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長文と文通

インスタグラムやLINEなど、日常で文章を打つときに、どうしても長文になってしまう。
短い文章で簡潔に伝えられない。

LINEを始めたばかりの頃は、一言だけ打って送信して…という行為に戸惑った。
伝えたいことを一回の文章に収めて一度で済ませたい、のだと思う。
長文になるのは何故?と、過去を振り返ってみた。

20代。自分のパソコンを購入して、パソコンを持つ友達同士でアドレスを交換し、メールを送り合うようになった。電話ではなく、時間を気にせず送信し、相手が都合の良いときにメッセージを受け取り読んでもらう気軽さが嬉しかった。よって急ぎの連絡ではなくて、ちょっと聞いて欲しいこと、近況なんかをつらつらと綴りやりとりしていた。

その後、携帯電話が普及し、パソコンを立ち上げることもなく、思い立ったらすぐにメッセージを入れられる気軽さが良く、携帯メールがメインに。受信音が鳴ることを考えて、送信する時間帯を気にするようになった。こちらも、一度に伝えたくて、時には要件をわかりやすく箇条書きのようにしたり工夫しつつも、やはり長文だった。

更に辿ると。
小学校高学年から20代前半くらいまで、文通をしていた。
手書きでの手紙のやり取りだ。

メールなどがなかった小学校時代は、雑誌などに「文通しましょう」というコーナーがあった。
学年や趣味など自己紹介的なことが書いてあり、「こんな話をやりとりしましょう」と、住所と名前が公開されていて、それを見て繋がってみたいと思った人が直接手紙を出し、やり取りが始まるのだ。

私自身、コーナーに自分の情報を公開したことはなかったが、載っていた人に手紙を送った経験がある。
遠く離れた場所に住む人と繋がれることにワクワクした。
イラストが上手な子に感動したり、可愛い文字を書く子に憧れたり。
手書きから伝わってくるもの、人となりがわかったり。

しかし、手紙を書いてポストに入れて送る…ということから、2〜3回やり取りして途絶えたり、なかなか長続きはしなかった。

そんな中、中学2年生くらいから20代前半まで、1人の子と文通をしていた。

彼女は、小学校の途中で引越してきた子で、5年生くらいで同じクラスになり、仲良くなった子。
こちらは田舎なので、都会からやってきたその子から沢山の刺激をもらった。
考え方や好きなもののこと、暮らしぶり。視野の広さ。本や映画を知っていて、熟読して語ってくれること。絵も文章も上手で。とにかく魅力的な子だ。

仲良くなった彼女が、中学2年生くらいで引越すことになる。
そこから手紙のやり取りが始まった。
まだまだ彼女からたくさんの話を聞きたくて。

そんな彼女だから、開ける前の封筒からしてセンスが良くて、ポストを開けるのが楽しみだった。
無地の封筒だけど、いくつかのシールを組み合わせて可愛らしくあしらっていたり、手書きのイラストに綺麗に色が塗られていたり。素敵な切手だったり。
レターセットも毎回違っていて、選ぶセンス、探すセンスにいつも尊敬の念を抱いていた。

お互い、引越した後の近況報告のやり取りだが、彼女は話すように、もしくは小説のように、とにかく細やかにわかりやすく文章を書いていた。1度の手紙が5〜6枚なんてことも度々。
文字はいつも安定していて読みやすくて。彼女の書く文字やイラストが大好きだ。
私はというと、感情によって丁寧さも失われていたことがあった。

小説を読むように、彼女から届く手紙を読み、また到着するのを楽しみにしていた。読んでいると自分も同じように書きたくなり、5〜6枚送ることもあった。

それだけ書くから、ネタが尽きるかというとそれもなくて。
社会人になれば、仕事のことや周りの人とのこと。気になる人のこと。
自然と、日常の小さな小さな楽しみや喜びも拾い上げられるようになった。
いつの間にか、細やかに報告するようになっていた。
彼女に伝えながらも、書くことで自分の気持ちの整理をする時間となっていたのは間違いない。

私が先に結婚して子どもを産み、そこからバタバタの日々となり、いつの日からかメールでのやりとりとなったのだが、時々は「彼女にはやっぱり手紙で書きたい」と手紙を送ることもあった。
私の父の闘病を境に、連絡を取らなくなってしまっていた。

子どもの学校の役員になった時に、1年間を終えての文章を書く機会があって、すんなり文字数に収めることが出来たとき。
子どもの読書感想文の書き方を教えて、入選したとき。
メールやラインでやりとりした時に「あなたの文章、わかりやすいね」と言ってもらえたとき。
…文章が上手く書けたときは必ずと言っていいほど「彼女との文通があったから」ということを思い出して心の中で感謝する。
「あの頃、私の話に付き合ってくれてありがとう」と。
「ただ、あの頃の続きで今も文章が長くなってしまうんだ…。」

写真の手紙の山が、彼女から貰った手紙だ。

しばらく読み返すことが無く、年末に片付けていた時に手紙の箱を開けた。
懐かしい宛名の文字。
中身は、私が書いたことに対しての返事も書かれていたので、なんだか恥ずかしくてそのまま元に戻した。


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