二次創作字書きにiPadはかなり良かった
(2022年5月追記)はてブに移行します。
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iPadを買った。原稿をするのに結構長いこと欲しかったiPadを念願叶って買った。
わたしは余暇の大半を二次創作の小説を書くことに費やす女で、その七割程度は10万字を超える長編だ。pixivなどのウェブで公開することもあるが、基本的には同人誌を作って頒布するまでを趣味としている。10万字を超える小説を同人誌にして発行するまでは膨大な作業工程があり、仕事が終わった後寝る前や早寝しての朝活時間を費やした程度では到底終わらない。仕事の休憩時間などにもiPhoneでちまちま小説を書いたりするが、なんと小説を書いただけでは同人誌は出ないのである。やることが、やることが多い! そして小説を書くという大前提においてさえ、小説を書く前や書いた後、書いてる最中にやることがとにかく多い。その辺の効率化を考えるにあたり、iPadの導入は有益なのではないかなと思っていた。そして買った。
多分三年ぐらい悩んだ末の購入で、悩んでいたのは主に「安い買い物ではない」「使うか分からない」「使いこなせるか分からない」の三点である。だが買った。そして買って使ったらとてもいいものだった。三つのお悩みポイントも恐るるに足らずという感じでとてもよかった。
という話をTwitterでしたら「わたしも購入悩んでるんですけど具体的に何に使ってますか?」「買って宝の持ち腐れしてます使い方教えて」「そもそも字書きさんってiPad使って何するの?」という質問マシュマロがとんとんと届いた。おお、結構みんな似たようなところで悩んでる…と思ったのと、iPad良いものだったので良かったよと伝えたいプレゼンオタクの気持ちがムクムクした結果、このnoteに至る。誰かの役に立てば幸いだ。
※書き手が腐女子であり、出した新刊が丸々R18本なので、以降そういうことを文字で記載した画像が入ります。
iPadビギナー字書きのiPad環境
iPadを導入したわたしが揃えたのは以下のスペックだ。
1)iPad(第6世代) / 32GB / Wi-Fiモデル / apple整備済品
2)applepencil(第1世代)
3)ペーパーライクフィルム
4)applepencil収納付カバー
整備済品の第6世代は26,800円だった。これにapplecare+とapplepencilを追加して全部で5万円を切った。フィルムとカバーは純正品ではない安価なものをネットで買ったものの、フルセットでこの値段は結構驚きだった。
何故第6世代にしたのか?
このマシュマロを見て頂くのが早いと思う。丁寧なプレゼンをわたしはそのまま丸呑みさせて頂いた。
iPadを買うならapplepencilはマストだったので(applepencilが使いたいからiPadが欲しかった)applepencil対応モデルである必要があった。とはいえ第2世代までは必要ないので、applepencil対応モデルの中で最も安価なもの、という選び方をした。
あとはマシュマロでも答えている通り、長年のappleユーザーの友人にも整備済品をおすすめされていたのも大きかった。彼女が言うならきっといいものだろうという信頼から、買うなら新品ではなく整備済品を買おうと思っていた。結果、買うぞと決めてから在庫を細かくチェックし続けて一ヶ月ぐらいで第6世代に巡り会えた。
第6世代はほんとに入らなかったなあ。
そんなこんなでiPadちゃんは我が家にやってきた。
もうかわいい。
そもそも字書きがiPadで何をしたいのか?
わたしは以下を想定してiPadの購入を検討していた。
1)校正
2)プロット
3)台割・進捗管理
4)画像系のラフ
5)その他(電子書籍、動画視聴、ゲーム等)
とまあ色々あるのだが、決め手は「新しいおもちゃが欲しい」である。自粛生活のおかげで新しいオモチャが欲しい願望が頂点に達したのである。給付金もらったしね。
そしてこの想定は、今のところ全て実行している。つい先日も同人誌を一冊発行したがこのおニューのiPadもかなり活用した。その話を一つずつしていこうと思う。
iPadで字書きがすること①校正
わたしはこれまでiPhoneで校正をしていた。パソコン作業の時間は小説をタイピングすることに費やしたいので、どこでもできる校正は隙間時間に行いたい。結果、PDF化した原稿データをDropboxを経由してiPhoneのPDF書き込みアプリで校正する、というスタイルを取っていた。
だがiPhoneは画面が小さい。いちいち拡大縮小をかけ、ページ推移するごとに位置を直し、指で校正の印をつけるもののポイントはずれがち、タッチペンを導入してみるもそもそもモニターが小さすぎて書き込めない、指で書く修正の文字は読みにくく「改行」「句点読点」「トルツメ」「助詞」程度ならまだ分かるが、文章丸々修正しようと思ったら別途キーボードを呼び出して指示をフリック入力しなければならない…と面倒が多かった。面倒になって印だけをつけて反映させるときに考えたりとか、そもそも修正入れるのを諦めたりとかも少なくなかった。
iPad校正メリット①画面が大きい
