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写真は選択芸術である ~時を経る写真

 昔、撮った写真を見返す。当時は大した写真じゃないと感じて、セレクトしなかった写真。

僅か数年しかたってなくても、当時は大したことないと感じた写真がとっても良く見えたり、ずいぶん印象が変わって見えることが多い。

「写真は選択芸術である」

日々たくさんシャッターを切り、膨大な写真の中から「これは!」という写真を選び出す。その選ぶ力が、写真家には必要だ。

写真を選ぶには、その視点が大切だ。どんな視点を持って選ぶのか。それによって選ばれる写真は自ずと違ってくる。時を経て選ばれる写真が異なってくるのも、その「視点が異なってくる」ためだ。
時間は人の感性を変化させる。経た時間の分だけ、さまざまなことが変化する。それこそが、写真の視点(セレクト)にも変化をあたえるのだろう。

僕はあまり昔の話をするのは好きじゃないし、むしろこれから先の話をするのが楽しい気質だけれど、それなりに長く写真家生活を続けていて、過去の写真を整理整頓することがある。

すると、埋もれていた昔の写真の山から、ちょっとしたお宝写真が見つかったりする。もしくは、過去から現在までの時間軸を写真で俯瞰することで新たな組写真やそのテーマが見えてきたりするのだ。
最近、これが楽しい。

撮影当時の想いや苦労もよみがえり、今の自分と照らし合わせて見る写真の新鮮さ。仕事としてはその役目を終えた写真たちは、今となっては肩肘張らずに俯瞰して見れることもあって違う意味をもって語りかけてくる。

今は専らコロナ前に良く出張していた海外の写真を振り返っている。
取材仕事で行っているため拘束時間が長く、自由時間が少ない出張ではあったが、そんな中でも朝早く起きて街に出たり、少しの隙間時間をやりくりして出かけたりそれは楽しかった経験だった。
出来ることなら再訪し、当時と今との自身の被写体との向き合い方の変化を撮りくらべてまとめてみたい。いつできるか楽しみだ。

 ぜひ、皆さんも昔のネガ・ボックスやパソコンのハードディスクからひと昔まえに撮影した写真を見返してほしい。そこには、懐かしいだけではない、当時は思い至らなかった視点から見えてくる写真が眠っているはずだ。



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