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童話小説「ガルフの金魚日記14」

 冬さんがいいました。
「ぼくはきみのことを、一生懸命にせわをしたよ」

「そうでしたね。朝、起きて、おはよう、ガルフ。行ってきますって、学校に行ったんですよね。ぷく、そんなことわからないから、心配で。でも、帰ってくると、ただいまぁ、ガルフって。いつも話しかけてくれました。あえるとうれしくて…、ぷくっと、安心しました」ぷくぷく。

「そうだったよな、あのころがなつかしいなぁ」

「ぷく。そういえばいつからか、ぷくは、冬さんとおばあさんの言葉がわかるようになりました。ぷくぷく」
「四季ばあと話ししてたのか。それ、しらなかったなぁ」

「話をするようになったのは、冬さんが最初です。でも、ひとのことばがなんとなくわかるようになったのは、四季おばあさんが最初だったかもしれません」

「ぼくはきみのせわをしながら、こうして話をするのが楽しみだった」
「ぷくもそうです。冬さんが学校から帰ってくるのが待ち遠しくて、たのしみでした。でも、冬さんが結婚してから、少なくなりました。だけど、いまでは、秋ちゃんや夏くんとお話ししています」
ぷくぷくぷく。

 そういえば、冬さんとこんなに長くお話ししたのは、ひさしぶりです。
冬さんとぷくは、しばらくむかしのことをなつかしんでいました。
そして、冬さんが話題をかえました。

「お腹をこわしたんだって。これは水草だけど、お腹にきく薬草だから、少しずつかじるといいよ。これからはいくらおいしいからといっても、食べすぎてはダメだぞ」

 冬さんは、すきとおるような綺麗(きれい)なみどり色の水草を、金魚鉢に植えてくれました。少しかじるとちょっとにがかったけど、お腹にいいような気がします。
 すると涙がじわっとわいてきて、冬さんの顔がにじみました。

「冬さん、ありがとうございます。ぷくぷく」
 冬さんはにっこり笑うと、ぷくの前からさって行きました。
 どうやらぷくは、このままここにいてもいいようです。
 ぷっくぷっく。
 
それから薬草を、もうひと口かじりました。
 やっぱりにがいです。ふゆさんとおはなししていると、おなかの痛(いた)いのを忘(わす)れてしまいました。だから、ペッて、はき出そうかと思いました。

でも、せっかく冬さんがぷくのことを思って、植えてくれた薬草です。
がまんして、もぐもぐ、ゴックンと、のみこみました。

     明日の金魚日記へつづく

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