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5/9 松谷満『ポピュリズムの政治社会学─有権者の支持と投票行動─』

松谷満『ポピュリズムの政治社会学─有権者の支持と投票行動─』

ポピュリズムとは

①ミュデの定義
「社会が究極的には『汚れなき人民(the pure people)』と『腐敗したエリート』という敵対する2つの陣営に分離しており、政治は人民の一般意思(the volonte generate)の表現であるべきだとするイデオロギー」(Mudde 2004:543).
②ウェイランドらの定義
「(ポピュリズムとは)個性的なリーダー(personalistic leader)が、組織化されていない多数の有権者からの直接的な支持にもとづいて権力を目指したり、それを行使したりするための政治戦略である。リーダーは、既存の中間組織を迂回したり、それらをリーダーに従属させたりしつつ、有権者と直接的に結びつく」(Weyland 2001: 14)

この本では、①ミュデの定義を採用

*ポピュリストは、供給側(政治家)と受容側(市民)どちらにも使われている表現。
この本では受容側に焦点を当てる。
*ポピュリズムは体系的な定義を持たず、薄いイデオロギー
*we-nessとthey-nessを分ける右派的なものもあれば、左派的なものまである

ポピュリスト指標

ポピュリスト態度とは反エリート主義、人民主義のふたつからなる

反エリート主義を表す指標:政治不信

人民主義を表す指標:
①首長を選ぶ際「素人だが市民の代表」がいい
②首長を選ぶ際「市民の代表ではないが行政のプロ」がいい
→①に近い方が人民主義的な志向が強い
→これに加え、リーダーシップによる素早い決定を重視する立場をポピュリスト志向とする

ポピュリストへの投票の特徴

縁の弱さ
社会関係における地縁の弱さが大阪・名古屋において一貫して見られた
→縁の弱さが投票先の制約をなくし、ポピュリストへの投票確率を高めた
→今後地縁関係の衰退が加速すると想定、ポピュリズムも育ちやすくなる

ポピュリストという連帯が可能になるのか?

不安感・孤独感
・大阪調査の結果、先行研究で指摘されてきた不信感だけでなく、状況次第で不安感(主観的な焦燥感としての不安)も人々の投票行動に影響を及ぼし得ることが示された
・不安感について、ポピュリスト政治家が何らかの危機を強く打ち出し、政治的無関心層にまで届くようなアピールに成功した場合には、不安感が投票へと結びつく回路が開かれる可能性がある

well-beingや不安・孤独とポピュリストへの投票行動の相関関係を見ていくのは面白そう


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