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ホップの病害虫とその対処

作業時期:芽が見えてから枯れるまで


■病害虫対処と薬剤散布の基本

・株の様子を毎日観察し、芽や葉、花の変化を早期に発見、対処すること
・使用する薬剤はホップに適用のある農薬を使用すること(適用のある場合、薬剤の裏の説明に「ホップ」の名称が記載がある)
※参照:農林水産省 農薬登録情報検索
・薬剤散布は葉の裏を中心に株全体に噴霧すること。特にツルの重なりがある場合はその部分をしっかり散布する。
・収穫時期を見極め、農薬の残留に注意する(薬剤毎に記載があります)

■薬剤散布スケジュールの例

初春株拵え時 ユニフォーム(べと病)
ツル成長期 レーバス(べと病)
開花期 オンリーワン(うどんこ病、べと病、灰色かび病)
毬花成長期 レーバス、ナリア(うどんこ病、べと病、灰色かび病)
※発生したら適時 バロック(ハダニ)、テルスター(コガネムシ他)
※開花後40日前後が収穫適期。各薬剤の最終散布期限を参照の上、散布時期を見極める事

散布スケジュールは、スプレッドシートのホップ栽培暦も併せてご利用ください。収穫期を入力すると、散布スケジュールの目安を作成できます。

ホップ栽培暦(スプレッドシート)

■ホップの病害虫一覧

※ホップに使える「適用薬剤」を以下に記載しておりますが、適用している薬剤が増えたり、適用から外されたりということがありますので、必ず薬剤のサイトを確認の上、ご利用ください。

〇アブラムシ 枝先に虫が居たら

春先などに枝先に主に発生。どんな気候でもよく出る。目視が容易。随時、適応の薬剤を散布

〇ハダニ 葉の斑点、葉裏に赤い虫

気温が高くなった時期に葉の裏に発生。猛暑や空梅雨の場合によく出る。葉の裏に小さいながら目視可能、大発生時には蜘蛛の巣の様なモノも発生。初期は葉の表面がやや薄い色抜け、大発生時には茶変黄変等になる。
初期段階で殺ダニ剤を葉裏に噴霧。殺ダニ剤は散布回数に条件があるので確認のこと。大発生になると駆除が難しくなる。周辺の雑草等が温床になる場合もあるので、春先から除草を心掛ける。薬剤抵抗性を付けやすいので、数種の薬剤を順番に使う事。
・適用薬剤
バロックフロアブル ※効き目があるが使用回数期限を注意
ニッソラン水和剤 ※効き目があるが使用回数期限を注意
アカリタッチ乳剤

・発生初期は葉に斑点が現れる。できれば発見次第早めの薬剤散布を行う。

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・大発生した葉裏の様子。よく見ると赤い小さな虫が動いており、薄っすらと蜘蛛の巣の様なものも発生。ここまで大発生した場合は葉を切り落とす。

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〇アオムシ、毛虫類 葉が大きく食害

夏~晩夏に発生。葉脈を残して食害、併せてフンが確認できる。基本は捕殺で対処

〇コガネムシ、ハムシ 葉が点状に食害

春~収穫時期まで発生。葉に丸い穴があく。飛んで逃げるので残効性の薬剤を適時散布
適用薬剤はテルスター水和剤

・成虫の食害は斑点状に穴が開く。同時に葉の裏にコガネムシの幼虫(黒っぽい)が居る場合が多い。葉の裏を確認し、幼虫などが散見する場合は取り除く。

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●ハマキムシ、ミノムシ 葉が綴り状に

気温が高い時期に発生。葉がつづり状になる。併せて葉の大きな食害が現れる。蜘蛛の巣の糸の様なものでつづられている。中に卵や幼虫が居る場合があるので、葉は取り除き捕殺。

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●アズキノメイガ、フキノメイガ 茎に食害

気温が高くなってきた晩春、初夏に発生。成虫が卵を産み、茎が羽化した幼虫に食害され穴が開く。食害の穴に糞が多数発生する。
茎をよく観察し、穴や幼虫を確認次第捕殺。気づくのが遅く茎が細いと食害の先が枯れる事もある。枝先が枯れた場合は穴より下で剪定の必要があるが、枝先が枯れていない場合は、薬剤散布か捕殺。
適用薬剤は 
テルスター水和剤 ※ツル成長後期に散布で成虫活動期の成虫避けとしての長期効果
パダンSG水和剤 ※毬花肥大期に発生状況を見て散布で幼虫駆除効果、残効は短い

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■食害の茎の先が枯れてしまった様子

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■茎の先端が食害で枯れた様子

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●うどんこ病 葉が粉状に白くなる

気温が高くなってきた時期に発生。葉の表面、及び葉裏、茎が白く粉をまぶしたようになる。大発生すると生育が緩慢となる。元気に育っていると障害が出ずらい。古い品種(ザーツ等)や特定の品種(CTZやカシミア、カナディアンレッドヴァイン等)に耐性が少なく発生の可能性が高い様子。逆に、耐性の高い品種は殆ど症状が出ない。
防除は、予防効果のある薬剤と、治療効果のある薬剤を上手く利用し、発生していない時期からの防除と管理を心掛ける
。発生時は、症状が出ている葉や茎を取り除き、数日おきに複数回利用可能な薬剤を散布する。散布は葉の表裏にしっかりと散布し、数日水が掛からない様にすると効果が高い(水で薬剤が流れる為)。また畑の場合はこまめな除草を心掛ける。
大発生した畑、もしくは発生しやすい株は、収穫後も継続してカリグリーン等の回数制限のない薬剤散布を行い、翌年への越冬菌を減らす事を心掛ける。


