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〔執筆奮闘記16〕餅は餅屋 患者さんから学ぶ
◆情報の伝え方
執筆の目的は、読者に「役立つ情報」を伝えることでしょう。
「役立つ情報」とは、
①すぐに実行できる
②継続できる
③具体的な情報
と前回考察しました。
その情報の有効な伝え方として、
①統計を利用する
②感情に訴える
③切り口を工夫する
などを検討してきました。
それ以前の問題として、そんなお得情報はどこに転がっているのでしょうか。
「お得情報の入手法」という執筆の核心について考えてみました。
◆情報源は?
アトピーの患者さんに指導をしていて、ふと気づいたことがあります。
私自身、自分の全身に軟膏をぬったことがない。
痒くて眠れなかったこともない。
アトピーでいじめられたこともない。
それなのに、患者さんに、
「皮膚がしっとりするまでぬってください」
「痒くなったら冷やすと楽になりますよ」
「この薬を飲めば、痒みが止まります」
と、自分が経験済みのようにしゃべっています。
アトピー歴10年以上の患者さんは、
そんな私を見透かしているのではと感じます。
「あなた、アトピーで苦しんだことないでしょ」
「本の受け売りか、薬メーカーの回し者でしょ」
アトピーで10年20年苦しんできた患者さんは、アトピーの大先輩であり、
私は新参者ではないかと気づきました。
『餅は餅屋』を辞書で調べると、
「餅をつくのは本職の餅屋が一番うまい。素人は及ばない。」とあります。
患者さんは、365日、まさに治療現場の最前線で、
自分のアトピーと奮闘している。
私はたまに患者さんと話をする門外漢ではないか。
餅は餅屋
アトピーのことは患者さんに聞こうと気づきました。
◆患者さんが教科書
「軟膏を塗るときに、何か工夫をしておられますか」
「痒いときには、何か工夫をしておられますか」
「どういう時に皮膚炎がひどくなると感じますか」
医師:教える人
患者:教えを受ける人
この構図が逆転しました。
最初は何か裏があるのではと警戒していた患者さんも、
心を許して少しずつ話をしてくれるようになりました。
・軟膏は洗面所と枕元に分けて置いて、
それぞれ風呂上がりと、朝起きて着がえる時に塗っている。
・子どもが朝寝起きの時、着がえさせながら軟膏をぬってやると、
塗る刺激で目を覚ます。一石二鳥。
・入浴後、浴室で体をふく前に軟膏を塗ると皮膚がしっとりする。
・1階に室内犬がいる。2階で寝るようにしたらアトピーが良くなった。
・カスピ海ヨーグルトでアトピーが良くなった。
・岩盤浴でアトピーが良くなった。
・トマトを食べると痒みが収まる。
・氷をなめると痒みが収まる。
・チューブ入りの軟膏は、冬は硬くなって使いにくい。
容器入りの方が使いやすい。
・ラミネートチューブの薬は、残量が分かりにくい。
・オムツはパンパースが一番いい。
お得情報や裏ワザがザクザク出てきました。
臨床研究になりそうな題材もあります。
【臨床研究の題材】(漏らさないでください)
肘の内側と膝の裏に皮膚炎がある人は、汗で悪化する「夏型アトピー」
上記の部位に皮膚炎のない人は、乾燥で悪化する「冬型アトピー」
冬型アトピーは、岩盤浴などで汗をかく習慣をつければ軽快する。
過去の患者さんからの情報によって、現在の教科書ができています。
目の前の患者さんは、未来の教科書ではないでしょうか。
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