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明治 近代文学 名著復刻版

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1868〜1912(明治元年〜明治45年)
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2022年4月の記事一覧

文学者となる法

内田魯庵 26歳。 文学者となるためのアドバイス本。と思ったらそうでもないようで、当時の文壇に対しての風刺と批評をこめた内容。   本の袋カバーにはAbraham Cowley(エイブラハム・カウリー)が書いた「The Grasshopper (バッタ)」という詩の一部。 ▶︎遼東の豚の子=遼東之豕 中国故事 「ひとりよがりの私(=内田魯庵)が今の文学者のみなさんに贈ります」 自己啓発本かと思ったらまさかの「批判本」でした。😓 浮世絵師 小林清親(きよちか)による15

尾花集

幸田露伴 25歳。 嵩山堂出版。 十字折り。広げてみることができるようになっています。👆 今でいうと「分厚めの文庫本」という感じです。 「尾花集」と書かれた切手風。出版元の「嵩山堂」。 職人大工の努力物語。当時新興国だった日本がこれからますます力をつけていく。そんな時代背景もあり特に受け入れられたようです。 幸田露伴から見た「渋沢栄一」とはどんな人物だったのでしょうか。ちょっと読んでみたい気もする🤫

蓬莱曲

北村透谷 23歳。 幻想的な劇詩。ゲーテ「ファウスト」の影響を受けているようです。 北村門太郎(透谷)自費出版。*住所が同じ エネルギッシュにさまざまな体験をしてきた北村透谷ですが、25歳でこの世を去っています。 短い人生だったけれど一生分の経験を一気に駆け巡ったような気がする・・ 知り合いだった島崎藤村に大きな影響を与えたそうです。

風流仏

幸田露伴 22歳頃。 表紙に「新著百種」第五号。 イラストは百万塔と土偶。 露伴著 風流佛 よし岡板(版元) ・・・ 蝸牛(かたつむり)露伴 著 ・・・ 修行の旅にでている青年彫刻家、珠運と狛犬がにらみあっている場面 ・・・ 発行人、発行所:吉岡哲太郎、吉岡書籍店 ほかの本の紹介ページ ・・・ 「新著百種」シリーズ、第一号として尾崎紅葉の「二人比丘尼色懺悔」。 ちなみに、第一号とこちらの第五号が人気だったそうです。 ◎旅先で出会ったお花売りの女性との悲

二人比丘尼色懺悔

尾崎紅葉 21歳。 表紙に「新著百種」 表紙の黒い部分をよく見ると・・「二人比丘尼色懺悔」 さりげなく目次が書かれている。一番下には「第一号」。 ・・・ 新著百種 「いろ懺悔」 板元よし岡(吉岡書籍店) *板元=版元  ・・・ 「春のや生」は坪内逍遥。 ・・・ 会話は二重丸括弧。現在の鍵「」ではないんですね。 あと、会話での間合いに「・・・・・・」がよく使われています。

夏木立

山田美妙 20歳。尾崎紅葉と幼友達。 地味な表紙ですが、中を見ると繊細でやさしい感じで全体的にていねいな印象です。 表紙をめくると鮮やかなオレンジ色のページ。パラフィン紙が綴じられています。 明治二十一年、五月のはじめ 美妙齋主人 この頃になると浮世絵風から現在の漫画に近くなってきています。 終 をはり 山田武太郎(山田美妙の本名) ・・・ 明治21年。1888年。同じ数字が三桁並ぶ年ってめずらしい。 このあとは1999年、2000年、2111年。2222年はな

浮雲 第一篇・第二篇

二葉亭 四迷 23歳。写実主義。 表紙には「坪内雄蔵」(=坪内逍遥)の名前。どうやら当時無名だった二葉亭四迷の名前を表に出さなかったとか。 ただ、「浮雲はしがき」という形で一番最初にしっかりありました。 全体的に、読みやすくて今の文庫本に何となく近いスタイルになってきたように感じます。 ・・・ ナシヨナル、フオース、あと、ルビ(ふりがな)をふってくれていてとても親切。 ・・・ 二葉亭四迷は東京外国語大学でロシア語を学んでいました。 ようやく文字がふつうに読める

