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【子宮頸がんの記録#17】味覚障害

抗がん剤の副作用のひとつに味覚障害と吐き気がある。

抗がん剤を投与した2日後あたりから吐き気が出てきて、口の中がまずくなる。
麦茶でごまかそうと口に入れた瞬間吐き出した。
甘くて苦くて、とてもまずかった。
水も一緒で飲むことができなくなった。

食欲がない。
味覚がおかしい。
吐き気がする。

自分だけの問題ならなんとかなるけれど、子どもがいるからなにか食べさせなくてはいけない。
でもこんな状態で料理なんて、とてもじゃないけれどできなかった。
幸い義母が一緒に住んでくれていたので、料理は作ってくれ、それはとても助かった。


4-5日間は吐き気が強いので、あまり食べられず、ただ布団の上で時計の針が進むのを待った。
気持ち悪いだけなら、我慢して読書やテレビ視聴をしていればよかったのだが、「気持ち悪い」という言葉だけが自分を支配していて他に何も考えることはできなかった。
眠ることが自分が吐き気から解放される唯一の方法だった。

その味覚障害・吐き気の副作用が落ち着いてくると、今度は食欲が爆発した。
飢餓状態だった(それでも少しは食べてはいたのだが)体が、「食べろ」と叫んでいるようだった。
ランチで、天津飯に台湾ラーメンを食べた後、スタバでフラペチーノとケーキを食べるくらいによく食べた。
夜ご飯をしっかり食べた後に、22時ごろ餅を2つ食べて、それでも朝の4時におなかがすいて起きるくらいだった。

成長期でもない。
妊娠しているわけでもない。
授乳しているわけでもない。

胃腸炎で数日食べられなかったあとでもこんな食欲は出ない。

不思議だった。
それでも、このものすごい食欲の中、「食べることは生きること」なんだと強く思った。
おいしく食べられることが、嬉しかった。
たくさん食べていると、生きている感じがした。


おいしいものをおいしいと食べられる幸せ。
料理を作ることができる幸せ。
家族みんなで食卓を囲める幸せ。

なんのことはない小さな小さな幸せを、大切に生きていこうと誓った。
できるだけ長くこの幸せが続くよう、強く願った。

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