見出し画像

年度予算と予算折衝

前回のnoteで予算管理概論について説明しました。

予算作成の詳細については、ボリュームの関係で前回のnoteに書ききれなかったので、改めてこちらに書いていきます。

予算の体系

予算は全体として以下の体系からなっていますが、損益計算書予算だけを指して「予算」という表現するケースもあります。

  • 貸借対照表(BS)予算

  • キャッシュ・フロー(C/F)予算

  • 設備投資予算

  • 損益計算書(PL)予算=狭義の予算

    • A事業部の損益計算書予算

    • B事業部の損益計算書予算

なお、上記は事業部制の予算体系です。
カンパニー制を採用している場合は、カンパニーごとに貸借対照表予算も作成します。

事業部予算の作成

複数の事業部からなる会社の場合、損益計算書予算は、各事業部で作成した事業部予算を合算して作成します。
ここでは、事業部予算の作成方法を説明します。
事業部予算は1.過去実績の分析、2.予算の作成、3.予算の検証の3ステップで作成します。

1.過去実績の分析

どこまで分解できるかを把握
はじめに、過去の事業部実績を出来るだけ細かい単位に分解してください。
時間軸(日次、月次、四半期、年度)の分解、要素分解(販売単価×販売数)、商流や商品単位の分解など、どの単位まで分解できるのか把握してください。
そのあとに、予算作成に適切な粒度を決め、その粒度で分析をします。
実績が分割できない粒度で予算を作成することはできません。
(予算と実績の比較ができないと、予算管理ができないためです。管理のできない予算は、予算ではありません。)

次期も継続するものとしないものの把握
前期実績を分析して、前期のみの異常値や次期に当てはめられないものはないかを把握します。

どうにかなる費用とどうにもならない費用の把握
前期実績を分析して、管理可能費用と管理不能費用に分類します。
管理可能費用とは自分より下位のレイヤーで決められる費用、管理不能費用とは自分より上位のレイヤーで決まってしまう費用(本社で決められてしまう費用や、税金など国が決める費用)です。

2.予算の作成

前期実績からの踏襲
前期実績の分析の結果、次期も継続して発生すると把握した項目を引き延ばします。
この際、費用については、本当に継続が必要か、金額見直しの余地はないかを十分に検討します。

新規で発生する事象の反映
前期実績から変わる内容や新規で発生する内容を反映します。
新規案件がどの勘定科目になるか判断がつかない場合は経理に相談しましょう。
このとき、中期計画を実行するための投資を漏らさないように注意します。
特に費用については、担当者しか把握していない内容もあるため、部下にヒアリングし網羅的に集計します。

合理性を説明する
予算は基本的に足し算(費用項目の積み上げ)と掛け算(販売単価×販売数など)で作ります。
足し算掛け算の各項目に合理的な説明ができるレベルで分解されている必要があります。
合理的な説明とは、前期実績との比較、既に見えている見通し、類似事象との説明です。
なお、新規案件で合理的な説明が難しい場合は、以下の方法で対応します。
‐ 他部署、他社からの情報収集
‐ スモールでテストして実績を作る
‐ 説明ができないまま予算化するが、撤退基準を定めてマイナス影響の上限を明確にする。

3.作成した予算の検証

引き算と割り算の検証
作成した予算は、前期実績との差額(引き算)と、売上高に対する比率等(割り算)を出して、想定と異なっていないか、異常値がないかを検証をします。
基本的な分析項目は以下の通りです。
- 前期比
- 売上高利益率
- 1人当たり売上高
- 各費用の売上に対する比率

グラフ化による検証
前期実績と予算をグラフ化することも効果的な検証になります。

予算の折衝

ボトムアップ予算とトップダウン予算

ボトムアップ予算とは、事業部予算を単純合算した予算です。
トップダウン予算とは、社長などのトップが設定した予算です。
多くの会社では、トップダウンとボトムアップの折衷型で作成します。
折衷案のどこに落ち着けるかを調整するのが予算折衝のプロセスです。

予算折衝の手順

ボトムアップ予算とトップダウン予算に差異があった場合、以下の手順でボトムアップ予算を調整します。

費用から手を付ける
売上は不確実性が高いため、費用カットを優先的に検討します。
ただし、売上の予算額が過度に保守的な場合は、売上の額を見直します。

影響度の高い費用項目を特定する
予算検証時に算出した「各費用の売上に対する比率」を確認し、影響度の高い費用から再検討します。

管理可能費用の削減案を考える
管理可能費用とは、自分以下のレイヤーで意思決定できる費用です。
管理可能費用に対してしか削減案を考えることができないので、どの費用が管理可能かを特定することが重要です。
ただし、本当にどうにもならない費用なのか慎重に検討する必要があります。

中期計画への影響を考慮する
考えた削減案が中期計画にどのように影響するかを把握します。
中期計画への影響が小さい順に削減を実行します。

予算が出来たら

以上で予算が完成したら、いよいよ予算管理の始まりです。
予算は予算管理のために作成するものなので、ここでようやくスタートラインです。
予算管理については、前回のnoteで説明していますので、そちらを併せてご覧ください。

‐RECRUIT-

スタディプラス株式会社ではメンバーを募集しています。
募集中の職種はこちらをご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?