クリスマスカラス #毎週ショートショートnote
「お父さんの嘘つき!」
今日、息子がサンタクロースの正体を知ってしまった。翔はまだ4歳。現実を知るには早すぎる年齢だ。
「サンタなんかいないって、誠くんが言ってた! 本当は…本当は…」
「待て、翔! それ以上言うな!」
翔がそれを口にするのが耐えられなかった私は、近所の悪ガキ、誠を恨めしく思いつつも、翔の口を塞いだ。
「いいか、翔。サンタはクリスマスが近づくと仮面ライダーみたいに変身できるんだ。人間が気づかないだけでサンタはあちこちにいる」
「そうなの?」
苦し紛れに話していると、窓から見える電線にカラスが止まっていた。
クリスマス…カラス…
私は思わずカラスを指差した。
「見ろ、翔! あれが千の顔を持つ男、クリスマスカラス! サンタの化身だ!」
「えっ!」
急にプロレス好きの血が騒ぐ。完全にミル・マスカラスに引っ張られてしまった。
「サンタさぁーん!」
翔が窓に向かって叫ぶと
「カァ!」
返事をするようにカラスが鳴いた。
(410文字)
こちらに参加してみました。今週のお題は「クリスマスカラス」
いやぁ、410文字制限はなかなか厳しいです。
語感的に、ミル・マスカラスが浮かんでしまうので、もうそれに向かって書くことにしました。どうにかこうにかひねり出し、短文に収める感じは、なぞかけと似ているかもしれません。
お父さんの血を騒がせた男。
お読み頂き、本当に有難うございました!