デザインフィーがあまりにも安い?対価と価値について考えてみた

私は主にインテリアデザイナーさんやクリエイターさんのマネジメントやコンサルティングをしています。それぞれのデザイナーさんのお悩みを解決すべく、パートナーとして日々取り組んでいます。各社様々ですが、多くのお悩みはヒト・モノ・カネに分類されます。今日はカネについてお話しします。

インテリアデザイナーのデザインフィー、つまり設計料は、インテリアデザイナー側からすればとっても安い。

例えば、一件の物件を設計するには、多くのデザイナーは、クライアントからどんなことをしたいかヒアリングをして、それを多角的に読み解き、ああでもないこうでもない考えて、社内で議論したりして、本や画像やらからデザインソースをひねり出し、優れた事務所ではそれを数回昇華させたりしてクライアントに提示。いいね!とかダメダメとかまた議論を重ねて、そのデザインの根幹のようなものから、基本構想(コンセプト)を作りクライアントに提示して承認を得る。基本構想には平面図とパース、またはスケッチ、事務所によっては三面図が含まれてたりします。ここでまだ全体の約20%の業務量です。これをもとに基本設計、実施設計、内装監理室応対、見積り取得、入札、VE、施工打合せ、施工監理‥と経て、ようやく竣工・引き渡しとなるわけです。その間に何度も打合せをして、社内外で図面を描いて、描いても描いても追いつかず、やれ図面が来ないとあちら(内監)こちら(施工業者)から突き上げられ、遂にはクライアントからクレームが来て、、といった具合に、少しヒト問題も入っていますし、ざっくりしてますが、みんな一生懸命やってるけどとにかく結構大変な想いをして空間誕生を迎えるわけです。

その作業量に対して、多くの日本の設計事務所の設計料はあまりにも安い。私が設計会社のビジネスマネージャーとして勤務していた時も設計料は悩みでした。クリエーションに対する尊敬が低いのか、商業のデザインはクリエーションにすら入らないのかわかりませんが、とても安いと感じたのです。

一方、設計事務所で勤務する前は店舗を作るクライアント側だった私。その時設計料が安いとはあまり思っていませんでした。設計者さんの作業量も、大変さも知っていたつもりですが、ある協会の単価をベースにしていましたし、寧ろ妥当位に思っていました。

クライアントにとっては、大切な自分のお金を使うのだから少しでも安いほうがいいし、高い設計料を払って自分のビジネスを逼迫させては本末転倒。お金の対価分デザイナーさんにはきっちり働いて欲しい。呼んだらすぐ来て欲しいし、きちんと対応をして欲しい。眠そうな顔で打合せに来ることも、覇気のないアシスタントさんの様子も納得行かないし、「うちの物件大丈夫かな?」と心配になってしまう。「ちゃんとお金払ってるのに、見合わない!」となったり。。

設計料が安いと思い、少しでも上げたいデザイナーと、設計料は見合った額を払いたいと思うクライアント。クライアントと業務請負者という立場の違いが生み出す全くもって相反する考えです。そして、どちらの考えもおかしくはない。

では設計料をあげたいデザイナーはどうしたらいいのか?

まずは、私は設計料の見直しを提案しています。設計料は多くのデザイナー経営者が、なんとなく昔クライアントに設定された金額とかをベースに、なんとなく金額をあげることなく(勇気がなくて)数年、数十年と過ごしているケースが多いです。根拠のない設計料で、市場価格に合っているのかも自信がない。今まで私がお仕事した中で言うと、みなさん往往にして金額を低く設定されています。まずは一般的な金額と比べて、どの辺りに自分がいるか客観的に確認することが大切です。そこから、自分もクライアントも納得性が高い設計料を設計します。

また大前提として、クライアントはデザイン会社の労働量に対して対価を払うのではなく、提供した(してくれるであろう)価値に対して対価を払うことを、デザイナー経営者は頭に入れなくてはなりません。厳しく聞こえるかもしれませんが、どれだけ寝ずに作業をしても、スタッフの作業量が膨大になってしまっても、クライアントにたくさん働いたから設計料あげてくださいとは言えません。そもそも作業量を減らす工夫も必要です。その上で「自分達が提供する業務の価値が高いこと」を出来る限りを尽くして世の中に証明し「希少価値のあるデザイナーであること」を認知させる。そこには優れたクリエーションを作り出す才能や努力だけでなく、会社の哲学、素晴らしい人など抗えない魅力が必要です。それをベースに自分たちの価値に見合った設計料を再設計しクライアントに提示し交渉して行く。

このブランディングとクリエーションの両軸が本当に必要で、ここをしっかり作って行くことがデザインフィーをあげるだけでなくデザイン会社のキモなのですが、日々の業務の忙しさからなかなか取り組むことが出来ないのが多くの会社の実態のようです。私は今日もそんな方を叱咤激励してサポートして行きたいと思います。

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