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「本郷新記念札幌彫刻美術館」


若き日の本郷新と代表作


本郷新(ほんごう・しん)(1905-1980)という彫刻家の名前を知らなくても、氏の作品はきっとどこかで目にふれているはずだ。特に道民ならば、誰でも。例えば、大通公園である。西3丁目に設置される3体の踊り子像。よくテレビ塔を背景に同じポーズをして写真を撮る名物スポットにある彫刻は「泉の像」という氏の作品だ。道東は釧路の幣舞橋である。橋上を彩る四季の女性像もまた、本郷の代表的な作品なのである。

紹介パネル

本郷は1905(明治38)年、札幌で生まれた。札幌第二中学(現札幌西高)を経て、東京高等工芸学校(現千葉大学工学部)に入学。在学中から高村光太郎に師事する。彫刻の社会性・公共性を重視し、モニュメンタルな野外彫刻の制作に生涯をかけて取り組んだ。その作品は全国約80カ所に、道内には90あまりに設置されている。

「記念館」の外観

現在は美術館として一般人を受け入れる「記念館」は、アトリエ・ギャラリーとして1977(昭和52)年に建てられた。本郷の邸宅である。設計は上遠野徹。館内には彫刻の石膏原型や絵画作品が多数展示される。なかでも、実物の人間よりもはるかに大きな人物像原型は、迫りくるような迫力を持って鎮座している。

「本館」の外観、入館チケットはこちらで購入する

道路を一本挟んだ「本館」は、記念館より4年遅れて完成。こちらの設計は田上義也である。館内6つの展示室はそれぞれが独立した空間になっていて、随所に高低差をつけ変化に富んだ世界観を連続させている。

2階の一室、札幌市内が一望できる場所

本郷のことばをひとつ紹介したい。「彫刻はひとつの人生観をまとめるようなもので、単なる工芸とは全く世界が違う。ただ上手にやることは職人のすることであり、それプラス自分のなかに自分の世界をつくることが芸術家のしごとです。芸術家は自分の人生観即芸術ということになります」。

アトリエに展示される作品群

没後、半世紀が経とうとしているのに、氏の熱量は作品という物言わぬ物質を通じて、静かに伝わってくる。かくして、本物が放つ圧倒的な威風堂々とした作品群に、ただ、ただ、敬服の念を抱く時間となる。時を忘れて佇みたい場所である。

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