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#3「ファーストサムライ」城みちる

名曲の裏に迷曲あり。
あまり世間には知られていないが、一部では愛好されている、もしくは隠れすぎていてまったく愛好者がいないような一風変わった珍曲が好きです。
前回からかなりあいだは空いてしまいましたが、気持ちを新たにまたいろいろ綴っていこうかなと思います。

今回の珍曲はこちら。


「ファーストサムライ」
作詞:津田義彦 作曲:サムライ・ケムコ 編曲:伊戸のりお
歌:城みちる

1991年11月にイギリスのImage Worksから発売されたAmiga用横スクロールアクションゲーム「ファーストサムライ」というタイトルをご存知でしょうか。
1993年にはケムコからスーパーファミコンに移植され日本でも発売されたゲームです。

その名の通り、日本の“サムライ”をモチーフにしたゲームなのですが、開発はイギリスのゲーム会社。外国人にありがちな間違った日本が見受けられるバカゲーです。
そんな「ファーストサムライ」にはイメージソングがありまして、これがまたバカなので、それを今回紹介していこうと思います。


歌うはまさかの「イルカにのった少年」城みちる
城みちるは1973年にデビューし、3年間という短い活動期間で芸能界を引退したものの、1986年に芸能界復帰。この曲も復帰後に歌った曲となります。
城みちるとケムコの社長が知り合いであった縁で歌唱を担当したそうですが、よくもまあ昭和のスターがこんな曲を歌ってくれたなあというのが正直な感想です。
ちなみに城みちるが芸能界復帰後に出したCDはこの1曲だけだそうです。

この曲はゲームの第1ステージのBGMを元に作られた曲なのですが、へろへろの三味線っぽい音と琴っぽい音の掛け合いにのっけからすべての人の気持ちを脱力させてきます。スーファミ用の音源が土台になっているので音色に関しては仕方ないのですが、歌用にちゃんとしたオケが用意できなかったものなのか。城みちるファンのお姉さま方が、「久々のみちるの新曲よ!」とうきうき再生し、開幕一発目でこれを聴かされた日にゃ暴動が起こっても仕方ないでしょう。
さらに尺八(これだけ生音)のぽー↓ぽー↑って音がまた神経を逆撫でしますが、まだイントロです。歌すらはじまっていません。
ここまででもかなりお腹いっぱいな出来なのですが、歌がはじまれば城みちるの歌唱力の高さがまた曲とのギャップを生み出しておりさらにカオスな空間へと導かれます。こんなにもふざけた曲なのに、とても真面目に歌う城みちる、こんなの笑わない方がおかしい。

しかし編曲を担当した伊戸のりお先生は実はちゃんと商業で演歌を作ってこられた作曲家さんなので、曲全体は笑わせにきてる感満載なものの、意外とオブリガートのスケールの取り方や入れどころなんかはしっかり演歌してるんですよね。なので、音さえスーファミ音源でなければまともな曲になるのかなと思うのですが、でもやっぱりゲーム音楽的なシンセベースのベベベベという音とシンセタムの連打がなんとしてもこの曲を演歌にさせてなるものかとがんばっているように感じます。
あとやたら入ってくる刀のシャキーンという音がこの曲をさらに安っぽいものへと演出しているのがたまりません。

そしてこの曲を聴き進めて慣れてきた頃、実は歌部分はまだ前座に過ぎなかったのだということを思い知らされます。
この曲、間奏が1番の終わりと2番の終わりの2箇所に入るのですが、その間奏がこの曲一番のカオスポイント。
1番のあとの間奏はシンセタムの連打が気になるもののむしろ間奏の入りなんかはカッコイイくらいなのですが、2番のあとの間奏、ここの癖がすごい。
いきなりドリフのオチのときに流れる「盆回り」のようなコミカルなメロディで入ってきたかと思うと、攻撃をしているのか攻撃を食らったのか、男の叫び声と打撃音がタイミングよく挿入されます。そしてダメ押しのシャキーン。
さらに城みちるのやたらさわやかな「人呼んでファーストサムライ」というセリフがぶち込まれるのだからなにがしたいのかよく分からないごっちゃ煮状態。まさに混沌。まさにカオス。
伊戸先生が本当にこの辺の効果音まで指定して編曲されたのか気になるところです。

最後に触れとかなければいけないのが、やはり歌詞。
出だしから「西向く サムライ 東を向いた」とおまえはなにを言っているんだ状態なのですが、全編このノリで書かれているのでたちが悪い。サムライ業よりおまえへの愛の方が大事だよという「みちのくひとり旅」の全然覚悟がない版みたいな歌詞なのですが、よくもまあ城みちるはこんな歌詞をクソまじめに歌ってくれたものです。そこに一切の笑いや手抜きを感じさせないところがプロですね。
個人的に一番好きな箇所は、思いつかなかったから適当に書きました感溢れる「サムライ 日本 一本 二本」という3番の出だしです。


CDは生産数がとても少なかったようで、amazonでも価格がすごいことになっていますが、きっと今後復刻することはないんでしょうね…。


サポートをしていただきましたら、はなちゃんの曲作りのスピードがあがったり、DTMの音が少しよくなるかも…!