■葉の裏にうどん粉病が出た様子

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・適用薬剤
カリグリーン ※治療効果。有機栽培での利用、肥料効果もあり、使用回数制限が無くこまめな散布が可能
ハーモメイト水和剤
 ※発生初期治療効果。有機栽培での利用可能。使用回数に制限が無くこまめな散布可能
ナリアWDG
 ※治療、予防効果、ベト病にも効果
オンリーワンフロアブル ※治療、予防効果
アカリタッチ乳剤 ※治療効果。主にハダニへの効果、うどんこ病にも効果はある

●ベト病 葉に斑点、生育の大幅な緩慢、毬花の茶褐変

初期から収穫期まで全時期を通して発生。冷夏や梅雨時期に出やすい。葉や毬花に斑点状の黄変や茶褐変などが生じ、大きく伸びるはずの主幹や側枝の伸びが大幅に悪くなる(節詰まり)。全期間、予防も兼ねて適応の殺菌剤を散布する。圃場に多数発生した場合は、収穫期後、地際から短く剪定、畑全体に数回、コサイド3000等を散布し、畑全体の菌を減らす事。毬花への症状は灰色かび病に似るが、茶変の様子が違う。また、発生した株は必ず畑外で処分する事。
適用薬剤(一部)
ユニフォーム粒剤(植え付け時) ※残効が長く春の初期防除に
レーバスフロアブル ※効き目が強く防除として欠かせない
ナリアWDG ※効き目が強く防除として欠かせない
コサイド3000 ※上記薬剤の合間に定期的散布が可能、他の作物に影響がないので同畑内、もしくは近隣に他の作物がある場合はこれが基本となる

・最初は薄っすらとした黄変から始まり茶変、葉先の枯れと進んでいく様子。症状が出た葉は取り除く。

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・節詰まりの様子。節間が狭まり、葉が極端に小さくなる。脇芽も同様になる。ツルの中間あたりから影響の無いツルが伸びてくることがあるので、それを伸ばして仕立て直す(が、うまくかない事も多い)

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節詰まりの茎は取り除く。

下の画像はべと病による毬花の褐変。

●灰色かび病 毬花の茶変

収穫期の毬花に茶変が出る事でわかる。発生は開花期の毛花の時期から。長梅雨や曇天が続く年に多く発生。べと病との違いは、毬花や葉のやや胞子、もしくは腐りを纏った茶黒変、ツルの生育緩慢の様な症状は少ない。
うどん粉病やべと病と違う発生の仕方をするので、地域の気候に合った計画的な薬剤散布で対応する。
適用薬剤
オンリーワンフロアブル
ナリアWDG

■病害虫に見えるけどそうでない症状

△枝先が枯れる

鉢植えでよくある症状。水不足、強い日差し、急激な気温変化、強風が原因。水やりの頻度の増加、日陰への移動をする。

・春に暑いぐらいな日が続いた後、急激に寒くなる日があった時に枯れた枝先の様子

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△あまりに生育が悪い、ツルが伸びない

株を掘り起こし、根が伸びている様であれば管理に問題。育て方をもう一度確認する。根が伸びていない場合は土に問題。土を他の新しい土に変え、植えなおす。それでも改善しない場合は、ベト病の対処。

△苗を植えた後に枯れた

土に強い原因がある場合が多い。まずは要因の心当たりを突き止める。要因を取り除けば、復活の可能性もあるので、新しい土に変え、植えなおすし、一旦日陰等で管理する。また、育て方を改めて一通り見て、管理に間違いがなかったか、確認する事。
要因として実際にあったのは以下の通り。
・猫や犬等のトイレになっていた
・屋根の雨だれが当たっていた
・畑に黒マルチを張って植えた
・プランターの水が抜けない状態だった
・液体肥料や薬剤の希釈を間違え濃くかけた
・台風で海から塩分の多い水が鉢に入り込んだ
・土にネキリムシが居た
・猛暑でアスファルトの照り返しがプランターに当たり地温が高くなり過ぎた
・スプレータイプの薬剤を近距離で噴霧した
・葉の裏に多量のケムシが居た

△花や下葉が黄変、茶変する

水やり不足や肥料不足の症状。心当たりの不足分を改善する。ツル全体の葉が茶変する場合は、土や茎に要因がある

△脇芽ばかり伸びる

ツルの先端に何らかの異常、もしくは上方に伸びれない原因がある。ツルの先端を確認し、異常を取り除く。それと共に、脇芽は切り落とす。

△花の落花

水不足が原因。水やり頻度を増加する

△枝が勝手に折れる

強風により枝が折れる。台風などで被害が出やすい。防風ネット張るなどの工夫が必要となる

△毬花の茶変

灰色かび病、べと病でも茶変は出るが、収穫期が過ぎても収穫しない場合でも茶色くなる。畑の場合は開花から40日ぐらいを収穫目安、鉢植えの場合は小さく早く収穫期を迎えるので、緑のうちに収穫を行う。

△葉の色抜け

葉が黄緑色に抜ける場合は、概ね特定の肥料分が極端に不足している場合に生じる。肥料の内容、タイミング、回数などを見直す。
葉の色が白く抜ける場合は、日照の大きな変化が原因の場合がある。苗購入後や室内で管理した場合になる事がある。
葉が茶色くなる場合は色抜けではなく他に原因がある

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△葉が小さい、生育の緩慢

葉がやや小さめでツルの伸びが悪く節間もやや短い。鉢植えの場合で鉢が小さい、株拵えをしない、2年目以降も同じ鉢で育てた等の場合に現れる。大きな鉢や畑に植えなおす事。べと病からの節詰まりにも似るが、あまり困った様子ではなく葉も節間もやや短い程度。

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サポートは紹介した植物の苗の生産維持拡充、記事の充実に利用いたします。どうぞよろしくお願いいたします。