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「メタボ」と「やせ」 どっちが怖い?

◆「デブ」「ブタ」論争

20年ほど前、「メタボリックシンドローム」という用語が生まれました。
内臓脂肪による肥満があり、糖尿病や高血圧、高脂血症を引き起こす状態をいいます。
それがいつしか、肥満の人を「メタボ」と呼ぶようになりました。

その昔、太っている人を「デブ」とか「ブタ」と呼んでいました。
トーク番組で、面白い論争がありました。

「デブとブタ、どっちが失礼か?」
という論争です。
基本、どっちも失礼なのですが・・・。

関西(主に大阪)では、「デブ」と言われた方が失礼に感じるそうです。
「ブタ」は愛嬌を感じますが、「デブ」と言われると「ケンカを売っているのか」と腹が立つそうです。

一方、関東(主に東京)では、評価が異なります。
「デブは我慢できる。太っているのだから。ブタは許せない。私は人間だ!」
「ブタ」と動物呼ばわりされる方が腹が立つそうです。

皆さんの地域では、どうでしょうか。

◆「メタボ」「やせ」論争

では、「メタボ」と「やせ」では、どちらが不健康でしょうか。
誤解を恐れずに言えば、圧倒的に「やせ」が不健康です。

厳密にいえば、「やせ」ではなく「サルコペニア」が不健康なのです。
「サルコペニア」とは、ギリシャ語の「サルクス(筋肉)」と「ぺニア(減少)」を組み合わせた造語であり、筋肉量や筋力の低下を意味しています。

高齢者がサルコペニアになると、
生活習慣病や認知症になりやすくなります。
高齢者に限らず、デスクワークで座りっぱなしの仕事の人は、
サルコペニアの予備軍でしょう。

また、やせたい女性や、メタボを気にする中高年男性で、
太るのを気にして食事制限をする人が増えています。
ご飯や肉を減らして、野菜でお腹をいっぱいにするという
「野菜中心の食生活」に落とし穴があります。
糖質やたんぱく質が不足すると、
骨と筋肉が減ってしまうという結果になりかねません。


「野菜を食べましょう」というのは、
野菜不足や糖質・脂質を摂りすぎている人に対する警告の意味であって、
糖質・脂質を必要以上に減らしましょうという意味ではありません。

「糖質制限」「糖質ダイエット」という言葉がブームになりましたが、
サルコペニアを招く危険性が高いと言えましょう。
右に振れた振り子を戻そうとすると、逆に左に振れてしまいます。
なかなか振り子は真ん中に止まってくれません。

◆サルコペニア肥満

特にたんぱく質が不足して筋肉が減少すると、
サルコペニアと肥満が合併した「サルコペニア肥満」になってしまいます。

サルコペニア肥満とは、筋肉が脂肪に置き換わり、見た目は普通でも、
中身の多くは脂肪であり、筋肉が少ない状態をいいます。

サルコペニア肥満で怖いのは、
生活習慣病のリスクが一気に高まってしまうことです。

高血圧のリスクは男性1.7倍、女性2.3倍になりますし、
糖尿病のリスクは女性で19倍になります。

寝たきりになるリスクは男性で3倍、女性で6倍になります。
「肥満」よりも「やせ(筋肉減少)」がいかに恐ろしいかが分かります。

対策は、ご飯、魚、肉、卵、野菜をしっかり食べて、
筋トレをすることでしょう。

参考文献
1)荒井秀典:『寝たきりにならなずにすむ筋肉の鍛え方』, 河出書房新社,2016

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