うんうん、おいしい。

「うんうん、おいしい」
向かいに座る丸眼鏡のご婦人が、
しきりにうなずきながらラーメンを食べている。
その両脇には、夫とその父親と思われる家族が座り、
同じくラーメンを食べている。

「うんうん、さっぱりしてる。懐かしい味、おいしい」
丸眼鏡の人がまたうなずく。両脇の家族は無反応。
そうだね、とか、うまいね、とか、何か言ってあげればいいのに。
そう思いながら、私はチャーシューを頬張る。

福島の喜多方ラーメンはおいしい。
その証拠に丸眼鏡の人は、まだうんうんうなずいている。

舌にのせた瞬間「うまい!」となるのが舌鼓で、
丸眼鏡の人のように、すすって噛んで飲み込んで、
その味に納得しながら、うんうんうなずくのを
喉鼓というのだろう。

「うんうん、おいしい」
と、丸眼鏡の人。やはり家族は無反応。
私は「おいしいですね」と話しかけたくなったが、
実際そんな勇気もなく、
心の中で「おいしいですね」と呟きながら、
私も、うんうん、うなずいた。

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