見出し画像

媒体で再構築するバンド-有形ランペイジ「有ル形 進スイ式」ライブレポ-

「ライブレポを書くぞ」と思ったのはツアー最終公演が行われた大阪から新幹線で帰る途中だった。だから、その時食べた551の肉まんくらい、アツアツで、脳直の感想を書こうとしていた。

―とにかく、生きててよかった!
―ここの、にかちゃんのスラップがやばかったんだって!

ここで、10年来のsasakure.UK好きが火を吹いた。思考があっちへこっちへ飛ぶ。気づいたら、どういうわけかライブ当日からひと月以上が経ってしまった。

書きたかったはずのリリカルさもどこかへ吹き飛んでしまったけれど、気にしないでおいて、次回のわたしに期待をかけることにする。

媒体と再構築


有形ランペイジにとって、"再構築"は1つのテーマだろう。

公式には、有形ランペイジは


sasakure.UKが自らの音楽表現を更に拡張するため、第一線で活躍する若手スーパー・プレイヤーを招集し結成されたバンド。(略)
これまでのsasakure.UKのフィールドであったDTMから一歩踏み出し、楽器や身体を通じて奏でる“形の有る“音楽を提唱。実際に演奏・歌唱することが不可能といわれていた緻密かつ難解な構造のsasakure.UKの楽曲を、卓越した演奏技術によって実現させる。

と表記される。

電子媒体だから表現してきた音楽を、プレーヤーが演奏を通してカタチアルものとして再構築する。遊び心の効いた洒落に、真正面から挑んで成立させてしまうのが彼らだ。

それは、こんな形で行われるらしい。

演奏技術にさして明るくないわたしは、「みんな、何者……!?」と思ってしまうし、実際にSNSで追っていると、何者ぶりに驚きがとまらない。
(ちなみに、「マグ・メル」をライブで聞いたわたしは、Key.​岸田 勇気(きっしー)の凄技プレイから目を離せなかった。)

屈指のプレーヤーが持ちうるものをぶつけ合って真剣に遊ぶジャム・セッションの色は、円盤状物体(CD)であろうと、その進水式(ライブ)であろうと、節々に見え隠れする。

そもそもわたしがささくれさんの音楽にのめり込んだのはジャジーでプログレッシブな音の映す感情に惹かれたからだし、Gt.佐々木 秀尚(おヒデ)やDr.今井 義頼(よっしー)をはじめフュージョンシーンで活躍するメンバーが集えば、自明だろう。

けれど、ライブハウスの中で対面するとき、不思議と凄すぎる、という感覚はなくなる。プレイングにはいつもひえー!(心の声)となるが、少なくとも断絶した感覚はどこにもない。

彼らとわたしたちは、今日・この場所でともに音楽を再構築する媒体なのだと感じられるからだ。

その日の「箱」と「人」が媒体になる。空気が音を、光を媒介するようにわたしたちは媒体になる。ステージとわずか数十センチ、数メートルで鏡合わせになって共有する楽しさは、フュージョンの一端なのではとも感じる。

彼らは媒体(メディア)で姿を変える。
「カタチアル」状態を、めまぐるしく行き来する。
ときに流動的で、ときに固定的だ。

その結晶のような世界が生だと思う。


ライブレポ「有ル形 進スイ式」

有形ランペイジが2018年の再始動後、初めてリリースしたアルバム「有ル形」。このアルバムの進水式が、今回のライブだ。

レポは基本的に大阪公演の話(東京も時々)。

ライブで新曲が披露されたことは覚えているのに、肝心の中身は「やっぱり変態的(鬼難しい曲)だった……」ということを残して忘れてしまったような有様のため(この辺りが1ヶ月経ったレポの弊害)、とにかく楽しかった! と思ったところを書き連ねる。

sazanqaと生(せい)

