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「頑張れ」の何がいけないのか

これまで「頑張れ」という言葉について、否定的に書いてきました。私自身、考えもなく発せられた「頑張れ」「頑張って」に何度も嫌な思いをしたからでしょう。

今日はもう少し深いところを書いてみようと思います。


有名な話

人の死が絡むので今まで書いてきませんでしたが(ですので、その手の話が苦手な方はここで閉じて頂ければ)この話を聞いたことはないでしょうか。心理学を学ぶずっと前の話で、私は会社で購読していた経済誌で読んだと思います。

会社員のAさんは、最近元気がない同僚のBさんを誘って飲みに行きました。話を聞くと、Bさんは少し元気になったように見えたので、別れ際に
「じゃあな、色々あるだろうけど、お前も頑張れよ」
と言いました。Bさんは朝までに自ら命を絶ち、もう出勤することはありませんでした。

だいたいこんな話

ゲートキーパーの講習会でも精神科医が話していました。ゲートキーパーは見守り人のような位置づけで、講習を受ければ誰でもなることができます。

その講習会では2つの側面からの話をされました。1つは言うまでもなく「頑張れ」という言葉の負の効果、もう1つはアルコールです。飲みながら話している時は気分が高揚するものですが、酔いが覚めていく過程での ”気持ちの落ち具合” もアルコールは激しいのだとか。Aさんも ”飲み” ではなく ”ご飯” に誘えば違ったかもしれません。

精神科医によるうつ病の講習を受けた時にも「頑張れ」の話は出ました。もちろん、一般人は言わない方が良いという前提です。

下の記事でも触れていますが、再発を繰り返す人はとても用心深くなり、全く挑戦しなくなってしまうことがあるのだとか。そういう時には、少し頑張ってもいいんじゃない?と伝えることはあるそうです。あくまで精神科医が、です。

主語は誰?

問題は、主語なのだと思います。

誰かが「私、頑張る」と言った時に「そうなんだ、頑張ってね」と言っても、それほど大事にはならないでしょう。本人が頑張ると言っているのですから。そうではない時に「頑張って」と言ってしまうと、自分は言うだけで頑張るのは相手になってしまいます。

「(転職活動中に)来週は面接なんだ~」
「頑張ってね」
「何を?(真顔)」
実話です。頑張れと言ったのは、面接たるものをよく知るはずの人事仲間。一体、面接で何を頑張るというのでしょう。

別の言葉を検索している時に、たまたま見つけた記事です。

「頑張る」「頑張って」の意味とは - 主語は元々「自分」だった
「頑張ってください」は命令形を丁寧にしただけ

https://news.mynavi.jp/article/20200801-1153429/

ほら~。他人に言う言葉ではないでしょう?

コミュニケーションに関する誤解

「頑張って欲しいのに、どうして頑張れって言っちゃいけないの?」
「あなたが言う ”頑張れ” ってどういう意味?」
「頑張れは頑張れでしょ?」
「その人が頑張っていないから、もっと頑張れってこと?」
「そんな意味で言うわけないじゃん!」

これ、コミュニケーションを誤解しています。どんな意味で言った言葉か、正しく伝わる率は100%ではありません。どれだけ伝わるかは、話し手や受け手のスキルもあれば、伝える方法チャネルの選び方、伝え方によるでしょう。

コミュニケーションは相手が受け取って初めて成立するものです。ですから言った人はそんなつもりがなくても、頑張れと言われた人が
「私は頑張っていないから、頑張れって言われるんだ」
と受け取ったり、プレッシャーに感じたりする可能性は大いにあります。

実際、プレッシャーに感じると言う人は何人もいましたよ。
「上司がもっと頑張れとプレッシャーをかけてくるけど、何をどう頑張ったら良いかわからない」と。
良くも悪くもパワーだけはあるのに、具体的ではなく曖昧な言葉なのです。

では、どう伝えれば良いのか

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