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専業主婦歴20年 浦島ハナコの病院受付奮闘記#29 <ブラック企業の定義>

 貴方の職場はホワイトですか? おめでとうございます。そのままずっと腰を据えましょう。
 まさかのブラック……? 残念ですがお仲間ですね。
 就職活動はしんどい、にもかかわらず採用された職場がブラック企業だったら?
 悩んでいる暇はない。さっさと転職しましょう。時間は無限ではないのだから。
 私の反省を込めて贈りたい。あなたのこれからの選択の助けになりますように……。

<ブラック企業の定義>
 
病院勤務経験がなかった私は、勤めてからしばらくの間は何が良くて何がいけないのか判断が出来ずにいたが、少し勉強するようになるとクリニックの違反が色々見えてくることが多くなった。

 例えば、患者への注射の準備は、看護師の資格がある人のみ行えるという決まりがあるのだが、資格もない学生が注射の中身を入れている。

 レントゲンを撮れるのは、ドクターか放射線技師だけが扱えるはずなのだが、資格のない学生や看護師さんが時々やらされていた。
 本人たちも違法だとわかっているが、雇われているので断れないと言っている。

 処方箋は、受付や看護師が電子カルテに中身を入れてオーダーを出すのだが、最終チェックはドクターがする事になっていた。
 しかし、土日は代診のドクターなのでチェックは出来ないという理由で、看護師や学生が最終チェックをして処方箋を出していた。

 看護師さんたちは処方箋の取り扱いに関して、「これくらいの事は病院なら当たり前のようにやっている」と言っていたが、勤めているうちにだんだん感覚が麻痺してくるのではないかと思う。

 不当に料金を多くとっている事への不信感も募って来た。

 仕事中にケガをした場合、労働災害扱いとなり本人負担はなく、労働基準局に請求して治療費をもらう。

 だが、患者さんの負担がないのをいい事に理学療法士の施術料を2倍にして請求していた。

 交通事故の患者さんも本人負担がないので、理学療法士の施術料を2倍にして計算し、そこから更に上乗せして全体の治療費を2.5倍にして保険会社に請求していた。
 
 電気治療の患者さんには、電気治療代ではなく、マッサージ代(3倍ほど高い)を二単位したことにして、更に2.5倍の治療費を請求していた。
 
 つまり、交通事故の患者さんがリハビリをすると、通常の6倍の治療費がクリニックに入っていたのだ。

 交通事故は、場合によって違うことがあるのだが、ほとんど自賠責保険扱いになり、病院側が自由に値段を決められる。

 良心的な値段をつける病院も多い中、アコガレクリニックはボッタクリもいいところだ。

 ある保険会社は、治療途中でうちのクリニックとは契約を打ち切ったのだが、院長はその保険会社の事をケチだと言っていた。

 私は密かにその保険会社の言い分が正しいと思っていた。

 スタッフが事故をおこして治療することになったことがあるのだが、治療をしない日も治療をしたことにして請求していた。(これは院長の指示ではなくセッカチさんが勝手にクリニックの経営のためにしていた事だと後でわかったが)
 「通院したことにすればスタッフも一日分のお金がもらえるし、クリニックも治療代入るからいいのよ」
 臆することなくそういうセッカチさん。

 そこまでして儲けるという考えに、他の受付スタッフは「辞めて欲しい」と言いながらも、改善するには至らなかった。

 もっと驚く事は、理学療法士の資格もないただのトレーナーに、理学療法士と並んで治療をさせ、マサージ代として2倍の料金を患者さんからいただいていたことだ。
 これは完全にアウトのはず。

 因みに、他院を色々知っているスタッフに聞いたのだが、放射線技師の資格を持っていないスタッフにレントゲンを撮らせたり、理学療法の料金をごまかしたりする病院は聞いたことがないそうだ。


 こうしてクリニックは相当利益をあげていたのだが、私腹を肥やしているのは院長ばかりで、スタッフへ還元される事はなかった。 

 院長とセッカチさんは親族で一人100万円の豪華旅行をした。
 豪邸も建てた。
 高級車も買って出勤していた。
 不動産投資もたくさんしているらしい。
 スタッフ間でまことしやかに噂されていた。

 「経営者は院長なのだから、贅沢しても文句は言えないが、スタッフ皆で頑張っているという気持ちが合ったら、私たちにも少しくらい還元してくれるよね」
 「働く気なくなるよ~」
 陰では口々に文句を言っていたのだが、院長とセッカチさんの耳に届くことはなかった。
 

 ベテラン社員の給料は新人社員とさほど変わらない。

 仕事の量は増える一方なのに対し、働きに見合う給料ではなかった。

 有給制度はあるがほとんど有給は取れない。

 有給を申請すると院長から嫌な顔をされる。と言っているスタッフもいた。

 サービス残業も多い。

 福利厚生はあったもんじゃない。

 そんな院長に嫌気がさして、他部署のスタッフが次々とクリニックを去っていった。

スポーツに特化した病院で働きたい。
他の仕事をしたい。
留学する。
出産のため。
退職理由としての建前だが、本音は院長のこうした態度と待遇に対して不満を持ち退職している。

私は本人たちからこっそり本音を聞いていた。

院長は、スタッフを大切に思っていると口では言っていたが、どう贔屓目に見ても大切にされているという実感は、勤めている間中全く持てなかった。



















 












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