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Sony Imaging Galleryでの個展について。

 タイトルの通り、2020年11月20日-12月3日に銀座プレイスのSony Imaging Galleryにて開催した個展についての記事である。
(今年1回目の個展の様子はこちら)
今回は横120cm × 縦84cmの作品を12点出展した。

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 同シリーズで阪急MEN’s TOKYO内にあるtagboat galleryで個展を開催した6月よりも、格段に新型コロナの感染者数が増えてしまった11月。
Sony Imaging Galleryの皆様にご協力を得つつ、対策に一層注力しながらのオープンとなった。
(会場の床に1.5m間隔で貼られた白い靴型は、ソーシャルディスタンスを測る目印)

 6月の個展より照明を絞ったのだが、その結果作品の空の青がさらに濃く深くなり、よりタイムレスな空間になったと思う。
「宇宙に向かって窓が開いているみたい」と私では考えつかない感想を言ってくださった方がいて、その詩的な表現がとても嬉しかった。

 また風が上空で鳴っている音をギャラリー内に流すという試みを行ったのだが、「波が遠くで鳴っている」「高速道路沿い」「飛行機が上空を飛んでいる」「胎内音」などといった風以外のイメージを受け取る方もいて、音を用意した私自身も確かにそう言われるとそう聴こえてくる...という鑑賞者の感性を制作者であるところの私がオンタイムで逆に流し込まれる現象を体験した。

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 銀座という立地とSony Imaging Galleryというギャラリーの特性上、私や作品のことについて全く前情報のない方が沢山来てくださったことが新鮮で、そんな一期一会の方々と作品を前に長い立ち話をするのがとにかく刺激的だった。
(もちろん旧知の先輩、友達、後輩、仕事でお世話になった方、アーティストの人々は言わずもがな)

私が作品の解説をした後、丁寧に感想や自分の今までの体験を伝えてくれた人。
ネオンそのものの構造と何も描いていない看板自体に興味を持ってくれた人。
ご自身の好きなものや、今興味があることについて語ってくれた人。

あの空間で誰かと交わした細やかな、だけど何かの折に触れて不意に思い出すであろう沢山の言葉のやりとりがまた私の中に降り積もり、次作を制作する上での大きな糧になっていくと思う。
期間中、足を運んでいただいた皆様に心から感謝しております。

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 また今回の個展の為に手を尽くしていただいたSONYの永井さん、この展示をご自身のラジオでご紹介してくださったハービー・山口さん、前回の個展をnoteで記事にしてくださった楠見清さん、本展に素晴らしい解説文を寄稿していただいたThe Third Gallery Ayaの綾智佳さん、猛烈にお忙しい合間に対談収録のため駆けつけてくださったT3 Photo Festival Tokyo代表&ディレクターの速水惟広さん、本当に有難うございました。
皆様にご協力いただけたこと、とにかく嬉しく心強かったです。

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 最後に本展示に寄せていただいた綾さんの解説文と、個展会場で行った速水さんとの対談動画を置いて、11月20日-12月3日個展の報告を締めさせていただきます。

"SIGNS FOR [          ]" によせて。

 木村華子の作品を初めて見たのは「御苗場」という写真コンペティションの会場だったと思う。
鮮やかな色が特徴のスナップショットだった。
ちょうど大学を卒業し、カメラスタジオに入社し、コマーシャルの仕事をしながらのファインアートでの作品制作も始めたタイミングだったようだ。

コマーシャルの仕事とファインアート作品の両立は意外と難しい。同じ写真でも最終的なゴールの向きが全く逆だからだ。
あくまでもクライアントの意向をヴィジュアル化するコマーシャルと、作家個人の思いを写真のするのは、撮影するという行為だけが一緒で、重きをおくポイントが全く違うのだ。
木村はそのような状況を楽しみながら制作しているようだ。

 アジアのアーティストを対象としたイベント「Unknown Asia 2018」でグランプリを取った"SIGN FOR [          ]"では、何も書かれていないビルボードの堂々とした存在感を捉え、それを照らす青いネオン管を画面に加えている。
「【意味があること/ないこと】の間を何も描かれていない看板を通して見つめること、それ自体の存続は、意味が有る無しには左右されない。」という哲学的なコンセプトだ。
加えられるネオンの青は、その色の光が精神の高ぶりを抑える作用があるところからきているそうだ。
そういった説明を聞かなくとも、トマソン的*1な意味のない空虚感と不思議な明るさが印象的で、強く頭に作品イメージが残り、私には今の時代のポートレイトのように見えた。
また、それは「今のわたしのポートレイト」とも見える。
トマソンと呼ぶにはあまりにクールでシリアスなそのポートレイトは、青いライトに照らし出されて、つかみどころがない。
つかもうとするとスルリと抜けていくようなこのイメージから、今後どう展開するのか楽しみだ。

綾 智佳(The Third Gallery Aya) 


注釈*1 トマソン
超芸術トマソン(ちょうげいじゅつトマソン)とは、赤瀬川原平らの発見による芸術上の概念。存在がまるで芸術のようでありながら、その役にたたなさ・非実用において芸術よりももっと芸術らしい物を「超芸術」と呼び、その中でも不動産に属するものをトマソンと呼ぶ。

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