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hanaike Books #4 『カフェ・ジェネレーションTOKYO』

花のある暮らしに添えていただきたい書籍を、リレー形式で紹介いただくhanaike Books
雑貨、古道具の店 sent.を営む秦 美咲さんにご紹介いただいたのは、建築家として建築設計や街のブランディングなどを行いながら、多方面で活動されている 谷田 恭平さん
暮らしを設計する谷田さんらしい、とあるカルチャーに関する選書です。

ボクは、本を読むときに“あとがき"から読む習慣があります。

“あとがき” には、著者の人生観や執筆を終えた達成感、本ができるまでの関係者とのエピソードなど、人間味を感じるからだと思います。

ご紹介する本は、故・永井宏さんの「カフェ・ジェネレーションTOKYO」です。1980年に創刊されたブルータスの初期から編集者として活躍し、その後、葉山に「暮らしそのものが、ひとつの表現になる」をコンセプトとしたサンライトギャラリーを主宰した方です。

「カフェ・ジェネレーションTOKYO」の発行年は、1999年。バブル崩壊を振り返ることができるほどは月日が経った時期であり、インターネットがまだ十分に家庭には普及していないけど、社会が大きく変わるのを予感させる時代です。急速に変化して行く中で、失われていく喫茶文化への寂しさを綴ったエッセイ集となっています。

八十年代の後半から九十年代にかけて、かつてあったような文化や意識や精神を緩やかに共有させてくれるような喫茶店が次々と消えていってしまった。ーーー個人的な柔らかな時間を持ち、それをじっくりと味わうということが必要のない時代だったのだ。(あとがきより一部抜粋)

著者は、バブル期の「喫茶店」と「そこに集う人」を観測することによって、精神的な豊かさと社会の有り様を見出そうとしたのだと思います。喫茶店はカフェという呼び名に変わり、街にはお茶をする場所はあるけれど、どこか忙しなく落ち着かない時間を過ごす感覚があり、著者の意図する柔らかな時間というのを実感することは難しいように感じます。

かつて僕らが憧れ通い続けた喫茶店は、僕らにとって文化の入り口だった。そこは閉ざされた場であったと同時に公共の場としても機能し、地域や、同好の士が社会と繋がるための点であり中心だった。(あとがきより一部抜粋)

読後、著者がギャラリーを主宰したのは、まだ名前はないけど、風通しがよく、個人の趣向や空想に満ち溢れた人間味ある、柔らかな時間が流れる「喫茶」でも「カフェ」でもない居場所を作りたかったのかな、と思いました。ボクも、この本をリレーのバトンのように受け取り、人間味ある居場所を探し、作り続けたいという意志を宿しました。

参考書籍『ロマンティックに生きようと決めた理由』

次回はこの方に。

次は世田谷ものづくり大学にてワークショップの講師も勤めるガーデンデザイナー、有限会社温室塚田有一さんにバトンを渡したいと思います。植物や庭造りだけでなく様々なカルチャーに造詣の深い塚田さんは、企画を面白がって、ボクが想像もしない方向に広がりや縁を紡いでくださると思いますので、楽しみにしています。

writer
谷田恭平(たにだ きょうへい)@littlesetouchi
株式会社umika:代表取締役・クリエイティブディレクター
瀬戸田映画祭:副代表
株式会社ブルースタジオ:設計職

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1988年生まれ、広島県尾道市の生口島(瀬戸田)出身。「ローカルを地域価値にする」をコンセプトに株式会社umikaを広島県福山市にて設立し、シェアキッチンとアトリエを併設した一棟まるごとリノベーションビル「Little Setouchi」を企画・運営。

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