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アートで「今」を体感する

よくあるコーチングの問い

「今、どんな気持ちですか?」
「今、何に気付きましたか?」
「今、どこにいますか?」

これは、コーチングにおいて非常に有効な問いです。クライアントの「今」をしっかり捉え続けると、そこからエネルギーの転換が起こります。そして、そのエネルギーの転換が、気持ち・発想の転換を生み出すのです。それはまさに魔法のような瞬間です。

「今」に焦点を当てることを促すこれらの問いは、一見稚拙に思われる人もいるかもしれません。あまりにも初歩的すぎて質問する意味がないのでは、と感じる人もいるかもしれません。

ですが、その問いは「マインドフルネス」を促すものだ、と言われたらどうでしょう?

マインドフルネスは、「今現在において起こっている経験に注意を向ける心理的な過程」のことです。「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」といった説明がなされることもあります。

まさに、あれらの問いは、今現在起こっている体験に意図的に意識を向けさせる関わりなのです。ですから、コーチングを受けている過程は、マインドフルネスをしているのと近しい感覚なのではないかと思っています。

「今」に焦点を当てることの意味

マインドフルネスの話をすると、脳科学領域ではよく「デフォルト・モード・ネットワーク」(DMN:Default Mode Network)というキーワードが登場します。DMNは何もしていないときに働く脳内ネットワークで、ぼんやりと過去のことを思いだしたり、未来のことを想像したりすることに関わっている、いわば脳のアイドリングのようなものです。ただし、これが過剰になると、不安やうつうつとした気持ちが強まるそうです。

しかし、マインドフルネスを行うことで、感情や記憶に関わる領域とDMNとの間の関係性が低下し、脳が嫌な経験を反すうしにくくなります。結果として、その嫌な経験(感情)が投影する将来の不安からも解放される可能性があるとのことです。

これらの研究結果を踏まえると、「今この瞬間の状態から、将来がつくられている」と思わざるを得ません。つまり、今起こっている脳内現象が、未来を想像することに関わっているわけですから、今の状態が幸福であれば想像する未来にもそれが投影されるはずです。(逆もまた然りですね)

ですから、コーチングにおける「今」を問うプロセスでは、脳が嫌な経験を反すうしづらくすることで、将来や自分自身の在り方を描きやすくしていると考えることもできます。

マインドフルネスとアートの関係性

マインドフルネスといえば、マーク・ロスコの絵画を真っ先に思い浮かべます。「瞑想する絵画」とも呼ばれるロスコの作品。私は、DIC川村記念美術館で対面しました。(※常設されています)

あの静かで薄暗い空間に入り、椅子に腰掛けて、ロスコの作品を見つめる。その時間は、せわしなく日々を過ごしている身からすると贅沢でもあり、次第に幸福感で満たされます。そして、その異空間から出ると、感覚が研ぎ澄まされ、エネルギーが満ちたような気持ちになります。

■「緑と栗色」(1953年)

ジャコメッティ


ロスコの作品から感じ取れるのは、ある種の「精神性」です。
私の場合、この絵画を観ると、今この瞬間に在る精神の状態を感じることができますし、次第にざわざわした気持ちが鎮まっていくような感覚が得られます。過去へ、未来へ、色んなところへ意識が向くのではなく、「今この瞬間」に焦点が当たります。

色彩に目が行きがちなロスコの作品ですが、彼自身はこのように語っています。

「私は基本的な人間の感情(悲劇、エクスタシー、運命など)を表現しているだけです。人々の多くが私の作品に直面したときに、感情が揺さぶられて泣くという事実があるので、私は基本的な人間の感情を伝えることができていると思っています。私の絵の前で泣く人たちは、私が絵を描いたときと同じような宗教的な体験を感じています。色彩の関係のみで美術を語る人は間違っています。(マーク・ロスコ)」

気になった方は、是非一度彼の絵と対面してみてください。
きっと「今」を体感できるような貴重な経験ができるはずです。


ここまで読んでくださってありがとうございます。
今日も素晴らしい1日を!


【参考】Artpedia https://www.artpedia.asia/mark-rothko








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