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花丸恵の食べたり呑んだり作ったり

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自分が書いた食べ物やお酒などに関するエッセイをまとめました。 食べた感想だけでなく、食べ物に関して疑問や思ったことなども書いています。 今後もどんどん追加していきます。 食いしん…
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#至福のスイーツ

ゆく年くる年、六花亭

 とうとう大晦日。  差し迫るというよりも、真隣にぴったり2024年が座って待っている状態だ。 「もうちょっと待ってくれない?」  と頼んでみても、辰のセーターを着た2024年は笑顔で首を振っている。どうやら待ってはくれないようだ。  ならば来い!  来るんだ2024年! さぁ!  私が両手を広げるも、 「まだ、ちょっとあるから……」  と言って2024年は、この胸に飛び込んできてはくれない。  時間厳守。2024年、時間をきちんと守れる良い子である。  さて。  大

アイスモナカを愛す

 私は我慢の利かない女である。  袋菓子など一度開封してしまうと、途中で袋を閉じてとっておくことができない。さすがに最近は四十路も半ばに差し掛かり、袋菓子を平らげるようなことはしなくなったが、若い頃は、気が付けば袋の中が空っぽ、ということがざらであった。  全部食べたらダメだ!  そんなことを思いつつも、目の端で食べかけの袋菓子を追っている。そうなると、ずっと食べかけの袋菓子の気配を背中で感じながら、時を過ごすことになってしまう。  お菓子を全部食べられない、というのは

チョコレートを噛むべきか舐めるべきか

 夫がチョコレートを食べている。  箱から一粒取り出し、口に入れ、唇をすぼめて動かしている。歯を使っている様子はない。  夫はチョコレートを、飴のように舐めながら食べているのだ。  まるで合わない入れ歯に苦慮しているおじいちゃんのように、もにょもにょもにょもにょ口を動かしている。  大事に食べているといえば聞こえはいいのだが、見ている方としては、どうもじれったい。 「もうひとつどう?」  私が箱を差し出しても、 「まだ、食べてる」  夫はもにょもにょを続けている。  

干し芋は風の味

 干し芋は風の味がする。  自分で作るようになって、私は初めてそのことを知った。  昨年末のこと。  近所の野菜販売所で、サツマイモを売っていたので買ってみた。  そのままふかして食べようか。いや、ちょっと気合を入れてスイートポテトにしようか。そんなことを考えていたとき、ふと、あのぺらりとした素朴な干し芋の姿が頭に浮かんだ。  これまでも、何度か干し芋を作ってみようと思ったことはあるが、面倒な気がしてやらずじまいだった。今になってみれば、何故あんなに面倒に思っていたのか不

銘菓を好むお年頃

 お盆休みが近づいてくると、スーパーやデパートなどでは、帰省土産の販売に精を出しはじめる。  箱詰めされたゼリーや水ようかんが涼しげで、クッキーやおかきの詰め合わせなどを見ていると、帰省もしないのに、つい買いたくなってしまう。  東京土産で有名なのが、昔からあるものだと人形焼きや雷おこし、芋ようかんなどが思い浮かぶが、近年は東京ばなななども定番になっている。  京都は八つ橋、福岡だと博多通りもんなど、各地様々なお土産用のお菓子がある。各地域ごとに、おらが町のお菓子、というも

ブルボン党チョコリエール派

 参院選の火蓋が切って落とされた。各党の党首が様々な主張を繰り広げ、候補者たちは、限りある議席を死守したり奪取しようと必死である。  2022年現在、日本には9つの党がある。私の子供の頃に比べたら、随分と数が増えた気がする。しかも、党によっては、そこから更に分かれ、派閥やグループというものが存在していたりするのだから、やはり同じ党であっても、個人的な主義主張は、どうしたって違いが出るものなのだ。  近年、明治製菓が、きのこの山、たけのこの里、どっち派?  なる争いを自ら巻き

花祭りを盛り上げたい

 明日、4月8日はお釈迦様の誕生日だ。  この日は各地で花祭りが行なわれ、その誕生日をお祝いしている。  だが、この花祭り、残念なことにそれほど盛り上がってるようには見えない。あとからやってきたハロウィンは、渋谷のスクランブル交差点にあれほどの人を集めるというのに、花祭りでDJポリスが出動したいう話は聞いたことがない。  花祭りと同じく、クリスマスもイエスキリストの誕生日を祝うものだが、その盛り上がり方は桁違いだ。  もし、釈迦とキリストが、一般家庭の普通の兄弟だとして、

金柑の思い出

 金柑を見ると、思い出す人がいる。  ひとりは母で、もうひとりはデパ地下で出会った通りすがりの女の人だ。  金柑は、ピンポン玉ほどの小さな柑橘類の果物だ。ひょっとしたら、卓球もできるのではないかと思えるくらい、丸くてコロコロとしている。  私の母は、旬になるとこの金柑をよく買って食べていた。母の口から、 「私、金柑大好きなのよぉ」  と言っているのを聞いたことはないので、大好物ではないのだろうが、時期になると、母は一人で金柑を食べていた。  随分前に、夫、祖母、母、私の

節分に豆菓子はいかが?

 この前、年が明けたばかりだと思っていたのに、明日は何と、節分だそうだ。生きていると、いろいろなことに慣れていくものだが、時間の速さは、いつ何時でも私を驚かせに来るので油断ならない。  節分といえば豆だ。  昨年の今頃、スーパーで小学校低学年らしい男の子が、 「お父さん!節分の豆買ってよ」  そう言って、お父さんの袖を掴んで引っ張っていた。 「えぇ?この前買ったじゃないか。そんなに買っても食べきれないよ」  お父さんは、少し驚いた様子で男の子を見る。 「ボク、豆好きなんだよ

今川焼きで御座候

明け方、こんな夢を見た。 駅の地下街のような場所に、御座候(ござそうろう) と書かれた看板の店があった。 私はその店の前で、外国人と共に列に並びながら、 今川焼きを食べている。 何故外国人であったか、わからないが、 日本の菓子に興味津々といった様子で、その外国人たちも 嬉しそうに今川焼きを頬張りながら列に並んでいた。 所詮夢の話なので、脈絡はないだろうが、 予想するに、一つ買って食べてみて美味しかったから、 再度購入しようと列に並んでいる状況なのだろう。 しかも不思議なこ