これがiPadである。9.7インチ。なんて広大なモニターだろう。拡大縮小なしに修正入れ放題、applepencilで書き込み放題、ページ推移楽ちん、赤字修正を反映させたあとのマーカーチェックも簡単…とあまりにも便利で泣きそうになった。読みやすいのであらやミスに気付きやすい、考えやすい、気兼ねなく細かく修正が入れられる。
iPad校正メリット②applepencil
applepencilはペン先が細いので、それも書き込みやすい要因だと思う。applepencilを使ってみたい、使いたい、というのもiPadが欲しい理由の一つだったので、素晴らしい使い心地で本当によかった。ペーパーライクフィルムはあった方がいいというのが個人的な感想。iPhoneで書き込みしなくなった理由と同じだ、書き心地は校正の質を左右する。
iPad校正メリット③ペーパーレス
そして紙のゴミが出ない…。昔は全ページ出力印刷して直接ペンで赤入れしていたが、あのときの校正のしやすさがiPad+applepencil校正にはあった。こんなにも便利なのに紙ゴミが出ないんだから文明の危機様々である。
説明しようにも出せる画像がほんとにない……。真面目な本出したときに画像差し換えたい。
iPadで字書きがすること②プロット
「こんな話を書きたいな」と思ったあとに話をふくらませるとき、頭の中だけで考えているより、キーボードでタイピングするより、フリック入力をするより、紙の上で手を動かした方が断然考えがまとまると思う。マインドマップを作ったり、思いつくままに書いたり、展開で悩んだときに立ち戻って新しく書き直してみたり……手書き作業はそれなりに多いため、そのためプロット用のノートやクロッキー帳を何冊も用意していたが、今後はiPadだけで全てまかなえてしまう。
使うのは主に純正アプリの「メモ」だ。正直これの使い勝手が良すぎて、他のアプリの必要性を感じない。
「メモ」は本当にシンプルな作りで、ツールはペンが3種、消しゴム、切り抜きペン、定規の四つのみ。おかげで色変え・太さ変え・ペン変えがめちゃくちゃ速くできる。この辺apple製品だなあという感じだ。
ここもかなりいいのだが、わたしはスクロールすると無限に書き込み続けられる点が一番のお気に入りだ。ロールペーパーをころころ転がして好きなだけ描き続けられる感覚とでも言えばいいだろうか。ノートを捲る、画像サイズを変える、その手間が必要ない。書きたいだけずっと書いていけるし、切りたくなったところで切ればいい。わたしはExcelにプロットを起こすので、Excel同様ずっと行が続いていくのが性に合っているのかもしれない。
それと同時に新規ファイルを作るのも一瞬なので、エピソードごと・キャラ別・全体の流れ用・覚えておきたいことメモ・設定資料など、状況に応じて分けられるのもいい。
iPadで字書きがすること③台割・進捗管理
わたしは原稿管理のほとんどをExcelで行う。原稿期間が始まると台割・プロット・スケジュール・予算等をそれぞれ別シートに作ったExcelファイルを新刊1冊ごとに1つ用意して、以降ずっと更新をかけながら使っていくのだ。だから原稿中は常時開いているし、何かあるとすぐExcelを確認する。
そしてiPadはOfficeが無料で使える(今はiPadじゃなくても使えるようになったんだっけな?)。ExcelファイルはDropboxに入れているので、iPhoneがあれば出先でもアクセス可能だが修正はできない。けど、iPadなら可能だ。これは相当便利で、今回もページが足りなくなり伸ばす算段をしていた昼休みに台割を修正した。同人誌印刷所は基本8ページごとの値段設定なので、1ページだけ伸ばすということができない(できる印刷所さんがあるのも分かっている)。なのでどこをどう伸ばすか、どこが足りなくて、どのエピソードを縮めるかなどを考えるとき、修正した台割がわたしには不可欠なのだ。なのでかなり助かった。
進捗管理も同様だ。今何文字まで書いて、今日は何文字書いたか、なども全てExcelで管理しているのだが、総文字数のカウントだけして計算式の入ったExcelに入力しないで朝活を終えてしまった、みたいなことはしょっちゅうある。ちまちまでも進んでいることを確認したい(それがモチベーションになる)わたしにとって、出先でちょちょっと入力して今現在の進捗を確認できるのは精神安定にも効いた。どれだけ情緒不安定で原稿やってるんだという感じだが、原稿中は常に不安定でパニックを起こしているので勘弁してやってほしい。
iPadで字書きがすること④画像系のラフ
字書きでも同人誌を発行するためには画像系の作業が入る。わたしは表紙を作ったりのデザイン作業が好き(というかデザイン含めて一冊の本を作るという趣味を楽しんでいる)なので、この作業は結構長めに時間を取る。applepencilが欲しかった理由でもある。クロッキーするようにiPadを使いたかったのだ。
表紙を作るには物語のプロット同様、イメージを固めるためのラフ作業が不可欠だ。というか、ラフ作った方がいいものが速く作れるのでやってる、と言うのが正しい。
タイトルロゴのラフ。
