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イノベーションとは何か?

お裾分けシリーズ2020の最終回、第14回(8月17日)のゲストは赤池学さん。ユニバーサルデザイン総合研究所代表であり、科学ジャーナリストでもある赤池さん。講義のテーマは「イノベーションとは何か?」です。最終回にふさわしい、ど真ん中のテーマですね。

赤池さんの元々のご専門は生物学と昆虫発生学。読売新聞社を経て、1996年にユニバーサルデザイン総合研究所を設立されました。

バリアフリーからユニバーサルデザインへ

赤池さんの原点は、ご家族にあります。31歳でお父さまが倒れて障がい者になり、お子さんが2歳と6歳のときに奥さま※が半年間の闘病の末、癌で亡くなります。お父さまや奥さまの闘病経験から、バリアフリーデザインについて考え始めたそうです。

そんなとき、出会ったのがパトリシア・ムーア。彼女にバリアフリーデザインの先にユニバーサルデザインという概念があることを聞き、学び始めました。原点からユニバーサルデザインとの関わりについては、下記に赤池さん自身の言葉でまとめられています。ぜひご覧いただき、また戻ってきてください。笑

そもそもユニバーサルデザインとは、なんでしょうか?Wikipediaの説明を見てみましょう。

ユニバーサルデザイン(Universal Design/UD)とは、文化・言語・国籍や年齢・性別・能力などの違いにかかわらず、出来るだけ多くの人が利用できることを目指した建築(設備)・製品・情報などの設計(デザイン)のことであり、またそれを実現するためのプロセス(過程)である。

記事の中で赤池さんは、ユニバーサルデザインの根幹について説明しています。

ユニバーサルデザインの根幹は「デザイン・フォー・オール」という概念ですが、オールをいかに捉えるかによって多様な可能性を秘めています。つまり商品を使うユーザーだけでなく、その商品を生み出すことで世の中の役にも立つことが大事。多様なステークホルダーに対してメリットを提供することで、より深いユニバーサルデザインとなり得るのです。

ユニバーサルデザインと感性

赤池さんはロジックではなく、感性で鋭く人の気持ちや時代の流れを捉えているように感じます。人ともの、人と自然、人と人の関係性を丁寧に紡ぎながら、ストーリーを組み立てていく。

例えば、滋賀県にある老舗の和菓子屋「たねや」さん。ユニバーサルデザインの店舗にしたいとリクエストした「たねや」さんに赤池さんが提案したのは、コテコテに日本、地域、和のカルチャーを意識したデザイン。石で段差もあり、照明も蝋燭や行灯を使って暗めに、移動動線も複雑になるけど坪庭のような空間設計でした。

え、スロープをつけるとか、明るくするとかしないの?それってユニバーサルデザインなの?と思いますよね?

実は、ユニバーサルデザインを提供するのは店員。車椅子のお客さまへの対応方法や声がけの仕方などを接客マニュアルにまとめました。もし自分がお客だったら、誰にも声をかけらずにひとりで機能的なスロープを上がる方がよいのか、不便はあるけれどもスタッフが寄り添ってくれてユニークな空間を味わえる方がよいのか。ほとんどの人は後者なのではないでしょうか。結果、顧客満足度も高く、売上もアップしたそうです。

セオリーに囚われず、機能にフォーカスするのではなく、感性を研ぎ澄ませながら人とそれを取り巻く環境にフォーカスする。そのあり方がイノベーションの源泉であり、イノベーティブなユニバーサルデザインを生み出しているのです。

このnoteは、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論のお裾分けシリーズです。

*奥さまという表現は好きではないけれど、他の表現がないのでしかたなく。パートナーと書くとわかりづらいので・・・。

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