見出し画像

柴胡加竜骨牡蠣湯 ストレス社会に

 私の好きな処方の一つが、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)です。私自身が利用しています。少し血圧が高くなり始めた頃、頭痛に悩まされるようになりました。降圧剤である程度血圧のコントロールはできても頭痛は治りません。そこで釣藤散も服用するようにすると、頭痛はすっかり影を潜めました。しかし、拡張期血圧が下がりません。そこで利用したのがこの柴胡加竜骨牡蛎湯です。

 この処方は柴胡剤の一つです。柴胡剤のもつ力の一つは、心を穏やかに安定させる方向に働くということです。心の感じているストレスを和らげてくれるのだと思います。

柴胡加竜骨牡蛎湯の保険適応病名は、「比較的体力があり、心悸亢進、不眠、いらだち等の精神症状のあるものの次の諸症:高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病、てんかん、ヒステリー、小児夜啼症、陰萎。」となっています。

 私の拡張期血圧が下がりにくいのは、ストレスから交感神経が過緊張になっているのではないかと思い、柴胡加竜骨牡蛎湯を高圧薬とともに服用し始めたところ、拡張期血圧低下傾向となり、気になるほどの値を示さなくなりました。まあ、お酒の量と体重を落とした方が、ひょっとしたら効果的なのかもしれませんけれど。

 柴胡加竜骨牡蛎湯が適応となる方の特徴は、精神神経症状を伴っているということです。驚きやすい、イライラして不眠傾向がある、夢をよく見るなどといった症状がみられます。また、動悸や胸部圧迫感などを訴えるけれど、心電図などの検査では異常を認めないという心臓神経症とされる方にも使います。ストレスからきていると思われる、円形脱毛症に使用されることもあります。

 この処方は、柴胡(さいこ)、半夏(はんげ)、茯苓(ぶくりょう)、桂皮(けいひ)、黄芩(おうごん)、大棗(たいそう)、人参(にんじん)、竜骨(りゅうこつ)、牡蠣(ぼれい)、生姜(しょうきょう)、大黄(だいおう)の11種類の生薬から構成されます。

 配合される「竜骨」はもちろん竜の骨ではなく、大型哺乳動物の化石化した骨です。また「牡蠣」は身ではなく、カキの殻の部分です。主成分は炭酸カルシウムなのですが、漢方医学では精神疲労をとり、気を補うことで精神安定をはかり、不安をとる「安神薬(あんしんやく)」と呼ばれる生薬です。竜骨とともに、牡蠣と茯苓も気持ちを落ち着かせる作用を持っています。桂枝はカッとなるのを抑え、柴胡と黄芩は肝を整えて気持ちを穏やかにします。現代のようなストレス社会においては、重要な「くすり」の一つと言え、精神的緊張からいらいら、ドキドキがあるといったときに使われます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?