#3.ショートショート 「神判」

ここは雲の遥か上。 
そこではと或る神が人間界を見下ろしていた。 
 
ここ最近、神は “人間” について考えていた。
 
人間は 鳥 のように空を飛ぶ事が出来ない。 
かと言って
獣 のように速く走ることも出来ない。 
 
だから代わりに 
人間には “知恵” という考える力を授けた。 

これによって
ものを作り、空を飛ぶことも速く走ることも出来るようになった。
だが、
人間はこの力を悪用し、目に余る所業に及んでしまった。
 
人を殺した
物を盗んだ
嘘を吐いた
 
神は落胆した。 
 
こんなにも穢い生き物だったとは思いもしなかった... 

知恵を授けたのは致命的な過ちであった。 
しかし、知恵を授けたことで 
今より善い世界に変えようとしている人間や
自分たちに出来ることはないのかと考えている人間達が少なからずいるのも事実…

果たして、こんな世界で本当にいいのだろうか... 

もし、これ以上罪を重ねるのであれば罰を与えなければいけないが。
もし...私の思っていた人間ならば
これ以上、悪 に染まらないでくれ…
 
神は葛藤し、願った。 
しかし
そんな淡い期待は虚しく裏切られる。

人間にそんな事は知る由もない。
次々に罪を重ねていった。
 
他人を貶し、蔑み、陥れる
不倫、強姦、噂に暴力…

...もぉ、我慢の限界だった。 
 
神は遂に裁きを下した。 
人間に向かって嚔(くしゃみ)をしたのだ。 
すると、
神が撒き散らしたその視えない裁きは 
人へ、人へと 、感染していき
瞬く間に全世界に広がっていった。 
その菌に一度でも触れると 
ころん。と寝返りを打つかのように
簡単に人の命が消えていく。
老若男女見境なく、感染した者は死んでいく。
毎日のように、ネットやニュースでは、
この話題で持ち切りだった。

天から降り注いだ裁きの悪戯(いたずら)

草木や花々、水で生きる物たちは、これを受け入れ成長するのに
人間だけが、これに抗い、越える術を持っていない。

人間は今までの悪行の報いを受けなければならない。

これは、神から人への  “神判”  である。 
 
「人間は、世界は、本来のあるべき姿に変わるべきだ。 」
 
神が葛藤し、考え、辿り着いた末の決断であった。 

そう、
神は人を選別することにしたのである。
 
 

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