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ちゃんと告白してよかった

いつか結婚式をすることになったらお願いしようと決めていたお花屋さんがある。今日、ブーケの打ち合わせのため、そのお店にプランナーさんと二人で伺ったときのこと。プランナーさんが店主さんに向けて思いついたように言った。

「花さん、このお店にブーケをお願いすることだけは本当に初期から決められていたんです。どんな色がいいかとか細かいお話より、どうしてここでお願いしようって思っていたのか、そのあたりを伝えてもらったほうがイメージしやすいんじゃないかと思うんですよね!」

「え?!いや、え?!はずかしい!それって告白タイムってことですよね?!いえええああああ、ひええええ」

取り乱すわたし、ぜひ聞かせてという目をした店主さん、ノリノリのプランナーさん。…しかたない、突然の愛の告白をいたしましょう。

「あの、このお店、いままで結構頻繁にお店に足を運んでいるのに購入に至ることがほとんどなくて、だからいつかいい機会があったらお金をちゃんと払いたいなと思ってて、それでこの度のこういう機会で、まっさきにこのお店だけは決めていたんです。お願いしようと思った理由はそれなんですけど…、あの、このお店の、お花たちの色合いがすきで」

店主さんの細まる目をみて、エンジンがかかる。

「街中の他のお花屋さんにいっても、なんかやたらくっきりはっきりした色のお花がいっぱいで、そういうのってエネルギーがどんってこっちにくるっていうか、強いんですよね、そうじゃなくてこのお店のお花たちは落ち着く色で、なんかほっとするんです。お店に入って、花を眺めて、店主さんが挨拶だけしてくれたあと静かにお仕事をしていて、その佇まいもなんだか好きで。そう、お花もそうなんですけど、店主さんの、あんまりお話したことはない中でもなんとなく伝わってくるお人柄とか、佇まいとか、すごくいいなと思っていて…たまに立ち寄ってはお花をみて、満足してお店を出てしまうんですけど、すごく好きで…」

マスク越しにもわかる満面の笑みの店主さん、

「は〜〜、うれしい!!こちらの考えが全部伝わっているみたいで…買い物されなくてもいいからふらっと入ってこられるようなお店にしたいなとずっと思っていて。昔はお客様に話しかけていたこともあったんですけど、そういうのってあんまり求められてないかもしれないなと思って、話しかけないけどいつ話しかけられてもいいですよという感じを心がけてるんです。ちゃんと伝わってる、うわあ〜〜!」

店主さんのあったかいきもちがなんだか嬉しくって高まりすぎて、ちょっぴり涙が出てしまった。

その後オーダーの細かい要望の確認をさくっと終わらせ、一旦お店を出てプランナーさんと近くのカフェで打ち合わせ、買い物と昼ごはんを済ませたわたしは久々のあの空間が恋しくなってしまい、ひとりでもう一度花屋さんに戻った。

「戻ってきました〜!」「カフェいってきたんですか?」「お茶だけしてきました〜」「ふふふ〜」

そしてまた、店主さんと特別話すでもなく、小さな店内のお花と雑貨をぼんやり眺める。考えごとをしたり、なにも考えなかったり。カフェでコーヒーを飲んでぼーっとしているときと似ている。気づけば20分以上眺めていて、なんだか頭がすっきりしてきた。今朝までもやもやしていたいろんなことがどこかへ消えて、「わたし、だいじょうぶだ」とすっかり幸せになっていた。深呼吸できる場所をしっているわたしはつよい。

「ありがとうございました!」

気が済んで深呼吸をしてから、深々とお辞儀をしてお礼を伝えて店を出た。

ブーケはだいたいの色の好みを伝えて、あとは店主さんにおまかせ。結婚式の楽しみがまたひとつ大きくなった。





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