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【映画】『朝が来る』

河瀬直美監督は、フランスでもよく上映される日本人監督のひとりで、最近になってストリーミングで2020年公開の『朝が来る』を観ました。

原作は、ベストセラー作家・辻村深月による同名の小説。特別養子縁組を題材に、14歳の幼さゆえに子どもを手放さざるを得なかった少女ひかりと、長い不妊治療の末に自分たちの子を授かることができず、特別養子縁組をして子どもを迎える佐都子という二人の女性と、その家族のドラマを描いたヒューマンミステリーだ。

 なぜ、河瀨直美監督は小説『朝が来る』に惚れ込み、映画を作ろうと思ったのか。そこには、河瀨監督自身が養女であり、「自殺も考えた」と語る壮絶な経験がある――。

文春オンライン

いつ知ったのかは忘れたけれど、河瀬監督自身が養子として育った生い立ちがあることは知っていたので非常に興味深く観ることができましたし、描写はとてもリアルで公平なものだったと思います。

以下、具体的なシーンを含めて感想を綴っているので、まっさらで観たい方は、ここでストップしてください。


序盤は、不妊治療に思い悩む夫婦が描き出されていて、自分が不妊治療をしていた時と重なる部分が多分にありました。特に、無精子症とわかり不妊の原因が夫側にあるとわかって、夫が「離婚もひとつの選択肢に」と語り、妻が「それはないかな」と語るシーンがあって、私自身、旦那に「離婚も考えてくれていい」と言ったことが思い出されました。

フランス人の夫も私がそう言ったことを覚えていて、映画の件のシーンを観ながら、「日本人てみんなこうなの?」と素直に驚いていました。フランス人がみんなそうとは言わないけれど、少なくとも彼は「こどもが欲しいから結婚する」のではなく、「パートナーと共に人生を共にしたい」から、結婚する、そして、その延長上にこどもがいるようなのです。確かに私も反対の立場だったら、同じこと言うかなぁと思ってからは、負い目を感じて離婚、なんてことは言わなくなりました。

フィクションなので多少は、実際には限りなく起こらないだろうな、と思うシーンはあるのだけれど、現在、不妊治療をしている夫婦で、なかなかパートナーと話し合うことができないと感じている人は、映画を呼び水にして話し合うきっかけにするのもおすすめです。

映画の中のワンシーンで、ひとつ強烈に違和感があったのは、養子の斡旋団体が、養子を希望する夫婦には、必ずどちらかは仕事を辞めてもらうことを求めると言っていたこと。フランスでの養子縁組制度を知っていると、「それ本当に必要かなぁ」と思わざるを得ません。個人的には、養子だからといって専業主婦(主夫)になっている人を知りませんし、どうしても必要とは思えませんでしたし、もちろん私自身もそういう予定はありません。

フランスの養子縁組制度でも、養子を迎えた後、数ヶ月はフルコミットすることが期待されますが、それは数ヶ月から長くても1年、要は産休・育休と同じレベルの話。もちろん臨機応変であるべきで、こどもの成長の中でサポートが必要だと感じれば、仕事を辞めるという選択もあって然るべきだとは思います。でもデフォルトで必要とは思えません。それは実の子でも養子でも、です。機会があれば、日本の養子縁組の斡旋団体はどこもそれを求めるのか、調べてみたいところです。

産みの母親の苦悩もとてもリアルだったし、養親になるとことを希望している立場としても、大事に思われていたけれど、やむに止まれぬ事情で養子に出すしかなかったというストーリーは救いのあるものでした。もちろん現実にはそんな優しい、救いのあるストーリーだけではないのかもしれないけれど。きっと私自身が残酷な生い立ちを受け入れる度量がないから、そういう救いのあるストーリーを期待してしまうのでしょう。

生みの親である少女が託した手紙を、毎年こどもの誕生日に読み聞かせていると語るシーンがあって、私たちが養子に恵まれたらば、そして可能ならば、産みの親さんに手紙を書いて欲しいと思いました。

全てのこどもに「生まれてきて良かったんだ」って思って欲しい。


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