大銀杏と猫

まぶしいくらいの黄色い風が吹く。
乱舞するイチョウの葉は、風に包まれ
吹き上がりながら地面に落ちていく。
岐阜県高山市にある飛騨国分寺の大銀杏。
その落葉の様子は、まるで歌舞伎の舞台のようだった。

その光景にうっとりし、夢うつつのまま山門を出ると、
そこに二匹の野良猫がいた。
細めの黒猫と丸い白猫。
あら可愛や、と近づくと、
猫たちは、大変仲睦まじい状況であった。
あ、と思った。
急に現実的な気持ちになった。
人や動物が仲良く睦ぶ姿は微笑ましいが、
行き過ぎると見ているこっちが恥ずかしい。
お邪魔しました、と立ち去ろうとしたら、
同じく前を通ったご婦人二人組も
「あら、やだ」と言わんばかりに
身の置き所がないような苦笑いをして通り過ぎた。
まさか、落葉の光景とともに
生命の営みまで見られるとは思いもしなかった。
おそらく半年も経たないうちに、
愛くるしい子猫たちが、この寺を走り回る姿が見られるだろう。