マガジンのカバー画像

花丸恵の食べたり呑んだり作ったり

101
自分が書いた食べ物やお酒などに関するエッセイをまとめました。 食べた感想だけでなく、食べ物に関して疑問や思ったことなども書いています。 今後もどんどん追加していきます。 食いしん…
運営しているクリエイター

#おいしいはたのしい

ヘルシー花二郎開店 後編

                         前編はこちら 夫から「家で二郎が食べたい」と言い放たれた私は、 食材を調達しに行った。 もやし、キャベツ、にんにく、太い中華麺、豚骨醤油ラーメンのタレ、 そして忘れてはならない【豚】 本当の二郎では、ここで背油が登場するのだが、 夫が油のトッピングはいらないと言うので、省略している。 二郎に油は必須やろが!と荒ぶるジロリアンの皆さんの声が聞こえてきそうだが、 (ラーメン二郎愛好家の皆さんを世間ではジロリアンと呼ぶらしい

ヘルシー花二郎開店 前編

「ねぇ、モッコリ豚」 夫がそう言って私に話しかけた。 一瞬、耳を疑う。 確かに、私は夫より、だいぶ横幅に厚みがある。 贔屓目に見ても、決してスレンダーボディーではない。 しかし、だからといって20数年共に暮らしてきた伴侶に対して、 豚呼ばわりは、ちょいっと言葉がすぎるのではないか。 そんな呼ばれ方をして、「なあに」なんて ご機嫌な返事ができるほど私の心は広くない。 思わず 「おおん?」と下顎を突き出して夫を見た。アントニオ猪木降臨である。 その後の夫の発言によっては、私

本日、おでん千秋楽

 よし! おでんだ! 私は力強く宣言した。  その日私が、おでんを作ろうと思い立ったのには訳がある。この冬最後の冷え込みになるという天気予報。飲みたいと思っていた日本酒を口開けしたこと。そろそろ自家製めんつゆを作りたいと思っていたこと。以上の3つだ。  おでんというものは、寒い時に食べたい。北海道民でもないのに、 「しばれるねぇー」  などと口をついて出てしまう時に食べたい。 「この冬最後の冷え込みになるでしょう」  そんなニュースが聞こえてくると、もうこれで今シーズン

世界平和はサッポロ一番から

 ポロイチ、という言葉を知ったのは、つい先日のことである。  最初は、ポロシャツを偏愛している人たちが、 「ポロシャツが一番好き」  という意味の言葉を発する時、略して 「やっぱ、ポロイチだわ」  みたいな感じで使っているのかと思ったが、全く違っていた。  どうやら、このポロイチ、かの有名インスタント袋麺サッポロ一番の略らしいのだ。若者の間で広まっているのだろうか。  どの世代でポロイチという言葉が一般化しているのかわからないが、 「ポロイチの塩」  「ポロイチのしょう

たまご寿司からの解放

暖かくなれば、そろそろミモザの花の季節になる。 アカシアともいうらしい。 緑色の茎から、小さな黄色い花が綿のように咲き、 春のやわらかな暖かさを、目から感じる、可愛らしい花だ。 私はこのミモザを道で見かけると、うっとり、思わず目を細めてしまう。 このミモザ、オムレツの色にそっくりなのだ。 オムレツ色の花は、私に否応なく卵料理を連想させる。 あー、タマゴサンド食べたい。じゃがいも入れたオムレツもいいな。 だし巻き卵で日本酒で一杯もオツだし、 まだ小寒いから、かきたまうどん

サイコパスな餅

ある日、餅を食べる私に向かって、母がこう言った。 「慌てずにゆっくり食べなさいよ。お餅で死ぬ人だっているんだから」 青天の霹靂とはまさにこのことで、 当時、10歳に満たない子供であった私は、餅で人が死ぬという事実に 驚きを通り越して恐怖を感じた。母に理由を聞くと、 「喉につまらせて息できなくなって死んじゃうのよ。 口開けて、掃除機で餅を吸い取って助かった人もいるらしいけどね。 苦しいわよ、絶対。だから、よく噛んで飲み込まないと危ないのよ」 一度は母の冗談かと疑ってみた