ラフ作業も「メモ」でやる。iPadにも画像編集アプリとしてAffinityのPhotoとDesignerを入れてあるが、こっちに移る前段階の準備をする。文字で書いたり色を変えてみたり必要要素を抜き出したりロゴを配置したり。うまくいかなかったものも消さずに新規作成新規作成の繰り返しで作っていくので、その辺もメモと相性がいいように思う。
こんな感じになった。かわいい。
Affinityシリーズ、なんでこんなに安いのか謎なぐらい便利。チュートリアルが動画で用意されているのも分かりやすい。PublisherはまだiPad用アプリがないのだそうだ。リリースされたら絶対買おうと思う。
字書きがiPadを買って良かったこと
既に書いてあることの繰り返しもあるがまとめるとこうだ。
1)画面が大きくて校正しやすい
2)applepencilの使い勝手がすごくいい
3)AirDropなどiPhoneとの連携があまりに便利
4)iCloudを経由した純正アプリの使い勝手のよさ
1)と2)は先述の通り、かつ、買いたい理由だった。買ってみて、やはりよいものだったなと感動した感じだ。
3)と4)は実際使ってみて「想定もしていなかったけどこんなにいいものだったなんて!」と驚愕した感じだ。思っていたよりさらによかったポイントである。
買ったiPadはWi-Fiモデルだか、出先でも全く苦にならないのはAirDropを始めとしたiPhoneとの連携力の高さだ。appleシリーズで使うことを想定してあるからだろう。そもそもiPadの設定は「隣のiPhoneはあなたのものですか?」がスタート地点なのだ(アンドロイドユーザーは分からなくてすまない)。面倒な設定のほとんどを自動で引き継いでくれる時点で「もうデジタル関係全部appleがいい……」と思ってしまう。それぐらい、連携が行き届いている。
AirDropがあれば、例えばiPhoneからアクセスしたDropbox内の校正用PDFをiPadに飛ばすことができる。
純正アプリは特に強く、例えばメモなどは、ネット環境にないiPadで作業中でもiPhoneを立ち上げさえすれば同時にアクセスできたりする(昨日気付いた)。
ネットだってiPhoneの電波を分け合うことができる(一昨日気付いた)。
恐らくわたしが把握できていない便利機能は他にも山ほどあるのだろうが、今時点でもかなり便利に活用している。
字書きがiPadを買って二ヶ月経った今思うこと
「安い買い物ではない」「使うか分からない」「使いこなせるか分からない」の三点で購入を悩んでいたと、わたしは書いた。だが買った。そして買って使ったらとてもいいものだった。三つのお悩みポイントも恐るるに足らずという感じでとてもよかった。
「安い買い物ではない」
そう悩んでいたとき、iPadよりもっと安いタブレットの購入も検討していた。校正をするだけなら大きなモニターがあればいいだけだし、ならわざわざiPadにする必要もないだろうと。けれど、いざiPhoneとの連携を体感すると、もうiPad以外の選択肢はなかったなと思って仕方がない。
「使うか分からない」
iPadを使わない日は、うちにやってきて二ヶ月、まだない。大きな画面で校正し、電子書籍を見開きで読み(iPhoneで見開きはきつい)、iPhoneと二台使いでソシャゲを同時進行し、動画を流し、ラフを描き、プロットを作り、やはり大きな画面で素材を探して吟味しては、毎日鞄に入れて連れ歩いている。フルセットで786g……は車通勤だから平気なのかな。毎回重いなとは思ってるけど、持ち歩かない選択肢はなしだ。
「使いこなせるか分からない」
iPadはとにかくシンプルに作られている。あれもこれでもできるんだけど、それよりも「この機能を徹底的にシンプルに無駄なく速く」みたいなことに特化して作られている気がする(メモとか)。だから、たくさんの機能を覚えるよりも、使いたいことをより心地よく使える機械、と思って接するといいのかなと思った。
字書きがiPadと付き合っていくためにしたいこと
1)出先ライティングの強化
文字入力はまだiPhone+フリック入力の方が速いのだが、絶対タイピングの方が速くなるはずなのでキーボードとの連携を強めたいのが一つ。
2)画像作業の強化
出先で告知画像くらいは作れるようになりたい(そして夜のパソコン作業時間をもっとライティングに注ぎたい)のが一つ。
そして最後の一つ。
3)iPadで校正をする時間の捻出
「iPadの大きな画面でする校正最高!」「原稿にiPadいいよ!」と散々言ってきたが、今回の新刊、最後まで書き終えたのが〆切当日の日付を超えたときだった。そこから校正である。いかにiPadが優秀な道具であろうとも、〆切まで残り数時間でどんな校正ができようか。
もっと早く書き終えて、もっとたくさん校正時間を取る。
これを今後最大の課題にしているところだ。全然iPad関係ないじゃんという感じだが、iPadを使って校正したいから校正するための時間を捻出するの! そのためには早く書き終えるの! という風が吹けば桶屋が儲かる方式なのでこれでいいのだ。
とはいえこれはわたしが字書きとして愚かだというだけの話であり、この記事はやはり字書きにiPadはよいものだったという話なのである。iPad、買ってよかったよ!
Twitter用に四枚の画像で説明したいな~と思って書いたラフ。