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『untitled』について考える。

美術館巡りが好きです。

きれいなもの、わかりやすいテーマがあるもの、ユニークなもの…
よく耳にする芸術家の作品などもそのヒストリーに思いを馳せながら鑑賞するのも楽しいですよね。

それに比べてわかりにくいもの、『なんじゃこりゃ…!』と思うような現代アートって私にはちょっと難しいな…と、ちょっと敬遠していたのですが、あるきっかけで現代アートってすっごく楽しいじゃないか!もっと見たい!と思うようになりました。

そのきっかけとなった作品が、直島ベネッセアートミュージアムで出会った
ヤニス・クネリス 「無題」

ヤニス・クネリス 無題

第一印象は心の底からの『なんじゃこりゃ…!』でした…笑
1回目の訪問時は私にはちょっと難しいかも…。とそそくさと退散してしまったのですが、2回目の訪問時に対話型鑑賞プログラムに参加し見方が変わったのです。

対話型鑑賞プログラムとは1980年にMOMAで開発された鑑賞法で、みんなで作品を囲み、見て、考えて、伝えることでもっとアートに浸れる鑑賞のこと。日本では、美術館や博物館では静かな鑑賞が求められ、一つのアートを見るために長蛇の列を作り、順番が来たら後続の人たちに場所を譲る、みたいな暗黙のルールみたいなものがありますが、思い思いにアートについての意見を言い合って、一つのアートの見え方を変えてみよう!というものなのです。

この作品を遠くから見たり、近くから見たりして分かったことは、
・鉄のようなものに木片や割れた器、今にも割れそうな器、布、石ころ、食
 器などなどがぐるぐるまかれたパーツで構成されている。
・作品の上部と下部で一つ一つのぐるぐるとの間の隙間が違う。
 (上の重さで下は密着している。)
・なぜか一番上だけすごく余白がある。
などなど。
じっくり見ていると具体的な疑問が浮かんできますね…。

実はもともと月日が経って余白ができたら、その隙間にまた新しいパーツを重ねるという構想だったようですが、そろそろ新しいパーツを重ねる、というときにクネリスが逝去。ミュージアムの中ですでに作られていたパーツを重ねるべきか、否かという議論が重ねられ、結局重ねないことになったんだそう。

一通り話をして最後にキュレーターさんから聞かれた質問、

”この『untitled(無題)』に対して、
あなたがもしタイトルをつけるとしたら何と名付けますか?”

これが面白くて…!

例えば…
・『人』
一人の人を構成する要素は沢山あり、年齢を重ねるごとに増えていくから
・『社会』『会社』
今にも中が割れそうな人、カラフルな人、まじめな人、いろいろな個性が混在しているから
・『時代』
古いものが蓄積され、新しいものが続くさまを見て

などなど…
どれも素敵な回答で面白い!
なによりその考えも面白い!という発見がとっても楽しかったです。
ただ一番インパクトが強かった回答は、一緒に参加した我が母の
『クッキー缶にしか見えない!』でした笑

アートに正解はない!これぞアートの醍醐味、なのかもしれませんね。
みなさんならこの作品になんと名付けますか?

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