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出会いがあればいいとも限らない

素敵なおじさんにめぐりあうのはとてもむずかしい。
別におじさんに限らないだろうけど、好きなタイプの人に出会うこと自体がむずかしい上に、うまく恋愛に発展するのはもっと大変だ。


女友達の一人が、通勤中にめちゃめちゃタイプの男の人とすれ違ったということを報告してきて、
「あ〜でももう二度と会えないだろうしな。ちゃんと話せる場で出会いたかったな〜」
というので、
「そんなことめったに無いのにもったいない!ハンカチでも落として拾ってもらえばよかったのに」
と言ったら、
「昭和かよ!!」
とツッコまれて終わったのだが、私も好きなタイプのおじさまにめぐりあうことが非常に少ないので、そんな機会を逃してしまった残念さはよくわかる。


もう本当に若い頃の話なのだが、私にしてはめずらしく仕事で海外に出張したことがあり、しかもその時に出会ったおじさんが非常に好みのタイプだったことがあった。たぶん60歳ぐらいの人だった。
会議室にその人が入って来たとき、
(わ、なんか素敵な人が来た!)
と思った。
相手方のトップの人だったのだが全然えらぶっていないし、いかにも頭が冴えていそうだけど優しそうで、私の好きな洒落っ気ゼロの真面目眼鏡をかけていた。
名刺交換をしたとき、一瞬くだけた顔で笑ってくれたのも感じがよかった。


その晩レストランで会食があった。
コースだったのだが、メイン料理は数種類の中からおのおの選ぶ形式だった。
注文を取りまとめる人が、
「じゃあ◯◯を頼む人は?」
と言ったとき、総勢10数名の中で手を挙げたのはそのおじさんと私だけだった。
私は「あ」と思ったが、彼も私を見てちょっと両眉を上げ「あれ?僕たちだけだね」みたいな顔をして笑ったので、私も思わず笑顔になった。
その後も目が合うとニコッと笑ってくれる。
他の人とは普通の顔で話してるのに‥‥!
なんかいいムード‥‥!


これ、彼が身近にいたら確実に好きになっちゃうパターンだなと思った。
もしこの後こっそり誘われたら行っちゃうな、泊まってるホテルとか聞かれたら教えちゃうなと、ばか丸出しの妄想をしたもののそんなことは無く。(そりゃそうだろう)
日本に帰ってきてから会食の時の写真が共有されたのだが、改めて見てもやっぱり好みのタイプで、ああ、あんなおじさんなかなかいないのにな〜としばらく思っていた。


‥‥おいおい、仕事仕事。
何もなかったけど、何かあったら余計まずかったでしょうが。


またある時、一人で街中を歩いていたらガラス張りのカフェの中にいたおじさんと目が合ったことがあった。
たぶん60代半ばぐらいだったろう、真面目眼鏡でこれまた私の好きなワイシャツにセーターという格好をしていて、テーブルに軽く肘をついてこっちを向いていた。
(あ、好みのタイプのおじさん‥‥)
と思ったら、その人も目をそらさないので数秒目が合ったままになった。
でもよく見たら、その人の向かい側には奥さんか恋人といった雰囲気の女の人が座っていた。
私は目をそらして通り過ぎながら、
(素敵なおじさんだったけど、女の人といる時に他の女をあんな風に見るなんて悪い人なんじゃないか。ああいう人を好きになったら苦労するぞ、私)
と思った。


‥‥いやいやおいおい、目が合っただけの見知らぬ人のことをそこまで発展させて考えなくていい。
悪い人扱いされたおじさんもとんだとばっちりだ。
でもでも、実際に目が合ったところからめくるめく恋に発展したおじさまもいたし一応よく考えてみないと‥‥(言い訳)


こんなふうに思い出してみると、しょっちゅう出会いがあるように錯覚してしまうが実際にはほとんど無い。皆無と言っても差し支えない気がするぐらい無い。
しかも私はひとたび好きなおじさまができると周りが目に入らなくなるタイプなので、なおのこと出会いも見逃しがちなのかもしれない。
そしてうまく行っていないおじさまにずっと執着してしまう、みたいな‥‥。


あっ、愚痴になってきた。
ともかく素敵な人と出会うのはむずかしいという話だ。
出会えればいいというものでもない。
しかし、一番難しいのは恋愛に発展した後かもしれない。
(わたし比)








目が合ったところからめくるめく恋に発展したおじさまのこと



勇気をふりしぼって素敵なおじさまに連絡先を渡したこともある


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