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「人生の演者となる」という考え方

狂気的な天才、サルバドール・ダリ

朝、目を覚ますたびに、私は至高の喜びを感じる。
「サルバドール・ダリである」という喜びを。
そして、このサルバドール・ダリが、今日はいったいどんな奇跡を起こすのだろうかと、驚嘆しつつ、私は自分に問うのである。
―― サルバドール・ダリ『天才の日記』より

ダリは、シュルレアリスム(超現実主義)を体現した有名な画家です。

シュルレアリスムとは、理性が把握する現実とは別の偶然、幻覚、夢、狂気などのうちに超現実の領域を探求する動きのことです。
シュルレアリストたちは、目の前の現実をそのまま写し取る絵画の伝統的価値観が揺らいできた時代に、内面の世界や目に見えない存在を描き出そうとしました。

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「天才を演じつづけよ。そうすれば、おまえは天才となるのだ!」という彼の有名な言葉があります。
狂気を装うこと、そして世間から狂者と思われることを厭わず、ダリは自分があたかも俳優であるかのように「天才」を演じ続けたのです。

"Performative Psychology" を提唱するLois Holzmanは、「私たちは、世界/人生という舞台(ステージ)の演者であり、そこには幾つもの脚本や即興が存在する」と言及しています。

そして、興味深いのは、人間の発達のプロセスは「舞台(ステージ)を創り出し、自分を超えた何かを演じる(パフォームする)こと」で生み出されると考えている点です。平たく言えば、たとえ本来の自分から遠い "役柄" であっても、それを演じることができれば、その "役柄" になれてしまう能力があるということです。

素顔のダリは、まじめで、実直で、繊細な人だったと言われています。そう考えると、「演じる」ことのパワーってすごいですね。

演じる自分、ありのままの自分

演技の世界では、「自分を知ること」が非常に大切だと言われます。
つまり、「ニュートラルな自分はどのようか」「ありのままの自分は、どんな思考・身体の癖があるか」を理解した上で、役柄に入っていきます。

役柄に自我を出しすぎてはいけない、かといって持前の良さを潰してはいけない・・・といった塩梅をはかる上でも、そして自分の精神のバランスを取る上でも、まずは自分と向き合うことが重要なのだと捉えています。

「天才」を演じ続けたダリは、四六時中「天才」だったのでしょうか。
彼の作品を観ていると、私はそうだとは思いません。ありのままの自分を理解しつつ、対外的には「天才」を演じ、バランスをとっていたかのように思います。

■ 「欲望の謎  わが母、わが母、わが母」(1929年、サルバドール・ダリ)

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この作品は、ダリにとって特別な存在であった母が亡くなった後に描かれたものです。母の欠落はダリに大きなコンプレックスを与えたと言われています。(穴ぼこは母親の欠落を表していて、へこんだ部分には「ma mere(わが母)」という文字がたくさん書かれています)

この絵に留まらず、ダリの作品には、彼のありのままの姿を投影しているものがいくつもあります。作品には、彼の人間としての弱さや正直な気持ちが至る所、さまざまな形で登場します。「天才」の風貌とはギャップがありますが、作品自体が、本来のダリそのものだったのではないでしょうか。

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私たちは人生の演者です。何かになりたいと思ったら、まずは思い切って演じきってみることが実は近道だったりします。
NLPでも「モデリング」(モデルとなる人物の考え方や思考パターン、行動などを真似ることで、モデルと同じような結果を得ることが可能となる)という技法があるくらい、ありたい姿に近づくためには必須の手段です。

一方、「ニュートラルな、ありのままの自分」を知り、受け入れることも必要です。マインドフルネスやコーチング、セラピーなどで自分を見つめることは、演技に対するストレスを取り除く手段となるでしょう。


ここまで読んでくださってありがとうございます。
今日も素晴らしい1日を!

【参考】

■ Artpedia
https://www.artpedia.asia/salvador-dali/
https://www.artpedia.asia/dali-the-enigma-of-desire/
■ 村松和明「サルバドール・ダリ 生涯と作品」
■ LOIS HOLZMAN. "PERFORMATIVE PSYCHOLOGY" 

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