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読み切り小説:インフィニティ・ゼロ

【ルールは1つ、真っ黒の部屋に入らない事】

「水泳だけは選んじゃいけないらしいよ」
ーーーまたあの話だ
「えぇ、じゃあ最近早希さんが眼帯してるのって」
「あれは"ものもらい"らしいよ?」
「ほんとかなぁ、もしかして水泳を選んじゃったか・・真っ黒の部屋に入っちゃったからだったりして!」
「「きゃーーー」」

ーーーもしそうなら水泳の補習なんて引っかかっていないはずだ
ちゃんと"ものもらい"だよ、と思いつつ窓から見える塔を眺める
"インフィニティタワー"
空を超えてそびえる真っ白な"それ"は雲とひとつになって伸び続けている。

月とブラジルを繋ぐエレベーターらしい、とか
ウサギがいっぱいいるとか人体実験が行われている、とか
根も葉もない噂ばかり広がって実情は誰も知らない、というのが実情だ。

ささやかな願いがひとつ叶う、そんな事も言われていた。
それはそうと今日は部活の日だ、ちょっと憂鬱
あーあ、級位が1つでも上がれば部長として威厳も見せられるのになぁ。
・・・試してみる価値は、あるかな

綺麗な緑が広がっていた
顔を上げると快晴のはずだった青空は真っ白な塔で覆い尽くされた

思わず唾を飲む
塔から数人の大人が走って出てきた、私の横を走り抜ける
ーーー轟音が隣を走った

遠くから鬼のような何かがボールを投げたような動きをしている。
大人たちがどうなったかは知らない。
ただその異形から目が離せなかった。
私はとんでもないところに来てしまったのかもしれない、
考えとは裏腹に、好奇心が私を香車に変えた。
もう"成る"まで引き返せない。
そんな予兆と共に、私は走り出していた。



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