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花丸恵の食べたり呑んだり作ったり

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自分が書いた食べ物やお酒などに関するエッセイをまとめました。 食べた感想だけでなく、食べ物に関して疑問や思ったことなども書いています。 今後もどんどん追加していきます。 食いしん…
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2021年2月の記事一覧

本日、おでん千秋楽

 よし! おでんだ! 私は力強く宣言した。  その日私が、おでんを作ろうと思い立ったのには訳がある。この冬最後の冷え込みになるという天気予報。飲みたいと思っていた日本酒を口開けしたこと。そろそろ自家製めんつゆを作りたいと思っていたこと。以上の3つだ。  おでんというものは、寒い時に食べたい。北海道民でもないのに、 「しばれるねぇー」  などと口をついて出てしまう時に食べたい。 「この冬最後の冷え込みになるでしょう」  そんなニュースが聞こえてくると、もうこれで今シーズン

祖母とチャーハンと私

 小学生の頃、私は祖母が苦手だった。  自分は、祖母にあまり愛されていない、そう感じていた。  私には姉がいるのだが、何よりも祖母は、この姉が可愛くて仕方がなく、その愛情の熱量には、かなりの温度差があった。  母は週に1度、金曜日に、仕事で家を留守にしていた。そのときは祖母が自宅にやってきて、私や姉の面倒を見てくれる。小学1年生の頃の私にとって、金曜日は、とても気が重いものだった。  私が帰ってきても、姉じゃないとわかると、露骨にがっかりされ、姉だと、まるで猫でも帰ってき

世界平和はサッポロ一番から

 ポロイチ、という言葉を知ったのは、つい先日のことである。  最初は、ポロシャツを偏愛している人たちが、 「ポロシャツが一番好き」  という意味の言葉を発する時、略して 「やっぱ、ポロイチだわ」  みたいな感じで使っているのかと思ったが、全く違っていた。  どうやら、このポロイチ、かの有名インスタント袋麺サッポロ一番の略らしいのだ。若者の間で広まっているのだろうか。  どの世代でポロイチという言葉が一般化しているのかわからないが、 「ポロイチの塩」  「ポロイチのしょう

ポップコーン被害に遭わないために

詐欺被害の手口は、年々巧妙化している。 相手も騙してやろう、という気でやってくるので、 それはそれは、入念な準備をしてくる。 その世の中うまい話はない、と言うが、 たまにうまい話で、うまくいっている人の話などを耳にしてしまうと、 いずれは自分も!という気がしてきて危ない。 ポップコーンの手口も年々巧妙化している。 私が子供の頃には、ポップコーンは、塩味一択。 大変潔いものだった。 しかし近年は、甘いキャラメル味のポップコーンなども登場し、 うまい話に飛びついた人々が、行列を

たまご寿司からの解放

暖かくなれば、そろそろミモザの花の季節になる。 アカシアともいうらしい。 緑色の茎から、小さな黄色い花が綿のように咲き、 春のやわらかな暖かさを、目から感じる、可愛らしい花だ。 私はこのミモザを道で見かけると、うっとり、思わず目を細めてしまう。 このミモザ、オムレツの色にそっくりなのだ。 オムレツ色の花は、私に否応なく卵料理を連想させる。 あー、タマゴサンド食べたい。じゃがいも入れたオムレツもいいな。 だし巻き卵で日本酒で一杯もオツだし、 まだ小寒いから、かきたまうどん

転校生、恵方巻

 20数年ほど前のこと。  年度末が近いにもかかわらず、先生に連れられてやってきた転校生は、挨拶もそこそこに 「ワテ、恵方巻いうねん。仲良うしてや!」  と、一番前の真ん中の席に、ドン!とカバンを置いた。  見た目も派手で、デンブのピンク色が、他の生徒にはない輝きを放っている。その美味しそうな海苔の香りが、教室中に漂い、クラスに新しい風が吹いたことを感じさせた。  そんな恵方巻を、後ろの席から睨みつける炒り豆と落花生。  その心中は穏やかではない。最初に因縁をつけたのは