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三題放詩(さんだいばなし)①

三題噺スイッチというサイトで、ランダムで表示されたお題を使い制作した詩を五選掲載しています。



お題「炭田、番頭、号笛(ごうてき)」


煤(すす)を被って顔黒く
炭の田んぼを掘り起こす

掘られたわずかな炭持って
荷車曳いて売りに行く

売れた炭の駄賃は少なく
今宵のメシもままならない

それを見かねた番頭さんが
お金の足しにとくれました

手ずから拵(こしら)え細工した
ハ本調子の横笛ひとつ

その笛吹いて来た道戻れば
祭りと騒いで童(わらべ)が集まる

それ見た大人が「何事か」
近くの童に問うたなら

「祭りぞ祭り」
童が答えて手を引いた

それを合図にみなが集まり
「それなら、めでたい祝おうぞ」
言って一緒に踊りだす

その輪は次第に広がって
村を挙げての大騒ぎ

酒や料理が振る舞われ
どんちゃん騒ぎで
楽しく過ぎてく


お題「岬、占い師、揺籠(ゆりかご)」


岬から小舟を漕ぎ出す

穏やかなさざ波は
ゆりかごとなる

優しい潮騒が
子守唄のように響き

深い眠りに誘われ
夢へと堕ちる

暗夜に浮かんだ
星を眺めて

儚く輝く星の光が
数多の線で結ばれる

描いた星座が
話を紡ぎ

それを用いて
占いすれば

進むべき道
静かに照らす


お題「刺す、兵士、囲い」


囲われ世界で飼い殺されて
思考を放棄し 生きてきた

感情抱く こと無き場所で
私の日々は完結していた

ある日 ひとりの兵士が忍んで
私を外へと連れ出した

外に広がる未知なる世界が
私の心に深く刺さった


お題「鉢、密林、牛飼い」


鉢の中に創造した世界
一株の苗より生まれて森を造った

その森はやがて深さを増して
むせかえるような密林となった

その密林を
男と水牛が分け入る

男は木の棒を振い道を築き
そのあとを水牛が静かに付き従う

先の見えない険しい道の
どこを目指して進んでいるのか

ひとりと一頭だけが知る
あてのない旅路


お題「蜘蛛、元日、クリップ」


年の始めを切り取って
思い出をクリップする

記憶という棚に収納されて
次第に埋もれていく

いつしか古い記憶は忘れ去り
何気なく日常が過ぎる

不意に沈み込でいた思い出が
浮かび上がる

その蜘蛛の糸のような
細く淡い記憶を辿ると

綺麗に編み込まれた
世界に気づく

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