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画家の安野光雅さんが亡くなったと、ネットニュースで知りました。
昨年の12月24日だったようです。

小さい頃から安野さんの絵が大好きで『ふしぎなえ』は数えきれないほど(多分ちぎれるほど)めくりました。

大人になってからは断然『旅の絵本』です。特にⅢの英国編は、旅好きの人やイギリス留学前の人、何人に贈ったことでしょう。

字はなく、旅人が海岸にボートで辿り着き、馬を入手し、村々を通り、街を抜け、郊外を通り、またボートで離れていきます。
よく見ると、森の中にチェシャ猫やロビンフッドがいたり、湖にはネッシーらしき影が見えたり、グリニッジ天文台らしきところには東西をまたぐラインがあったり、マザーグースのキャラクターがいたり、ビートルズが演奏していたり、小ネタを探すとキリがないほどです。

英会話スクールに持参して、英国人講師と見ていたら
「ここ!ターナーの絵のモチーフだ!」
と、景色の一角を指さしました。確かに、そこだけ緑色の青味が薄れて黄色っぽく(ターナーは緑が嫌いだったらしいですね)少し霞がかっていて、テートギャラリーかどこかで見たような……。さすが英国人。

旅情を誘いますし、そんなコミュニケーションツールとしても秀でた絵本でした。

2015年に東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(現・SONPO美術館)で開催された『安野光雅 ヨーロッパ周遊旅行』展で、この大好きな旅の絵本シリーズの原画を観ることができました。
7~8月の会期で、夏に弱い私は躊躇したのですが、この時に観ておいて本当に良かったです。

旅先で、これはという風景に出会った時に、折り畳み椅子に座ってサラサラとスケッチできたらどんなに良いでしょう。そんな夢を疑似体験できるような展覧会でした。

ここ2年ほどは、挿絵が安野さんの『メアリ・ポピンズ』を見つけて、意外とメアリがツンデレだなと思ったり(私のメアリのイメージは、映画のジュリー・アンドリュースです)、『小さな家のローラ』を読み始めたら懐かしすぎて泣きそうになったりしました。『大草原の小さな家』シリーズの『大きな森の小さな家』ですね。

これは絵だけでなく、安野さんの監訳です。ガッチリ翻訳するのではなく、時代や文化が違うところを補いつつ、わかりやすく訳されていますし、子供の頃に読んでいた福音館書店のシリーズから受ける印象とさほど変わりませんでした。

ご冥福をお祈りしつつ、いつまでも大切にしたいと思う本たちです。

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