噛ませ犬ごはん #毎週ショートショートnote
このまま、天才の噛ませ犬になってしまうのか。
将棋界に現れた天才少年は、あっという間に七つのタイトルを獲得した。全冠制覇まであと一つ。私はそのタイトル戦で天才を迎え撃たねばならなくなった。
だが既に三連敗。もう後がない。
第四局の対局場は地方の高級旅館だった。
地元の関係者たちが、天才のタイトル奪冠を願う中、旅館の板場に勤める青年が、
「ずっと応援してます!」
人目を盗んで、私に声をかけてくれた。
今、私の目の前には豪勢な昼食が並んでいる。
世間でいう将棋メシだ。だが劣勢だった私は、飯を食う気になれなかった。
「先生が良い手を指せるように、魂込めて料理作ります!」
板場の青年が、そう言ってくれたのを思い出し、箸を取る。
一つ一つ料理を噛みしめるうち、私の心は不思議と静かになっていった。
噛ませ犬が負け犬になろうとも、私は最後まで自分の一手を追い求めよう。
そう決意した次の瞬間、私の頭に天啓の如く妙手が浮かんだ。
(410文字)
先日、他の方のショートショートと設定が被ってしまい、自作を下書きに戻しました。でもやっぱり何か書きたくて再挑戦! 今回は他の方の作品は確認しないで投稿します。
もし既に似た設定の作品があったらごめんなさい!
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