくて、
それぞれに、家庭を持ってる。

そんなこと想像できた?
馬鹿なことばっかりしてたのにさ。

一人なのは私くらいだ。
変わらないのは私くらいだ。

生活は変わらないのに、もう夢がない。
相変わらず孤独なのに、いつの間にかみんな大人になってしまって。

どんな気持ちなの?
どんなこと考える?
昔を思い出したりする?
真っ当な大人になった友達は、大体、姿を消してしまうから。
私には今の君が分からないんだよ。
どんな気持ちで生きてるのか。
どんな顔して生きてるのか。

幸せでやってたらいいなって思うけど。

私はどんな顔してる?
なかなか酷いもんだろうなぁ。

あの時間は確かにあったはずなのに
掴むことはできないし、もう二度と同じ時を過ごすこともない。
彼らは確かにそこにいたのに
もう声も少しずつ忘れているし、二度と会うことはない。

こんな夜は、彼がよく聴いていたシャロンを口ずさむ。

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