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#2 スタートラインに立つ、養親資格の申請

養子縁組の難しさ

年が明け、2020年の1月に2回目の説明会に臨みました。この日は、養子縁組ならではの心理面・教育面の難しさについての説明がメインでした。

初回の説明会では、統計的に希望すれば誰でも養子を迎えられるわけでないこと、2回目の説明会では、養育していくうえでの難しさに焦点をあてて、長い道のりが決して平坦ではないという厳しい現実を目の前に突きつけられます。

説明会で流されたルポタージュには、さまざまな元・養子たちが登場して、幼少時代を振り返って思うところを語ります。出身国も年齢もいろいろで、養子縁組のストーリーと言ってもケースバイケース。例えば、フランス国内で生まれたばかりで養子に出された人、エチオピアの孤児院で7歳まで育ち、その後フランスに養子になった人。実親から虐待も経験したネパールから5歳で来た人。コソボの紛争で親を亡くし、生まれてすぐにフランスに来た人。韓国から実兄とともに1歳で来た人。

養親に引き取られて幸せだと語る人がいる一方で、養親とうまく関係を作れなかった人や、成人してからも(自分がどこから来たのかわからないがゆえに)自分への自信がない人、他人との関係構築に難しさを感じると語る人もいます。元・養子たちの声を聞くにつれ、自分とあまりに異なるバックグラウンドであることに不安を感じました。

私自身は、家族とも仲が良く、自信がなくなることもあるけれど、人並みの自己肯定感を持ち合わせています。こどもの時に対人関係で悩んだこともあったけれど、今は良き友人にも恵まれています。全て私が当たり前に手にしてきたことです。

極端な話、実の親子でもいい親子関係を築けるかはやってみないとわかりません。それでも、自分と違う種類の悩みやトラウマを抱えたこどもに、自分はどれだけ上手く寄り添えるか、自己肯定感を持ってもらえるようにサポートできるのか、この説明会の後にも考えさせられるテーマとなりました。

この日もたくさんの情報に触れてすっかりくたくた。説明会では、あえてうまくいかなかったケースや養育の難しさを伝えることで、養親希望者をふるいにかけているように感じました。この説明会を終えて養親の資格を希望する人は3分の1ほどだそうです。

ほどなくして、フランスはコロナ第一波で最初のロックダウン。3月中旬にバタバタと始まり、仕事も全てリモートに。レストランなどは閉まり、外出制限がされる中、私たちにとっては養子縁組についてじっくりと考える時間になりました。

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外出制限で人もまばらなパリ市内

養親資格の申請

2回の説明会を経て、3ヶ月ほど熟考期間を置き、ロックダウンが終わった5月に養親になるための書類を出すことにしました。

結婚歴、こどもの有無(実子や連れ子など)、世帯収入、養子を希望する動機を記入していきます。また、受け入れ可能な養子の年齢、健康状態、エスニシティ(単純に言えば肌の色)などについての条件を自分たちで話し合って決めます。書類申請の段階では、その時点での条件を書き込み、審査期間にソーシャルワーカーと話し合い、理解を深めながら、最終的に自分たちが無理なく受け入れられる養子のプロフィールを設定します。

この点はフランスと日本で事情が異なるように感じました。日本の特別養子縁組制度は、国内養子縁組を念頭においており、乳児かつ日本人以外を想定していないほか、体験談などを読む限り、健康状態は「どんなリスクも引き受ける」ことを誓約しなくてはいけない印象。

フランスの場合は、事前に自分たちが迎えられる養子の年齢や健康状態を設定します。年齢があがるにつれ、愛着障害や海外から来た場合は言葉のハードルなど考えることも多くなります。健康状態に関しては、ハンディキャップや持病に関してどこまで受け入れられるかということを確認されます。自分たちのキャパシティと照らし合わせて、引き受けられそうな年齢・健康状態をはっきりさせることは、その後の「失敗」リスクを減らすためと私は理解しました。

また、フランスの場合、養親となる方も養子となる方も肌の色はさまざま。より自分たちに近いエスニックを希望する場合もあれば、全く制限をつけない場合もあります。私たちは夫が白人、私はアジア人なので、全てOKということにしました。

書類申請の段階では、私たちは、全てのエスニシティを可とし、健康状態に特筆すべきことがない、3歳以下の乳幼児を希望としました。その後、それぞれの点についてどう考えが深まった・変わったのかは、また別のエントリーに譲りたいと思います。

この養親審査は、9ヶ月ほどで審査を終えるということになっているものの、実際はさらに時間がかかることが多く、私たちはコロナの影響もあり、14か月かかりました。その間に、ソーシャルワーカーとの面談、養子を受け入れた人たちの体験談、書籍・映画などを通じて理解を深め、最終的に私たちの「養子プロジェクト」を作っていきます。

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悩みを一旦横に置いて、イタリアへ

私たちの担当のソーシャルワーカーが決まり、最初の面談は夏休み後の9月に設定されました。コロナロックダウンの反動に加え、不妊治療の時は、数ヶ月先の旅行の予定も立てづらかったので、心置きなくバカンスに出られる嬉しさもひとしお。

日々の悩みも一旦忘れて、バカンスに出かけます。この年はコロナの合間の夏だったのでおとなりのイタリアへ。

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