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ROAとROEの違いを知れば、財務諸表が読めるようになる

財務諸表が読むのが難しいのはなぜか

財務諸表からは様々な情報を読む取ることができます。
それこそが、財務諸表を読むのが難しい理由でもあります。
たくさんの情報をただ眺めても、記号の集合にしか見えません。

財務諸表を読むための最初のステップは、その目的を定めることでした。
誰が、何のために、何を知りたくて財務諸表を読むのか。
財務諸表を読むための目的が定まれば、財務諸表の読み方が見えてきます。

ROAとROEでは利用者が違う

ROAとROEは、財務諸表を読むための最初の切り口となる代表的な指標です。
ROAとは、総資産利益率(Return On Asset)のことで、経常利益÷総資産で求められます。
ROEとは、自己資本利益率(Return On Equity)のことで、当期純利益÷自己資本で求められます。

ROAとROE

この2つの指標はよく似ていますが、流派の違いや好みの差ではありません。
2つの違いの本質は、想定する利用者の違いにあります。
それぞれ誰のための指標なのかが分かると、財務諸表が読めるようになります。
(※ROAを当期純利益÷総資産とする場合もありますが、ここでは目的の違いを明確に反映した算出式を利用します。)

分子に着目する

ROAとROEを、分子の違いから見ていきます。
損益計算書は、①売上総利益、②営業利益、③経常利益、④税引前当期純利益、⑤当期純利益と5段階の利益に分かれています。
これを段階利益といいます。

段階利益

①売上総利益
売上高から売上原価を控除した額。
「取引自体で獲得する利益」を示します。いわゆる粗利です。

②営業利益
売上総利益から販売管理費(経費)を控除した額。
「本業でいくら儲けたか」を示します。

③経常利益
営業利益から営業外損益(本業以外からの損益)を控除した額。
「本業以外も含めて通常の企業活動でいくら儲けたか」を示します。

④税引前当期純利益
経常利益から特別損益(臨時的に発生した損益)を控除した額。
「臨時的に発生した事象も考慮していくら儲けたか」を示します。

⑤当期純利益
税引前当期純利益から法人税等を控除した額。
「最終的にいくら儲けたのか」を示します。

ROAの分子は、③経常利益であり、「本業以外も含めて通常の企業活動でいくら儲けたのか」に注目しています。
ROEの分子は、⑤当期純利益であり、「最終的にいくら儲けたのか」に注目しています。

分母に着目する

ROAとROEを、分母の違いから見ていきます。
貸借対照表は、①資産の部、②負債の部(他人資本)、③純資産の部(自己資本)からなります。

貸借対照表

①資産の部
資産とは、会社が所有する財産の額です。

②負債の部(他人資本)
負債とは、資産のうち、返済する必要のある債務の額です。

③純資産の部(自己資本)
純資産とは、資産から返済する必要のある債務の額を控除した自己(株主)に残る額です。

ROAの分母は、総資産であり、会社が所有する財産の額に注目しています。
ROEの分母は、自己資本であり、会社が所有する財産のうち株主に残る額に注目しています。

ROAとROEの利用者

ROAから見ていきましょう。
ROAは、会社が所有する財産の額(総資産)を分母として、本業以外も含めて通常の企業活動で儲けた額(経常利益)を分子としていました。
つまりROAは、いかに会社の財産を効果的に使って営業活動を行い利益を生んだのかを示します。

ROAは、経営者が経営成績を見るための指標です。

ROEはどうでしょうか。
ROEは、会社が所有する財産のうち株主に残る額(自己資本)を分母として、最終的に儲けた額(当期純利益)を分子としていました。
つまりROEは、株主が投資の結果いくらの利益を得たのかを示します。

ROEは、株主が投資成果を見るための指標です。

ROAとROE

ROAとROEを読む

ROAとROEはそれぞれ、経営者の事業成績、株主の投資成績と分かったところで、その成績の読み方を見ていきます。
読み解くためのキーワードは(1)比較と(2)分解です。

(1)比較する

一般的な目安としては、ROAは5%以上、ROEは10%以上が求められると言われますが、業種によってもバラツキがあり一概に当てはめることはできません。
ROAやROEを読む効果的な方法の一つは、比較です。
特に、時系列比較と同業他社比較を行うことでROAやROEを読むことができます。
比較をすることで、成績の良し悪しが分かります。

(2)分解する

成績の良し悪しが見えてきた後に、その原因分析に有効な方法が分解です。
最初のステップとして、売上高を媒介にして分解していきます。
ROAを例に分解を行ってみます。

ROAの分解

上記のように、売上高を媒介にすることで、ROAを売上高経常利益率と総資産回転率に分解することができました。
売上高経常利益率は収益性を、総資産回転率は効率性を表します。

時系列や同業他社比較でROAが良かった(悪かった)場合、ROAを売上高経常利益率(収益性)と総資産回転率(効率性)に分解してから、それらを比較することで、良かった(悪かった)要因がどちらに起因するのかを読みとります。

加えて、経常利益は、売上総利益から販売管理費、営業外損益を控除した額なので、売上高経常利益率を、粗利率、人件費率、広告宣伝費率、、、へとさらに分解していくことができます。

売上高経常利益率の分解

実践:ROAの比較・分解

ROAと、ROAを分解した各指標について、実際に3社比較を行ってみます。

3社を比較するとA社のROAが9.15%と最も高いことがわかります。
分解した指標をみると、売上高経常利益率はB社の方が高いですが、総資産回転率が他社を上回ることが、高ROAの要因と分かります。
すなわち、A社は収益性では3社の中で2番目だが、効率性が高いことで高ROAを実現していることが分かります。

また、B社とC社を比較すると、B社が売上高経常利益率でC社を上回ることが分かります。
さらに分解すると、粗利率ではC社の方が高いものの、B社は人件費率や広告宣伝費率を抑えられていることから高い収益性を実現していることが分かります。

ROEの分解

事例ではROAの切り口から財務諸表を読み解きましたが、ROEも同様に分解することで財務諸表を読むことができます。
ROEの分解は、売上高と総資産を媒介にして、売上高当期純利益率、総資産回転率、財務レバレッジの3要素に分解して分析することができます。

ROEの分解

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