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合唱団の舞台稽古と演出



私達は日々いろいろな作品を上演しています♪
もう20年以上も同じ演出で公演が続いている作品、
今取り掛かっている現代物のオペラは来週のプレミエに向けて絶賛稽古中!!

新しい作品、レパートリーの作品でも、何シーズンか公演すると演出が新しくなる事も多く、
さて、どんなアイディアを舞台上で実現するのだろう?!
と、新作の舞台稽古が始まる時はとてもワクワクします。

新しいアイディアを現実のものにするために、
プレミエまでの時間、およそ1ヶ月の間
劇場内外にある各リハーサル場では
ソリスト、ダンサー、エキストラ、合唱団 など
がグループに分かれて演出、振り付け、音楽の稽古を
行って行きます。

ここ、合唱団の舞台稽古1日目は
演出家とスタッフが舞台美術の模型や、衣装のスケッチ、
インスピレーションを受けたモチーフの写真などを
交えてコンセプトを紹介して下さいます。
衣装はどうなるのか、舞台美術背景は?!
私達はどんな役どころを演じるのか?
緊張の一瞬です!


最近は古典物でもその時代に即した演出というのは少なくなっていて、解釈も現代の価値観や社会的問題点などを提示して浮き彫りにしていく物が多く見られます
これは世界的にそんな傾向になっていますよね。
何と、原作の内容や人物像などを変えてしまう、という事も多くなってきています。

けれど、

インスピレーションの源泉を演出家の豊かな想像の世界から紡ぎ出す 
素晴らしくクリエイティブな演出もあります。

今日お話ししたかったのは舞台の演出について

合唱目線でお話ししてみようと思います

演出家の方は私たちのこんな思いに気がついているかしら??

私達は結構大きなグループですが、
音楽的に考えて、舞台上で歌う場合

基本的に大切な事ってあるんです。

合唱パートを完璧に歌い上げる!!
なんといってもこれが一番大切な任務です

どうしたらこれが達成できるのか?!

ポジションは舞台中央
2列にパート毎に並んで立つ!!

作品によっては一曲くらいこう言う場面がある場合も有りますが、

まあ98%は舞台上に結構バラバラに配置されます

せめてパート毎に固まって配置して〜

と言う事を念頭に配置してくださる演出家の方がきたら
もう天使!!
私達は音楽に集中し
公演を心から堪能することができます!!

しかし、現実はそうはいかないんです〜

リハーサル場に集まり、バラバラに立っているメンバーたちに、
「はい!ここから5人目までは前にきて座って下さーい!」
「そっちの10人は階段を上がってバルコニーに行ってくださーい!」
「お、この3人はこちらのテーブルに着席ね!」

と言う感じでポジションを決められます。

これは
合唱メンバーがそれぞれ背景のように扱われている場。
つまり、合唱は

“その他大勢の村人”

的な役どころの場合

こうなると、私たちの任務は
ひたすら
雰囲気作り!!!

村人登場は決まって祭りか酒場シーン

こんな場面ではいい具合にメンバーが入り乱れていないと自然に見えないので

自分のパートの仲間の隣で歌う、ということは不可能になります。

音楽練習でいつも隣で歌っている仲間達が向こう側の端っこにいる!!
おおおこっちには私一人だ!!
という可哀想な状況になることも。
周りは他のパートの巨大な声量が響き、私は引き摺り込まれない様必死になって歌います。

その上平均身長よりちっちゃい私は大体男性の胸の辺りで身長が終わっているので、素晴らしい重低音の胸声の轟が
私の音楽家の繊細な耳に直に注入されるのです
鼓膜がもうどうにかなってしまいそうです

これはたまらん、明日の舞台稽古は離れ離れになら
ないようにパートの仲間と始終くっついていよう!
と強く誓います!

こんな感じで、ざっくりとポジションが決まる事が多いので、結構集中していないといけません

演出家の希望を実現する事は一番大事ですが
あまりにも合唱が歌うことに難がある場合には
合唱団のディレクターや指揮者が
変更の可能性を演出家の方と話し合うことになります。

例えば
全く指揮者が見えないポジションで歌う
オケやソリストが全く聞こえないところで歌う
という案件の場合
これは残念ながら演出家の方の意向であっても
No Go となります

そんな時はポジション変更が出るか、舞台袖などに
モニターが設置され、指揮者を見える様にしたり、
スピーカーを設置してオーケストラの音を聞こえる様にしてテクノロジーの力で問題を解決する場合もあります。
それが可能であれば、
指揮者に背を向けて歌う!
という様な事も起きるのです。
カーテンの後ろに立って歌うという事もありますし、、、
ベットや床に寝転んででも、
踊りながらでも歌います

どんな状況でも歌う事を試みますが、
演技するポジション、動き、音響の問題があったりで、
せっかく音楽練習を念入りに行っても
舞台の上でその完成度を再現するのは
難しい事があります。
演技の効果はとても良いのに
とても残念になります。

ひと昔前まではオペラの合唱団といえば
素晴らしい衣装を着て
皆がバーンと登場し、
威厳を持って歌う!!
そして退場。
というのが定番でしたが、
そういう古典的な演出は
最近少なくなってきている様に感じます。


演出家の方も個性が強く、
独特の演出様式を持っている方も多いです
例えば...

音楽のテンポに関わらず、
作品に絶対スローモーションが入る!
(これがなかなか難しい)

演出だけにとどまらず、
衣装や舞台背景も全て自分でデザインし、
何と合唱団員全員の名前と個性まで把握しており
一人一人に演じる為のモチーフを付けてくる
(全知全能の神ですか?!)
と、思いきや、

大きなグループは扱えないわ〜!
とコンセプトのみを話し、
あとは演出家助手と振付師に私たちを丸投げする
(それはかなり悲しい...)

何人ものアシスタントさん達がいる演出家
(彼らは一体何をしているのだろう??)

さあ登場して!
私に貴方達のアイディアを見せてください!
(私たちが演出するのですか?!)

ちょっと考えただけでも
これだけでてきました!
驚きの個性です!!!

これがゼロから舞台を作り上げるという
楽しい仕事が行われている現場です!

そんなエキサイティングな任務が
今日も遂行されています。

長い舞台練習を終えて劇場楽屋口を出ると
明るい日差しに目が眩みました
外はまだ明るいのを
暗い舞台にいるとすっかり忘れてしまいます
ふう〜

そして夜は全然違う作品の公演です
一休みして
頭を切り替えなくては!



























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