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花丸恵の漫筆日和

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思いつくままに書き留めたジャンルなしの日記やエッセイです。
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#日記

自分に厳しい猫はいるのか

 2022年2月22日  こんなにも「2」が並んだ日付を見るのは、生まれて初めてのことだった。それもそのはず、「2」が6つも並んだのは、1222年2月22日以来、800年ぶりのことだそうだ。  日本では、2月22日は猫の日と定められている。特に今年は「スーパー猫の日」と言われ、猫にまつわる話題が尽きない一日であった。  そんな、スーパー猫の日に、夫は猫のように四つん這いになって背中を伸ばしていた。 「これから仕事だっていうのに、随分と入念なストレッチだね」  私が言うと、

断水の思い

 水道が止まる。  あと、5分で水道が止まる。  もうカウントダウンは始まっているのだ。  飲み水は確保したか?トイレ用の水は大丈夫か?  よし、大丈夫だ。  あ、最後のトイレに行っておこう。  以前は木造2階建てのアパートに暮らしていたので、断水の経験がなかった。しかし、貯水タンクがある現在の住まいでは、半年か年に1度くらいの割合で、貯水タンクの清掃のため、断水となる。  管理会社から初めて【断水のお知らせ】という紙が投函されていた時には 「ふぇっ?!」  と声を上げて

魂カムバック

 たましいの、抜けたひとのように、足音も無く玄関から出て行きます。  これは、太宰治の小説「おさん」の冒頭の一文である。  私はこの書き出しが好きで、これを読んだだけで、ブルブルっと痺れてしまうのだ。そして満面の笑みでウインクをし、親指を立て、 「太宰先生!今日も絶好調ですね!」  とアメリカンな感じで声をかけたくなってしまう。太宰にとっては、大変迷惑な読者だ。  しかし、魂が抜けるとまではいかなくても、何だか疲れ果ててしまい、それこそ魂が抜けたようにうなだれてしまうこと

午後5時55分55秒

 今、ふと電波時計を見たら、  午後5時55分55秒  だった。 「おーほっほ、見てみて、今、午後5時55分55秒だったよ!」  私は思わず、25年近い付き合いのぬいぐるみ、スヌーピーに話しかけてしまった。一人、部屋で盛り上がる四十路女。不気味である。  しかし、こういうことで喜べるようになれたこと自体が、私の中で成長とも言えるのかもしれない。  以前は、「おっ!」と思っても、こんなことで喜ぶなんて、お気楽な人間だな、と自分を恥じた気がする。せっかく「おっ!」と喜んだの

春に戸惑う、今日此頃に

冬から春になり、葉桜になっていくこの頃、 脇を見れば、雑草が芽吹き、 花壇に、色とりどりのきれいな花が咲いていたりする。 鼻をくすぐる春の空気というのは、まったり、とろとろと、体を包み、 その重みで起き上がれないような、妙に気だるいところがある。 今日は夕方から雨になる、という予報のある昼間などは、 その気だるさが一層、体にまとわりついて離れない。 ぼんやりと活字を追うも、同じところを 行ったり来たりしてしまい、なかなか捗らない。 頭の中に、何か薄靄がかかったような、 この

これは活気か喧騒か

 疫病が流行する前から、私はあまり外出をしないタイプだった。  昨年最初に緊急事態宣言が出されたとき、自分の行動をどれくらい制限するべきか考えていたのだが、これまでと特に意識を変える必要がないことに思い至り、若干衝撃を受けた。  私には自粛の才能がある。いや、自粛の天才かもしれない。  そんな戯れ言を思いながら、疫病流行の重苦しい空気の中、引きこもることに苦痛を感じない自分に、何となく申し訳なさも感じていた。  幼少期の頃、あまりに私が家に居たがるので、母から、 「外で遊