雪中梅 上編・下編

末広鐵腸 37歳。政治小説「雪中梅」。 本の表紙の色はふんわりやさしいパステルブルー。字体、タイトル周辺には流れるようなお花模様。政治小説?!という印象です。 朱子学を学んだ後に陽明学の教授、ジャーナリスト、自由党の衆議院議員(板垣退助が結成した日本最初の政党)とパワフルに活動していた鐵腸。 末広重恭 (=鐵腸) ・・・ 1888年に海外旅行へ。 サンフランシスコ行きの船内で、フィリピン独立運動の国民的英雄、ホセ・リサールと親しくなり、予定を変更してリサールととも

十二の石塚

湯浅半月 27歳。 同郷の群馬県出身、新島襄(現・同志社大学創始者)を慕い、同志社に入学。 同志社大学卒業の際に朗読した詩集「十二の石塚」。 薄いパンフレットのような小冊子。 洗礼を受けているクリスチャン。 イスラエル、ヨルダン・・ 本名は湯浅吉郎。 本のカバーのあざやかなオレンジ色の意味は?と調べてみましたがよくわかりませんでした。ただ、専門としていた旧約聖書や古典ヘブライ語に関係する色なのかも・・たとえば儀式またはシンボルカラーとか。 ・・・ 京都御苑のすぐ

当世書生気質

坪内逍遥 26歳。 ほんの少し新しい絵柄になってきたような気もするけれど、やはり江戸の浮世絵。 ところで明治に入ってかれこれ17年も過ぎているのになぜ?とちょっと不思議に思った。 と、調べてみたら、やはりそういった感覚をもったのは私だけではなかったようで。 当時、「古いのはやめて新しくしよう」という意見はあったらしいけど、庶民からのブーイングで結局は慣れ親しんだ浮世絵にしたのだとか。 現在とよく似ている。今は過渡期。あと少しで古いものが消えていくと思う。

新体詩抄・初編

3人が20〜30代のときの作品。 表紙は淡鼠色。ライトグレー。 和紙には全体的に格子と鶴亀の模様。型押。 落ち着いた色と華やかな模様の組み合わせ。知的な感じがします。 これまで和歌や漢詩だったのがついに西洋の詩が登場。 出板(版)人「丸家善七」。現在の「丸善」です。 丸善CHIホールディングス(株)  株主になって優待をいただくのもよさそうですね😊

八十日間世界一周 (前編、後編) 

川島忠之助 25歳、自費出版。 日本ではじめてのフランス文学翻訳者。 ジュール・ヴェルヌの「八十日間世界一周」。 ほかに「十五少年漂流記」など。 ちなみに村上春樹が小学生の頃、ヴェルヌの本に夢中になっていたそうです。 ・・・ この本を初めてみたとき、とてもセンスがいいと感じました。 外見だけではなく、紙質が上質で字体もデザインもどことなく上品。 表紙の色はさわやかなブルーグリーン。 しかも前篇が濃いめ、後篇のほうは少し薄め。少しずれた色合いなので並べるとますます素敵

柳橋新誌

成島柳北 37歳。幕末の奥儒者。 表紙は鮮やかな金色。 表紙の裏は紅色。 金色=高貴な色、紅色=縁起のいい色。 中国を意識した色を使っている。 2冊目。表紙の裏の上部に皇紀「紀元二千五百三四年」 ・・・ 漢文。 送り仮名(漢字の右下) 返り点(レ、一、二、・・) 学生の頃、漢文が苦手だった。なぜなら返り点であっちいったりこっちいったり、ややこしかったから。なので中国語は私には無理だと思い込んでいた。 ところが大人になって中国語を学び始めたら苦手意識がほとんどなくな

学問のすゝめ(初編)

福沢諭吉37歳、小幡篤次郎30歳 初編は33ページのみ。薄いパンフレットのような小冊子。 福沢諭吉の郷里である大分。その中津市学校の子弟のために書いたのが「学問のすゝめ」。 ちなみに上の写真の表紙に「全」と書いてあるのは、この一冊のみの予定だったとか。 それがのちに全国的に流行り、二編以下を刊行することに。そして最後になってはじめて一番最初の本を「全」→「初編」と名を変更。 このとき、はじめて「学問のすゝめ」を読んだ若い人たち。 きっと新しい時代にものすごくわくわく