見出し画像

童話小説「ガルフの金魚日記50」

目のまえに、あおい空とキラキラかがやく海がひろがっています。
まったりとした海です。
さざ波の音さえきこえないしずかな海です。
ふしぎなくらいシーンとしています。

「ぷくっ!」
 海の上をなにかが飛びました。
あれは、トビウオですね。どうして水の中にいるおさかなが、空を飛べるのでしょうか。
ぷくもチャレンジしてみましょう。
尾ひれフリフリして、水面まできました。息をすって、尾ひれと胸びれにちからをこめて、グイっと水をかきました。

水面から頭がでただけです。これでは、空を飛ぶどころではありません。
こんどは、金魚鉢のそこから、一気に水面をめざしました。
ガラスの底をおもいきりけり、胸びれと尾ひれを左右に、グイグイうごかしました。
水面から頭がでて、つぎに目がでました。でもこれまでです。これでせいいっぱいです。

ぜーぜー、息をしました。
やっぱり、金魚は空を飛べないのです。
「トビウオさん。あなたはほんとうに、すごいです」
 ぷくぷく、はくしゅをしました。

ところで、夏くんのげんきな声も、秋ちゃんのかわいい声も、さきほどからきこえてきません。
ふたりはどこへ行ったのでしょう。あそびに行ったのでしょうか。

「春さん、はるさぁーん」
 ぷくぷくよんでみました。
 でも、へんじはありません。
 もうすぐ夕方になります。いつもなら冬さんが、自転車にのってかえってきます。きょうは、いまかいまかとまちどおしいです。はやくかえってこないかなぁ。ぷくぅ。

とうとう夜になりました。だれの顔も声もきこえません。
「みんなどうしたんだろう。ぷくは、さみしいです。だれでもいいからぷくに顔を見せてください」

ぷくっと目がさめました。
しらないうちに寝ていたようです。
でも、まっくらです。
いつもなら外灯の明かりがあります。きょうは消えたままです。
まだ目があいていないのかな、ぷく。
胸びれで、目をこすりました。
でも、まっくらです。
もういちど、こんどはゴシゴシこすりました。

それでもまっくらなままです。
目があいているはずなのに、まっくらということは、これはゆめだ。そうだ、ゆめだ。
ぷくは、起きてないかいない。ねているんだ!
そうにちがいない、とおもいました。

ですから、もういちど目をつむり、ねることにしました。
ぷくー、ぷくー。

胸がくるしいです。なんだこれは、おしつぶされそうなほどです。
ガバっ。
めがさめました。でも、からだが、胸びれが、尾ひれがぜんぜんうごきません。
どうなってるんだ!
たすけてぇー、とさけぼうにも声がでません。

目を大きくあけましたが、まっくらでなにもみえません。
どうしよう。ぶくぶく。
ひょっ、ひょっとして、これが、かなしばり?

なんでもいいから、だれかたすけてぇー。ぶくぶく。
そのまま、暗いやみの中におちていきました。
ぷくは、そのまま意識をなくしました。
ぷくー…、ぷくー…。

     いつかあえる日まで

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?