高田ハン

一杯のコーヒーとボーイ・ミーツ・ガール☕️

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マガジン

  • 🕊️ 徒 然

    Twitterだと足りない、ブログだと少ない、そんな文たちを集めました。

  • 夢女(全6話)

    いつからだろう。夢にあの女が現れたのは。僕の生活はあの女のせいでめちゃくちゃになった。いや、もともとめちゃくちゃだったのを僕に気付かせてくれたのかもしれない。自分は最低だった。今も最低か。でも今でもまたあの人に会いたい。

  • 📚Short Stories

    あなたのコーヒーブレイクに合うような5分で読める短編小説を描きます。感情と、欲と、そのほかの苦い部分のぶつかり合いを描ければと思います

最近の記事

【ネタバレ含】ダンサーインザダークという完璧な地獄

ダンサーインザダーク。それは完璧な地獄。 一度見たら4日は寝込むとか、気分が落ち込むとか後味悪いだの胸糞、鬱、バッドエンド、二度と見たくないなどと言われたい放題の紛うことなき傑作ですが、ぼくにとってそのラストがあまりにも美しすぎたので、感動のあまり手当たり次第友人に、もはや当たり散らかすといった表現が合うほどの乱雑な感想を深夜2時近くに送りつけたりするなどしました。 どうしてそこまで取り乱すほどの興奮をこの映画は与えたのか。それはダンサーインザダークの完璧な地獄にあります

    • 夕暮れと君

      ねばついた秋の夕暮れ。君はいつもと同じ黄色いチャック・テイラーを履いて縁石の上を両腕を上げてバランスを取りながらこう訊くのだ。 「最近どう?」 ぼくたちはもうほとんど毎日同じ会話をする。右側から差し込む夕日は建物の間をすり抜けて君の横顔をなぞったり、黒く塗りつぶしたりした。 「最近も何もないよ。昨日と同じ今日を生きた」 昨日と同じ返事。君はそんなぼくをちらっといちど見ただけで、また前を向いて両腕でバランスを取るのだ。 ぼくらの髪を黄金に染めていた黄昏はいつしか暗闇へ

      • 第6章 別れ

        あの晩のことは忘れない。嵐の前の夜だった。立て付けの悪い窓がガタガタと鳴り、遠くでは雷が轟く。そんな夜だった。僕はウイスキーを舐めながらレーズンチョコレートを食べていた。大崎と連絡がつかなくなって1ヶ月が経とうとしていた。僕はあれからというもの、ただ大学へ行き、いつの日か大崎が長机の隣に舞い降りてくれるんじゃないかと思っていたけれど現れることはなかった。鼻腔を抜けるウイスキーの香りに支配されながら、鳴らない携帯を眺める。なぜか感じる喪失感からか涙が溢れそうになる。自分から手放

        • 第5章 再会

          目が覚めたのは午後10時を過ぎたあたりだった。もう月が昇り、カーテンの間から部屋を淡く照らす。眠ってしまっていたらしい。家具の輪郭が、シーツの陰影が、そして読みかけのまま閉じてしまった本までもが静かに息を潜めている。ぼくは部屋の明かりを点けて携帯を手繰る。大崎からメッセージが入っていた。 ”昨日はありがと! シチュー作れなくてごめんね” きっとそれは大多数の人にとってはごく当たり前の日常なのかもしれないけれど僕にとってはひどく新鮮でそれだけで世界が光り輝いているように見えた。

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          第4章 さよなら

          気が付いたら朝になっていた。カーテンから差し込む朝日は僕を優しく起こした。どうやら眠っていたらしい。夢を見なかった日は久々な気がする。ベッドから降りると机の上に置かれた様々な酒の空き缶が目に付く。僕は昨日これだけの酒を飲んで死んだように眠っていたのか。携帯で時刻を確認すると1限の時刻をとっくに過ぎてしまっていた。大崎からもメッセージがきていた。  “1限休んでいるけど平気?”  僕はそれに寝坊してしまった、と返信すると  “なんだ~無駄に心配した。今日学校来るよね、食堂のカフ

          第4章 さよなら

          第3章 触れ合い

          その日の夢は今でもはっきり覚えている。僕は夢の中でもいつもの公園で煙草を吸っていた。僕はベンチで座りながら吸っていて、目の前には昨日大学で知り合った大崎が立っていて、僕に何か訴えかける。声は届かない。僕はそれに耳を傾けようとすると、彼女の後ろに夢の女が立っていることに気付いた。彼女の右手には包丁が握られていた。  嫌な汗と動悸で飛び起きた。Tシャツはぐっしょりと濡れていて、それを慌てて脱いでシャワーを浴びた。昨日飲んだウイスキーが頭をガンガンと鳴らす。空の色が変わり始めた午

          第3章 触れ合い

          第2章 出会い

          ぬめったように輝く黒髪が、僕の指からするすると流れ落ちていく。ぱさり、と抜けきった髪は僕の頬を鞭打つように叩いた。それがくすぐったくて僕は笑ってしまう。それにつられて僕に覆いかぶさっている女も笑う。肩が揺れる度に黒髪が波打って僕をくすぐる。何かの花の香りが辺りを包み、もう一度僕はこの人の髪で遊ぼうとする。下から掻き上げた真黒な髪は僕が伸ばした腕より長く、毛先に向かうにつれてだんだんと緩いカーブを描いて垂れ、美しい艶と瑞々しいハリをありありと僕に見せつけていた。僕は彼女のこの髪

          第2章 出会い

          第1章 初夢

          この作品はフィクションであり、実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません。 僕が覚えている限りの話をしよう。あの女と会ったのはまだ寒い春のことだった。風が強く、安いアパートの窓は立て付けが悪く、がたがたと音を立てる。深夜2:00。なかなか寝付けない。そんな夜の話だ。    第1章 初夢  どこを見渡しても一点の曇りさえない真白な空間。上も下も、右も左も通用しないような境界の存在しない世界に僕は横たわっていた。真綿の中のような心地よさに僕は動けずにいた。指先の一つでさえ。

          第1章 初夢

          【短編小説】ソフトクリーム・ラヴァーズ

          コーンの先っちょに溶けたソフトクリームが溜まっている。私の体温でジワリジワリとゆっくりと溶けていくそれは、自分の手だけでは止められないチキュウオンダンカーとかカンキョウハカイーと呼ばれるものの縮図のように思えた。 すでに湿り始めたコーンの内側できっと溶けたソフトクリームが滴って溜まっていることだろう。ああ、なんて自分は非力なんだ。私は目の前のソフトクリームさえ救えないというのか。これでは地球なんて到底救えそうもない。 どうか許してくれ、せめてこの天寿を捧げるから私が生きてい

          【短編小説】ソフトクリーム・ラヴァーズ

          【短編小説】変わらない夜

          「久しぶりじゃん!」 いつも変わらないその笑顔を向けてくれるのは咲だった。 新宿三丁目にある要通から一本裏手に回ったところにある居酒屋「どん底」。雑多な飲み屋街から一つ裏に回っただけでここまで陰鬱な、それこそ店のネーミングも相まって、まるで何かの巣窟のようなその店構えのダイニングバーには2020年を思い返すにはあまりにも人でごった返していた。 創業から70年近くたった今でも人気は衰えることなく、靴底の泥とタバコの煙で黒く変色した店内の床板は、溢れかえる常連客を軋ませなが

          【短編小説】変わらない夜