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【子宮頸がんの記録#13】退院

退院した。

外が暑くて、いつの間にか蝉も鳴いていて、タイムスリップした感覚だった。

うだるような暑さも、久しぶりに空調がきかない外に出られた嬉しさでどうでもよくなった。

2週間弱。
面会禁止の中、ひとりで頑張るのは辛かった。
なんでこうなっちゃったんだろう。
なんで開腹手術なんて受けたんだろう。
わたし、頑張ったよね。

いろんな感情がぐちゃぐちゃになる。

帰宅しソファに座った私の横に2歳の長男が徐《おもむろ》に座った。
私の左手を彼の両手で握って何も言わずにぴったりとくっついた。

生まれてからこんなに長く母と離れたことはなかった。
寂しかったのだろう、不安だったのだろう。
突然母がいなくなって戸惑っただろう。

彼の胸中を思うと、涙が止まらなかった。
ごめんね。
やっぱり、ママ生きていたいよ。少しでも長く、あなたたちと一緒にいたい。


自己導尿をする生活

長男はこのころトイレトレーニングの真っ最中。
予期せず一緒にトイレトレーニングをすることになろうとは。
「おむつの中でなら排尿できる」という点では長男のほうが先輩ですらあった。

ありがたいことに我が家にはトイレが2つあり、そのうちのみんながあまり使わない方に導尿の道具を置かせてもらった。

導尿カテーテル、消毒薬、清浄綿、鏡、ゴミ箱など物品が多いので置いたままにできることはかなりありがたかった。

病院とは環境が変わるのでできるか不安だったが、割とすぐに慣れた。

ただ、尿意がないものだから、夜中も膀胱が破裂したらどうしようと不安になり(滅多なことがない限り破裂はしないが500ml以上たまって膀胱壁が伸び切るのはあまりよくないと言われた)、たびたび目が覚めたので、熟睡はできなかった。


アウトドア派の母の血をひいて、私も出かけるのが大好きだったのでどんどん外出にチャレンジした。

退院して1週間後には子どもと一緒に遊園地に行けるほどになった。外出先での導尿も苦労さえしたが、なんとかなった。


突然の卒業

退院して10日ほどたったところで導尿時の痛み、血尿、頻尿が出現。

経験したことがある、これは膀胱炎だ。

手順も守っていたし毎回清拭していたし清潔(尿道を触らないこと)も意識していた。

なのに膀胱炎になった。

自己導尿中は膀胱炎になりやすい。でも、早過ぎる。

まだ抗がん剤治療もしていないのに膀胱炎になるなんて、抗がん剤治療がはじまって免疫が低下したらどうなるのか。

考え始めたら不安でたまらなかった。

がんセンターに臨時受診し、抗菌薬を処方してもらい、看護師にその日も泣きながら不安をぶちまける。
いつだって心を保てていたのは看護師のおかげだった。


嫌なことばかりではなかった。

膀胱炎になった影響で尿意が戻り、毎回自尿が出るように。

便座に座ると、すぐに排尿できるようになった。

手術前の尿意、排尿の感覚に近く、残尿も一気に0に。

こうして私の自己導尿生活は手術後1ヶ月で突然終わりを迎えた。

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