開場から開演までの間にも船は準備をしている。
円盤状物体🛸💿の進スイ式。わたしたちもハコの中にいれば乗船者だ。

前に詰めてください、というアナウンスは、その心地を高めてくれる。コンセプトの徹底ぶりが、わたしたちが場全体で物語を表現するメディアだという意識を運んでくる。

「有ル形」と同じく、aruichiからスタート。そして唸りを上げてsazanqaが始まったとき、脳内が「生きててよかった!」という一色に染められた。

質量が違うのだ。音がそこに有る。形を成す。
もちろんCDで聞いていてもばかみたいに好きだけど、明らかに違う。sazanqaは生だ。

再現性のない毒

ささくれさんは、ボーカリストの声質をとらえた曲を作ると前から思っている。

たとえば、東京公演で印象に残っているもののひとつが、Canaさんの「オオカミ少年独白」。

曲の持つ背景も、MVも、Canaさんの水面に落とすような声も、ぜんぶ苦しく愛おしい。そのはかなさは、生の演奏を背景にいっそう際立つ。

大阪でmamiさんのQUIを聴いたときも、彼女のキンと細く尖った声に一等似合うのがこの曲だと感じた。やっぱり、というだけのものはある。

でも一方で、ボーカリストを変えた曲を聞けるのもライブの旨みだ。想定外だったPerioボーカルのウィークエンダーの憂鬱、mamiさんの声が真正面から届くマリィの世界、歌い終えるとしんどいくらいに可愛いmajikoさんの、カッコいい世界五分前仮説。

ぜんぶライブでしか味わえない。
だから、東京公演が終わった直後に大阪のチケットを取った。

ランペイジする強さ

arukatachi -Re:- ――おヒデについて、一番よく覚えているのがこの曲だ。

曲の入りは、リリリ、という信号音のようなかすかな音。弾き方に見当がつかなかったので、この曲が始まったとき、繊細に弦を撫でるおヒデに驚いた。そうやって弾くんだ! と眺めているうちにぺろりと一曲が終わる。巧みさが刺さる。

Jack-the-Ripper◆やマグ・メルみたいな直球のソロももちろん圧巻だった。メンバー全員がそうだ。

たとえば、公演後よっしーは、いくつか動画をみせてくれた。これはそのうちの2つ。

これだけの技量で、本当に楽しそうにランペイジする。音も声も跳ねまわる。

跳ねまわるといえば、大阪公演で演奏されたMr.Wonderlandも。

この曲の思い出は、コーラスのささくれさんがイヤホンの位置どりに苦戦しながらも右手を挙げ、ともに跳んでくれたことだ。シンプルに楽しかったし、やさしさを感じたし、いまとなってはもっとわたしも暴れまわっとくんだった! と思う。

アンコールでネバーランドというタオル回しソングもできたのだから、次のライブでは、最初からギアを全開にする。それと、大阪ではsuccess!!した万有ヱレキテルの例のカウントも、いまだに正しく数えられたことがないので、こっそりフクシュウするのだ。たのしみ。

TOUTOI CLAP

伊礼亮さんが歌った曲は、どれもこれも楽しかった。有形ランペイジ自体の凄技×楽しむ姿に加え、伊礼さんの”太陽属性感”が弾けていた。ざっくりいうと、ファンサが上手すぎた。

ささくれさんが、伊礼さんとBa.二家本亮介(にかちゃん)の仲が良いから、とフューチャーして作ったという伊礼さんのボーカル曲「ウィークエンダーの憂鬱」は、本当にベースラインが楽しい。スラップやば! となる。「GimmeUrClap」に合わせて手拍子して、跳ねて飛んで、背を寄せるにかちゃんと伊礼さんとおヒデを見て。楽しかったにつきる。

そして、ラストソングの*ハロー、プラネット。

そもそも、男性Vo.で聞けるということ自体にたいそう興奮したものだが、にかちゃんの肩を抱いて「いまはこれ(ベース)だけもっていればいい」と歌詞をもじったときは、エモと尊さがいっぺんに襲ってきた。そのあとのやや拗ねたみたいなにかちゃんの反応を含めて100億満点のファンサだったと思う(もちろん、楽しんでやっていることなど承知だ)。

あいたかったの キミに オハヨーハヨー
うまれたばかりの "キミ"に オハヨーハヨー…

メンバーの合いの手を交えながら4周くらいくり返した大合唱。ひと月たっても胸が熱くなる。

束の間の航海。本当に楽しかった。

むすび

大阪ライブの同日、嵐が休止を発表した。

わたしがこれを書いたひとつのきっかけだ。
推せる時に推したい。そしてこれからは、ライブでも、もっと"はちゃめちゃに楽しいのだ"と身体で表現していく。これは、決意のありがた(有形)いお守り。

いつか有形ランペイジのライブで聞いてみたいと願うすきなささくれインストは、bAd Companyz。
聞けても聞けなくとも、また生きててよかった〜!と投稿しにくる。

実は、3月10日のDENSHI JISIONさんとささくれさん&lasahさんのライブを見たのだが、やはり鉄は熱いうちに打った方が熱を伝えられると思ったので、次に書くときは、もう少し早く世の中に生み出しておきたいと思う。

リリカルになるといいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?