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せっかく屈折計を出したので、そんな話も書いてみます。
屈折計(Refractometer)は屈折率を測る機械です。屈折率はRefractive Index、宝石のデータにRIとあったら屈折率のことです。

屈折計

屈折液という、ちょっと臭い液を屈折計の上部のガラス面に少しだけつけて使います。この屈折液で測れるのは1.35~1.80位の屈折率で、ダイアモンドなどは範囲を超えるのでOTL(Over The Limit)と呼びます。が、OTL石も他の方法で鑑別はできるものです。ダイアモンド類似石はほぼOTLです。

屈折計と屈折液

屈折液は小さくても高いです。この小瓶で確か7,000円ぐらいしました。
GIAの実習を経て、試験の頃には残量が怪しくなる人が出てきます。私は実技試験初日で合格したので、追試となったクラスメイトに”念のため”なくなったら予備として使って、と置いてきましたっけ。

GIA Japanがなくなったので、2瓶目は全国宝石学協会で求めましたが、全宝もなくなってしまいましたねぇ。

目盛りにピントが合いません~

石を置いたらここから覗いて目盛りを読んでいきますが、きちんと写せないので雰囲気だけどうぞ。

全然目盛りが映らない…

明かりが入らないように、ラボは暗くします。それで奥の光っているところの目盛りを読んでいきますが、石の影にピッと線が出るので、その線に対応する数字が屈折率というわけです。

慣れないうちはなかなか線が見えなくて、頭を上下に振って見えるポイントを探します。慣れると、石を乗せたらハイ!という感じでわかるようになります。

屈折率

では、屈折率とはなんぞや。

空気中における光の速度と、宝石内との光速比。
全ての宝石種は、固有のRIを有する。

改めて見ると「へえ~!」

例えば、空気中を30万km/sで進んできた光がダイアモンドに入ると、約12.4万km/sに減速します。

屈折率=30÷12.4≒2.41

万は省略

石にも単屈折(SR=Single Refraction)と複屈折(DR=Double Refraction)がありまして、SRの石には1つの屈折率、DRの石には2つの屈折率があります。DR石の2つの屈折率の差を複屈折率(Birefringence)と言い、常に一定です。上と下があるなんて、ちょっと血圧みたいですね。

屈折計で複屈折率もわかりますが、石の研磨状態や複屈折率の大きさによっては測れないこともあります。複屈折率の高い石を測ると、上と下の間でパカパカと明滅して見えることがあり、これを”BBする”と言います。

最初にTucsonへ行った時、ベニトアイトを探して買いました。これも複屈折率の高い石です。
「帰国したら屈折計で測って、BBさせて遊ぶんだ~」
と言っていましたら、
「そんなマニアックな……」
と宝石の先生に言われましたっけ。え?先生はしないんですか?

ベニトアイト

数値はともかく、肉眼でも複屈折率の高さは観察できるんですよ。
下の写真はカルサイト、下に置いた紐がだぶって見えますでしょ?これがダブリングです。ペリドットも複屈折率のが高いので、石の中に入った結晶がルーペでもだぶって見えます。

ダブリング
あれ?ダブらない

ところが石を回していくと、だぶって見えない方向があります。これは光軸と言って、この方向ですと屈折率は1つしか観測できません。
この光軸方向を避けるために、屈折率は複数の方向から測ります。

マニアックになってきましたのでこの辺で。
トップ画像の屈折計の右側に置いているのは、石のデータがまとまっているチャート表です。屈折率の高い順に並んでいますので、大体の屈折率がわかればその近辺を見て、他の特徴から絞り込んでいけるというわけです。

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