問い続けた末に生まれたもの

常に問いを持って生きているか、そして、その問いの内容によって、私たちの発想の幅・質はかなり変わってくるのではないでしょうか。今回は、「問い」について探求したいと思います。

「日本人の死生観」とは何か

Lady Gagaが着用したヒールレスシューズで脚光を浴びた舘鼻則孝氏は、3.11 の体験をきっかけに自身の生と死を見つめてきたといいます。

その表現のうちの1つが「CAMELLIA FIELDS」。個人的にかなり好きな作品です。

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「僕は武士の町として知られる鎌倉で育ちました。鎌倉にはたくさんの寺院があるのですが、その中でも覚園寺に訪れたときの光景は今でも鮮明に記憶されています。大学生の時、雨上がりに訪れたその場所は一面湿った苔で染まり、椿の木の根 元には雨で落とされた椿の花が赤く円を描いていました。 冬だったので咲いている花は他になく、静かな景色の中に凜とした姿で存在し ていたその光景が、脳裏に焼き付いていたのです。
椿の場合は多くの花のように“散る”という感覚とは違い、花の姿のままで落ちていきます。この光景を“死”を通して“生”を見出す日本独特の死生観として表現できればと思い、「カメリア・フィールズ」を制作しました。」
― 60MAG 舘鼻則孝展「CAMELLIA FIELDS(カメリア・フィールズ)」開催中!舘鼻氏が想うアートの役割とは

また、彼は自身の骸骨を真鍮による鋳造彫刻として表現した作品「Traces of a Continuing History Series」も発表しています。

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「この骸骨の作品は3.11からつくりはじめたシリーズなんです。あれは自分の身体をスキャンしてつくったものなんですけど、大地震をきっかけに自分自身の死を見つめてあのような作品をつくろうと思いました。今回、太郎を見つめるっていうことは、ある意味、ぼくにとっては死を見つめることでもあったんです。」
― PLAY TARO 「呪力の美学」舘鼻則孝インタビュー

「死とは何か」―― それを問うて探求し続け、自らの過去の経験やさまざまな技術と結び付けた結果、独創的な世界観が生まれていったのです。

「日本の絵画の道行き」とは何か

品川亮氏の作品も、まさに問いが起点となっています。

「アカデミックな技量とともに階層化された制度に厳密に従うことで成立し、存続してきた『日本画』によって中断された日本の絵画を、再考できないかと考えています。本来、滞りなく流れゆくはずだった日本の絵画の道行きは、現代にどういう風につながるはずだったのか。知りたくて制作を続けています

彼は、伝承された日本美術の表現や素材を引用しつつ、“今”の日本人だからこそ描くことのできる現代の日本絵画を問い続け、表現しています。
古典的なものの中に、抽象画によく登場するブラシストロークが印象的で、どこか現代的なものも感じさせる。この融合が新しく、幻想的で美しい・・・!

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これまでの日本画を「日本画」として認識しているだけでは、このような発想は生まれなかったのではないかと思います。
まさに、日本画の道行きを問うていたからこそ、そしてさまざまな技巧を取り入れたからこそ表現できたのではないでしょうか。

問いの探求は、やがて独自性となる

お二人に共通しているのは、「日本」を軸に、すぐ答えの出ない問いを掲げている点です。そして、とても興味深いのは、問いを探索している過程を作品にしている点で、作品のアップデートは今後も続いていくわけです。

それは、コーチングの世界でも通ずるところがあります。コーチングセッションの最後に、クライアントに対して問いをプレゼントすることがあります。その問いは、「私はどのように生きたいのか」「これからの仕事とは何か」といったような、すぐに解答が出づらいものです。

問いに対して、私たちはすぐに解答を出そうとする性質がありますが(答えがすぐ出ないと心地悪いのかもしれません)、その問いを意識して日々生活することの方が重要だと考えています。

問いがアンテナとなるせいか、過去を振り返ったり、更に経験を積んだり、学習を続けたりするうちに、うっすらと解答らしきものが形になっていきます。それは、まるで魅力的な材料が少しずつ揃っていくかのようで、ある時、ハッと「これが "現時点の" 解答なのかも」と閃くのです。

そして、大切なのはその解答はアップデートされる可能性があり、それは素晴らしいことであると受け入れることです。「すぐに解答を出して終わり」となってしまうようなものは、いわゆる「普通」の解答になってしまうかもしれません。

アートも、仕事も、人生も、一緒です。
問いを常に探求しつづける気概が独自性を生み出していくのです。


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